魔物に支配された日本から異世界転移でレベルアップ出来るのは俺達だけな件〜でも戦うたびに幼馴染がスキルの副作用で発情するので困ってます〜

アカバコウヨウ

第一章 最強への始まり

第一話 幼馴染からの告白

「琥太郎……その、話があるんです!!」


 もじもじ。

 照れ照れ。


 夕陽に照らされた帰り道。

 風が心地よい夏の始まりの日。


「あ、あのね……あたし、ね」


 きゅっ!

 と、俺の手を握ってくるのは幼馴染の少女だ。

 宵闇の様に美しい長髪、やや紫がかった黒の瞳。

 そしていつもの黒を基調としたブレザータイプの学生服。


 俺こと渋谷琥太郎しぶやこたろうの大切な幼馴染——有明天音ありあけあまねだ。

 そんな彼女が。


「あ、あたし……実は、ずっと……ずっと!!」


 頬を染め、アニメでよく見るヒロインの様な顔でこちらを見てきている。

 間違いない、これはあれだ。


 告白!?


 やばいどうしよう。

 たしかに天音はかわいいし、意識したことがないと言えば嘘になる。

 でも俺にとって天音は何よりも幼馴染だ。


「ずっと琥太郎に隠してたことがあるんです!! それで、今日はその……あたしのお願いを聞いてくれません、か!?」


「あ、あぁ……もちろん」


 まだ焦るな。

 落ち着け。

 天音は今、俺に告白しようとしているのだ。

 となればつまり、一番緊張しているのは天音のはず。


 受け止めろ俺!

 だって答えは決まっている!

 そうだ、長年答えは決まっていた。


「あたしと一緒に異世界にきてください!!」


「俺でよければ喜んで!!」


 あれ?

 天音のやつ今なんて言った?


「本当ですか!?」


「え、うん……え?」


 天音が言ったことをよく理解できないその間に。

 突如グニャリと捻れる視界。

 僅かに途切れる意識。



 そして気がつくと。

 俺と天音は——


「どこ、ここ!?」


 見渡す限りの大森林。

 木々の合間から見えるのは、見たこともないほど美しい空。

 そして、鼻に香ってくるのは今の荒廃した日本では決して感じられない澄んだ空気。


「さっき言った通りです!」


 と、俺の思考を裂く様に聞こえてくるのは天音の声。

 彼女は俺の手から手を離したのち、まるで紹介する様に言ってくる。


「異世界です! あたし達が住んでいる世界とは別の世界にやってきたんです!!」


「いや、なんで!?」


「時間がないから手短に言います! あたしはとある理由から異世界に行く能力を得たんです!」


 ツッコミたいことも聞きたいこともたくさんある。

 けれど、俺は長年天音と一緒に過ごしてきたからわかる。


 天音は嘘は言っていない。

 そして今、彼女は本当に焦っている。

 さらに何より大事なのは。


 天音は泣きそうだ。


 冷静になった今の俺ならわかる

 あの夕陽の下。

 天音は何かに怯えて震えていたのだ。そして悩み抜いた末に俺へと助けを求めてきた。

 すがる様に……なら俺がするべきことは。


「天音! お前が今からしようとしている説明も何もかも後でいい! それよりも、お前が俺にして欲しいことを教えてくれ!」


「っ!」


「時間がないなら早く!!」


「この世界から日本へ帰るには、クエストを十分以内にクリアする必要があります! 今回のクエストはゴブリン一体の討伐です!!」


 ゴブリン。

 日本でも有名な小鬼の様なモンスターだ。

 けれど、日本でもゴブリンの対処はブレイバー協会がすると決まっている。

 理由は簡単、ブレイバー以外——いわゆる超人的な身体能力と異能を持つ覚者かくじゃ以外の一般人は、モンスターに対抗する戦闘能力がないからだ。

 しかし。


「大丈夫です! 今はあたしを信じてください! あたしがあなたに力を与えます! だから今は——」


「お前のことを疑ったことなんてねぇよ!」


 俺がそう言った。

 まさにその瞬間。


 ザッ!


 俺の背後、やや離れた位置から聞こえてくる音。

 振り返りそこを見てみると、そこにいたのは。


「gugegegegegegege!」


 間違いない。

 教科書にも載っているモンスター、ゴブリンだ。


「っ」


 天音にはあぁ言ったけど、やっぱり怖いものは怖いな。

 なんせモンスターが現れたら逃げるのは、日本に住む一般人からすると常識——。


「琥太郎! ゴブリンがきます!!」


「っ!」


 見れば、ゴブリンは地面を勢いよく蹴り付け凄まじい速度で疾走してくる。

 だが。


 見える!?


 覚者じゃなければ、モンスターの速度には対応できないはず。

 当然、俺は覚者でもなんでもない。

 なのに。


 右からの大振り!

 これなら体勢を低くすれば!


 ブンッ!


 空を切るゴブリンの拳。

 隙だらけだ。


「っ……あぁああああああああああ!!!」


 俺は大勢を戻す勢いを利用しつつ、渾身の右アッパーをゴブリンの顎へと叩き込む。


 ドッ!


 と、浮き上がるゴブリンの身体。

 さらなる一撃を叩き込むチャンスだ。

 狙うとしたら。


「ここだ!!」


 空中に浮かんでいるせいで隙だらけのゴブリン。

 俺はそんなゴブリンの横っ腹へと渾身の蹴りを放つ。


 ゴキ、ゴキゴキゴキッ!


