ワープした先で起こる監視行動

釣ール

前編

前編

 生きづらさ。

 人間がもたらすものとまで断定だんていはまだされていないことになっている。





 しかし、ついに超能力者たちがしびれを切らした秘密機関によって命令をくだされた。






『人間の中にいる危険分子を排除はいじょしろ』






 その中には自分たち超能力者たちや強いものから弱いもの…危険分子であるならなんだって抹殺する理由になると紙に書かれている何名の危険分子たちの写真や情報が梟房ふろふさたち特化権力とっかけんりょくの超能力者に渡される。






 梟房ふろふさ小難こむずかしいことは苦手でプロレスやボクシング、格闘技で使うリングに上がって戦っている超能力者の中では武器を使わない人間だ。





 いつも日本とはちがう国技こくぎをならい、あつかっている。





 自分のいる格闘技団体からの指令かと思って来てみたらとんでもない秘密機関にスカウトされたのだ。






 危険分子の中には見知った顔も多くいてほぼ全ての人間が抹殺対象まっさつたいしょうだと思い込みながら梟房ふろふさはため息を誰にも見せずについていた。






 ただ梟房ふろふさ抹殺対象まっさつたいしょうは考えられた相手ばかり。






 知り合いでもなく、友人でもなく、恋人でもない。






 それでも気になる人間か何名かリストアップされており、ワープ能力を使って『なんの能力ももたない人間』を監視する仕事をあたえられて実行するのだった。







 ほぼ全ての人類が抹殺対象まっさつたいしょうであり、強者きょうしゃだけが生き残るか。

 綺麗事きれいごとで生きていけないからってふりきりすぎだ。






 今回梟房ふろふさはある人間を追いつめていた。






 ちょうど相手が抹殺対象まっさつたいしょうであったこととそれなりに戦える人間であったため梟房ふろふさはふだんは甘いマスクで隠している闘争本能とうそうほんのうをたかめて超能力でリングを作る。






「なぜだ! 仕事だからってこんな理不尽りふじんな依頼をどうして!」







 梟房ふろふさは無言で相手の首を片手でつかみ、持ち上げて抹殺対象まっさつたいしょうをよわらせる。






「そ、それがお前の…ふっ、ろくな死に方しないぞ」







 ムエタイや他の格闘技では使わない暗殺術あんさつじゅつ抹殺対象まっさつたいしょうをたおす。






 ふう。

 リングをとき、ため息を誰にも見られないようにしてワープホールを使って倒した抹殺対象まっさつたいしょうを送り届ける。






「これも幸せのためか」







 梟房ふろふさはビルの屋上へと飛んで休憩きゅうけいすることにした。






 梟房ふろふさの誰にも言えない悩みは増え続けている。





 いずれは自分も倒した抹殺対象まっさつたいしょうのように消されるかもしれないことは遠くない未来だから。






 すると他のワープホールが開き、梟房ふろふさの元へやってくる人間がやってきた。






 梟房ふろふさよりもひとつ歳下の男性で組織のトップクラスへとのぼった者。







「今日も仕事ははかどってる?」






 梟房ふろふさはいつも通りの口調で彼と話す。






「この仕事をやっていたら避けられないよ。 はかどっていようがいまいが」





 彼はこの仕事をすることにためらいがない。

 見た目はイケメンでさわやかだから一般人からはとても戦うようには見えないがきたえられた身体を見る人が見れば印象は変わる人間かもしれない。





「いくら梟房ふろふさくんでも余計な感情や私情しじょうをまじえてこの仕事をしていたら俺が梟房ふろふさくんと戦わないといけないかもしれないから気をつけてほしいよ」





「うん。 わかってる」





 じゃあと手を振りワープホールを通って彼は去っていった。







 次の抹殺対象まっさつたいしょう梟房ふろふさのちょっとした知り合いだから見逃すとでも上層部から思われたのかもしれない。






 信用されていないから彼が呼ばれたのか。

 梟房ふろふさは軽くショックを受けた。






 壊人彩豪こわいとさいご

 彼とは昔やっていた格闘技興行で少しだけしたしかった知り合い。






 もうしばらくあっていなかったがまさか彼も超能力をもっていて仲間になれるどころか抹殺対象まっさつたいしょうになるとは。





 この仕事を達成しないと彼に消される!





 梟房ふろふさは甘いカフェオレを飲みながら切り替えようと少しだけ考えてからビルから落ち、ワープホールへ飛び込んだ。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る