3丁目のガンちゃんがいく

夢ノ命

第1話 耳かっぽじおじさん


 ガンちゃんは、6歳の男の子。


 こぎれいに整った前髪の下のまんまるい目。


 頭には茶色いカウボーイの帽子がのっかり、腰にも茶色のカウボーイベルトをしめて、ちっちゃいジーパンをはいています。


 みんなから『3丁目のガンちゃん』って、呼ばれています。


 そう呼ばれるきっかけとなったのが、【耳かっぽじおじさん】との出会いでした。



 あれは1年前の春のことでした。


 谷中3丁目公園ではちょうど桜が満開の季節、ガンちゃんは近所のお友達となわ跳びをして遊んでいました。


 ガンちゃんは、まだ前跳び30回ができませんでした。


 ガンちゃんは、前跳びの練習をしながら、昨日幼稚園の体育の先生から言われたことを思いだしました。


 『まえとび30かい、ちゃーんとできるように、練習してきてください。いいですか』


 ガンちゃんは、スポーツ刈りで背の高い男の高杉先生に向かって叫びました。


『30かいなんて、へちまのへっちゃら、へのかっぱ!どうせれんしゅうするなら

100かいぐらいにして!』


『でたな、ガンジの口八丁ケンジュウ。いいぞ。もっとならしてみろ』


高杉先生は、怒るかわりに笑って言います。



『100かいやってできたら、どっちがながくできるか、こんどは、せんせいときょうそうだ!』


『よく言ったガンジ。というわけで、次の体育の時間には、ガンジと先生の前跳び競争をやります』


 まわりの子供たちがさわぎはじめました。


『ガンちゃん、ほんとにできるの?』


『たかすぎせんせいにかてっこないわよ』


『むりむり』



 足になわとびがひっかかり、ガンちゃんは、目をさましたように、気がつきました。


 目の前に男の人が立っています。


 ちょうど、ガンちゃんのお父さんと同じくらいの年齢でしょうか?


 野球ぼうをかぶったキツネのように目の細い、でんとお腹の出ている、見たことのないおじさんでした。



 ガンちゃんはまた、数をかぞえながら前跳びを始めました。


 でも、何回やっても15回を過ぎたところで、なわが足に引っかかってしまいます。


『あ~ぁ、そんなんじゃダメダメ。いつまでたっても飛べやしない。耳をかっぽじって、ようく聞きな』


 目の前に立っていた見知らぬおじさんが言いました。


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