第1章〜どうぞ幸せになってほしいなんて しおらしい女じゃないわ〜⑧
頼りになる情報提供者からは、その日の放課後までに返信が届いていた。
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①RPG SEKAI NO OWARI
②第ゼロ感 10−FEET
③unrabel TK from 凛として時雨
④シュガーソングとビターステップ
UNISON SQUARE GARDEN
⑤GO!!! FLOW
⑥奏(かなで) スキマスイッチ
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注釈付きのメッセージには、こんなことが書かれていた。
「多分、最近の高校生が知っていて、アンタが歌えそうな曲を中心に選んでみた」
「①と②は、最初の場を盛り上げるため。③と④は、歌えるならウケること間違いなし。⑤は、一緒に男の子が居てデュオしてくれるなら鉄板! ⑥は、締めに歌っときな」
これらの楽曲は、
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サンキュー、ワカ姉!
いつも、ありがとうm(__)m
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絵文字付きで返信すると、「ま、いいってことよ」と語る細長いパンダのようなキャラクターのスタンプとともに、
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せっかくの機会だし楽しんできな!
余裕があれば、結果報告よろ!
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というメッセージが返ってきた。
オレがサブカル方面の師匠として絶大な信頼を置くワカ
ワカ
いつもながら、的確なアドバイスをくれる叔母のメッセージを有り難く感じながら、オレは、日課のゲームプレイを控えて、ワカ
具体的には、カラオケの練習用映像を動画サイトでチェックして、歌いだしやリズム、音程を確認し、準備を整えた。
こうして、オレは
◆
翌日の放課後、
このチェーンは、飲食物の持込みが可能な上に格安料金という、学生のために存在しているような神待遇の営業方針で、自由に使える資金が少ない高校生の御用達となっている。
たしか、少し前まで、久々知や上坂部の自宅近くの
店舗名は、しおまねき武甲之荘店……。またしても、オレの自宅の近隣の店が選ばれた。
久々知と上坂部は、どれだけ、オレの地元が気に入っているのだろう?
自宅から徒歩10分と掛からない場所に集まることに少し気まずさを感じたりもしたが、それ以上に、この後の本番に備える緊張感の方がはるかに上回っている。
カラオケ店の向かいにあるドラッグストアで、スナック菓子などを買い込んでから受け付けを済ますと、オレたちは5番の部屋に案内された。
ボックスに入室し、上坂部が気を利かせて(あるいは、久々知と名和との三人だけになりたくなかっただけかも知れない)、ドリンクを取りに行くと、オレは早速、試練の時を迎えることになった。
「立花、今日は付き合ってくれてありがとうな! 遠慮せず、お前から曲を入れてくれ」
さわやかな笑顔で勧めてくる委員長の言葉には、すぐに遠慮と辞退の返答をしようとしたのだが、
「わ〜、私も立花クンの歌、聞いてみたいな〜」
という
(誰もトップに歌いたくはないのか……)
と、オレは渋々、リモコン端末を受け取って、一曲目の曲名を検索して送信する。
「お〜、懐かしいな〜! この『クレしん』の映画、家族で観に行ったよ!」
「へ〜、大成クンは、『クレヨンしんちゃん』好きだったの?」
「子どもの頃の話しだけどな……」
イントロが流れる間、付き合いはじめたばかりの二人は、早くも彼らだけのムードを作り始める。
ただ、こちらとしては、そんなことに構っている余裕はなく、なんとか、トップバッターの役割を果たすことで精一杯だ。
やや短めのイントロが終わると、ちょうど、ドリンクを取りに行っていた副委員長が戻ってきた。
♪ 空はあおく 澄みわたり 海を目指して歩く〜
♪ 怖いものなんてない 僕らはもう一人じゃない
オレが歌い出すと同時に、上坂部葉月が言葉を発した。
「わ〜、セカオワだ! この『しんちゃん』の映画、
その瞬間、マイクを握りながら、懸命に音程を外さないように慎重に歌っていたオレでも気づくくらい、室内の空気が明らかに変わった。
「他は、オレンジジュースとウーロン茶とアイスコーヒーを持ってきたから、立夏は好きなのを取ってね」
「ありがとう、葉月! じゃあ、ウーロン茶をもらうね」
そう言った転校生の目は、笑っていなかった。そうして、彼女は、隣に座っている、付き合い始めたばかりの彼氏に、なにやら耳打ちをする。
「えっ!? もう歌うのか?」
久々知大成は、そう反応したような気がするが、彼の言葉の意味は、オレの歌が終わったあとに判明することになった。
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