 そんな音を立てて吹っ飛んでいくゴブリン。

 俺は油断なく奴を観察していたがやがて——。


『クエストクリア!』

『報酬として82ポイントを獲得しました』

『初クエストクリアボーナスとして、100ポイントを獲得しました』

『現在、渋谷琥太郎のポイントは182/100です』


 と、脳内に浮かんでくる謎の文字。

 なんだかよくわからないけど。

 これで終わったのだろうか。


「琥太郎、大丈夫ですか!?」


 聞こえてくる天音の声。

 同時。


「ごめんなさい!」


 ぎゅっ。

 と、背後から抱きしめてくる天音。


「何も言わないで、こんなことに巻き込んでしまって本当にごめんなさい!」


「さすがに驚いたけど、気にしてないよ。どうせ何日も一人で悩んだ末の行動だろ?」


「うっ」


「お前、小さい頃に虐められた時もずっと誰にも相談しなかったもんな」


「うぅ」


「あの時も思ったけどさ……むしろ、気がついてやれなくてごめん」


「いいです、結局最後は助けてくれますから。だから琥太郎、ありがとうございます!」


 と、さらに強く抱きしめくる天音。

 けれど、今はこうしている場合ではない。

 俺は少し名残惜しいが、天音をから離れると彼女へと向き直り。


「で、これはどういう状況だ? このわけわからん状況について知りたいんだが、なるべく早くな」


「あ、えっとね……結論から言うと」


 ガサゴソ。

 と、ポケットから何かを取り出し見せてくる天音。

 そして彼女。


「あたし、ブレイバーに選ばれたんです……つまり覚者になったんです」


「は!?」


 日本に突如現れた魔王。

 奴が日本中に解き放ったモンスター。

 そしてそれと時を同じくして、人間達の間で覚醒するものが現れ始めた。

 それが覚醒した者——覚者。


 覚者は身体能力の上昇及び、特殊能力を使えるようになる。

 そして、その覚者のみで構成される組織——魔王討伐隊ブレイバーだ。


「でもそれはあくまで日本の話だよな? どうしてこんな異世界だがなんだかわからない場所に居るのと関係してるんだよ?」


「あたしの能力なんです、覚者としての」


 そして、彼女はブレイバーのみに許されたステータスウィンドウの魔法を使い、自らの能力——固有スキルを見せてくる。

 そこに書かれていたのは。


固有スキル『比翼連理ひよくれんり

 最愛の者の能力を大幅に上昇させることができる。また、このスキルの保有者の身体能力は常時大幅に低下する。さらに一度の使用時間に応じて、このスキルの使用者は発情する。


「ぶふっ!?」


 思わず変な声が出た。

 なんだこの小っ恥ずかしいスキルは!?

 発情!?

 というか、このスキルのおかげで俺の身体能力が上がってたのか?

 でもそれってつまり。


「ち、違います!! 見て欲しいのは『比翼連理』じゃないです! こっちです、この下のやつです!!」


「え、えっと……どれどれ?」


 なんだ?

 さっきまでは何もなかった場所に文字が浮かんできて。


「隠しスキルみたいです。あたしが許可した相手にしか見られないみたいで」


 と、そんなことを言ってくる天音。

 そうこうしている間にも、だんだんと文字はハッキリしていき。

 そこに書かれていたのは。


固有スキル『ザ・ゲーム』

 異世界に行くことができる。一週間に一度も異世界に行かない場合は、週末のいずれかの時間に強制転移される。クエストを三回連続で失敗した者は死ぬ。また協力者を一名選ぶことができ、このスキルのあらゆる事象の適応対象とする。


 なるほど。

 要するにまんまゲームなわけだ。

 残機3のステージクリア型ゲーム。

 二人プレイ可能、と。


 となると、さっき頭に浮かんできた文字はステージクリア報酬ってところか?

 ポイントがどうとか言ってたが……。


『現在のポイントは182/100です。ポイントを消費してボーナスを取得できます』

『①レベルアップ。②アイテム取得。③スキル取得』


 と、再び直接脳に浮かぶ文字。

 本当にゲームなわけだ。

 となると状況も読めてきた。


 おそらく。

 天音は『比翼連理』の副作用でブレイバーとしては使い物にならないくらい弱体化している。

 そこにこの『ザ・ゲーム』。


 おそらく彼女はモンスターに勝てず、ひたすら逃げたのだ。

 クエストの制限時間が来て、日本に転移させるまで。

 そしてそれを二回繰り返した。

 だから後のなくなった天音は、俺を頼ってきたわけか。

 なら今気にするべきは。


「天音、残機はどうなってる?」


「へ?」


「クエストをクリアしたんだ! 失敗の猶予は回復してないか? というかなんか確認する方法ないのか? 頭に思い浮かべてみろ! 俺もさっきポイントのことを思い浮かべたら色々説明された!」


「え、えと……あ! 3回に戻ってます!」


 ならとりあえずは一安心だ。

 問題があるとすれば、これが今後も続くことだが。

 などと、俺がそんなことを考えていると。


 フッ。


 景色が一瞬にして入れ替わる。

 見回すとそこにあるのは見慣れた風景。

 間違いない、日本に帰ってきたのだ。


 なんだかドッと疲れが湧いてくる。

 多分、天音が『比翼連理』の発動をやめたのかもしれない。

 実際、体から力が抜けた気がする。


「琥太郎!」


 きゅっ!

 と、俺の腕を掴んでくる天音。

 彼女はそのまま言ってくるのだった。


「今日はあたし、帰りたく……ありませんっ」





——————————————————

あとがき


フ○ルシのル○がコク○ンでパージみたいになってしまった。


さて

初めましての方、既存作品で知ってくれた方、商業で知ってくれた方

どうも、作者のアカバコウヨウです。


もしも続きが気になったり、面白かった!

と、思ってくれた方が居ましたら

『フォロー』、『星による評価レビュー』などくれると参考・励みになりますので

よろしくお願いいたします!


追伸

書籍化したらエ○たくさん入れたいです。

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