第18話
皆さんは眠れない日がないだろうか。
当然あると思う。
怖い体験をした時であったり、何かに熱狂して興奮が冷め止まない時であったり。
少なくとも人生。
何年も生きていれば数日程度は必ずあると思う。
何故そんな事を皆さんに問うのか。
理由は単純。
現在進行形で俺自身が眠れないからだ。
う〜。
布団の中で蹲りながら必死に目を瞑る。
何故、眠れなくなったのか。
その理由は何時だって単純なもので。
今日、眠れなくなってしまった原因は、その理由の中でも王道中の王道。
怖い夢を見たからだ。
なんでこんな目に〜。
布団を頭まで被る事で、見えない敵から必死に身を守る。
今日も眠るまでは完璧だった。
何時もの様に夕食を摂り、何時もの様に入浴し、何時もの様に寝床に着いた。
そして自然と瞼は落ちて行き、心地よく1日の終わりを迎えた筈だったのだが。
何故こうなった!?
夢の内容。
それは思い出すだけで悍ましい。
1人で彷徨った樹海。
時々聞こえてくる不気味な女の声。
そして現れた長い髪の女、、、。
ギャーー!!
駄目だ駄目だ。何故思い出したのだろうか。
状況は悪化。更に目が冴えてしまった。
う〜。どうしよう。
こんな時は人肌が恋しくなるもの。
だが周囲には誰も居ない。
それに時刻は深夜。
朝はまだまだ先だ。
このまま此処に居ても怖い思いをするだけ。
う〜。怖いけどやるしかないよね、、、。
そんな訳で僅かながらの覚悟を決め、人探しの旅に出発するのだった。
、、、。
その道中。
ピュー!
「ひぃ〜」
風の音にビビリながらも少しずつ前に進む。
このお城に来てから数週間が経過したとは言え、お城自体が凄く広い為、まだまだ知らない場所も多い。
現に初めて見る階段を少しずつ昇って行く。
何処に続いているのだろうか。
夢の恐怖に怯えて無我夢中に進んできてしまったが。
此処が何処なのか。全く分からなくなってしまった。
どっちに進めばいいのかな?
階段を昇りきった所で行き先に迷う。
そもそも人肌恋しさに飛び出してきたが、誰がどの部屋に居るのかなど全く知らない。
正解がわからないのだ。
ガタンっ!
「ひぃ〜」
迷っている間にも、物音などにより恐怖が増してくる。
う〜。迷っている暇などない。
勘だが右に進んでみよう。
そんな訳で早速。右奥へと進んで行くのだった。
、、、。
そのまま進む事、数分後。
とある部屋に辿り着いた。
此処なら誰か居るだろうか?
僅かな希望を胸にドアを開ける。
っ!
だがそんな希望に反し、部屋の中は真っ暗だった。
物音もせず人の気配も感じない。
う〜ん。誰も居ないよね〜。
望みは薄いだろう。
折角見つけた部屋だったが、人が居ない様では用がない。
早く次の部屋へ向かおう。
そんな訳で踵を返そうとした訳だが。
ガタンッ!
「っ!」
部屋の奥から物音が響く。
え?今の何?
恐る恐る振り返ると。
先程まで真っ暗だった筈の部屋の奥。
角を曲がった先で灯が燈っていた。
あれ?人がいる?
灯りが燈るという事は、そういう事なのだろう。
つまりは、ようやく人に会う事ができたのだ。
よかった!人がいた!
その事実に先ずは安心する。
でも知ってる人かな?
知らない人では意味がない。
初対面の相手と一夜を明かす。
それもそれで気まずいだろう。
知ってる人がいいな。
そんな思いを胸に灯の方向へ進んで行く。
近付くに連れて聞こえてくるカタンっカタンっという音。
何をやってるのかな?
音の感じからすると何かを切ってる。のか?
考えても分からないので。
念の為、まずはゆっくりと確認しよう。
そんな訳で、灯の下へゆっくりと顔を覗かせる。
あっ!やっぱり人だ!
そこには全身の筋肉が特徴的な大きな背中が見えた。
そして僅かに動く手元。
やはり何かを切っているのだろう。
う〜ん。やっぱり知らない人だな。
先にも言った様に知らない人では意味がない。
他の場所を探すか。
そんな訳で。背中を翻した。
その瞬間。
ガンッ!
「っ!」
背後から金属音が響く。
えっ?今の何?
壊れたロボットの様に、恐る恐るカクカクと振り返ると。
そこには。
「ふーっ!ふーっ!」
「っ!」
目のみが露出した謎のマスクを顔に付け。
手には血だらけの出歯包丁を持ったまま荒い呼吸を上げる大柄な男が、、、。
、、、。
、、、っ。
「きゃーー!!」
急いでその場を逃げ出す。
なんだアレ。なんだアレ。なんだアレ。
完全にジェ〇ソンじゃないか!
怖すぎるだろぉーーー!!!
ヤバいヤバい!ころされるぅーー!!!
こうして。
あまりの恐怖に無我夢中で走り続けるのだった。
、、、。
それから数秒後。
はぁ。はぁ。はぁ。
膝に手を突き、呼吸を整える。
一体、今のは何だったのだろうか。
分からない。分からないが、とにかく怖すぎる。
それに目が合っちゃった。
殺されないよね!?
背後を確認するが、どうやら追ってきてはいない様だ。
取り敢えず大丈夫かな?
分からないが、そう思う事にしよう。
うん、そうしよう。
そうして無理矢理、自分を納得させる。
ふぅ。
改めて此処は何処だろうか?
随分と移動した為、完全に見た事がない場所へ辿り着いてしまった。
う〜ん。あっ!
適当に辺りを見渡していると1つの大きな扉を発見した。
今まで見てきた扉と比べるとより一層豪華。
偉い人の部屋だろうか?
分からない。分からないけど。
何時、先程のジェ〇ソンが追ってくるか分からない今。
早く何処かの部屋に隠れてしまいたいのが本音。
よし!分からないけど取り敢えず入ってみよう!
そんな訳で早速。重たい扉を開けて中に入る。
お〜。
何となく理解していた事だが、部屋の中は凄くゴージャスだった。
多くの本が並べられた大きな棚に高級そうな絨毯。
更には部屋の中央に鎮座する特大のベッド。
誰か寝てるかな?
ベットに近付いてみると、僅かだが寝息が聞こえてくる。
ゆっくり顔を覗くと。
あっ!ユリウスくん!
それはユリウスくんだった。
すやすやと気持ち良さそうな顔で眠るユリウスくん。
よかった〜。
その瞬間、強張っていた体の力が抜ける。
先程のジェ〇ソンから逃げれた事もそうだが、何より知ってる人に出会えた事が嬉しい。
ようやく出会えた!
当初の目的が達成できたところで、早速ユリウスくんの布団に潜り込む。
色々な事があったが、これで一件落着だ。
人の温もりを感じた事で自然と睡魔に襲われる。
よし。これでぐっすりと眠れるぞ〜。
ユリウスくんにきゅっと抱き付く。
これで完璧だ〜。
おやすみ〜。
こうして無事に意識を手放し、眠りへと誘われるのだった。
、、、。
そして迎えた翌日。
「うわぁーーーっ!!!?」
「っ!?」
「なんでいるのさ!!」
「?」
赤面したユリウスくんの悲鳴にも近い叫び声で目が覚めたのは別のお話。
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