スカポンタンと頑固おやじ

コンピュータで重力の計算とか空気の抵抗とか計算するっす。そういう計算を使って野球ゲームを作るっすよ!

細かく計算すれば、現実みたいになるっすよね。リアルっすよね。

これは言ってみれば、現実を模倣しているっすよ。

わかり易く言えば、現実と同じような感じで野球ができるっす!


バカヤロー!!

画面の中でちまちま動いているだけなのに何が現実だ、このスカポンタンが!


スカポンタンって何っすか!?

だって現実と同じような計算してるっすよ!

現実みたいなもんっすよ!


そういや、てめーは、この前は、俺様の改造ガス銃を本物の銃みたいなもんっす!とか言ってやがったな。

あの時からてめーのものの見方は、どうにもインチキくさいと思っていたんだよ。


だって、あのガス銃、鶏肉を皮ごとぶち抜けるっすよ!

下手したら、人、殺せるっすよ!

そんなもん、やばいじゃないっすか!

警察に言い訳効かないっすよ!


うるせー!

おもちゃはおもちゃなんだよ!

つべこべ御託を抜かすな、このスカポンタンが!


なんでわからないっすか!?

頑固すぎるっす!




スカポンタンは、リアルな野球ゲームを語る上で画面の中だろうと外だろうと、それは些末な問題であるとした。リアルな野球ゲームを語る上で必ずしも必要ではないとしたが、頑固おやじはそれを決して許さなかった。許せなかったので、彼をスカポンタンと呼ぶようになった。

頑固おやじは、おもちゃの銃を人への殺傷能力を得るほどまで改造したが、おもちゃはおもちゃであるとした。ガス圧を上げただけで、おもちゃの進化は限定的なのだ。それだけなのだがスカポンタンは、その考え方を良しとはしなかった。スカポンタンは、人への殺傷能力が問題だと考えて警察沙汰を恐れたが、頑固おやじは決して譲らなかったので、スカポンタンは「やーい頑固頑固」と「頑固」を連呼してから走って逃げた。遠くへ逃げたが、二人は同じ家に住んでいることをすぐに思い出した。




大規模言語モデルが世間的に話題になったとき、知性とは何ぞやって話題が起こった。

物事は本質が重要だと(枝葉は邪魔だと)考える人は、無意識に知性とは何ぞやと再考した。

本質に興味が無い人は、人間と大規模言語モデルをそのまま比較しようとした。


ある人は、「我々が思っていた人間の知性は、我々が思っていたほど高度なものではない可能性があやもしれん」と悩んだ。

ある人は、「いやいや、違うでしょ。AIはAIで人は人。それっぽくなっただけ」と、歯牙にもかけなかった。


意見は途方もなく分れた。そしてこの両者が歩み寄ることは決してないのだ。決して、無いのだ。AIは、関係ないのだ。

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