現状で困ってない

「東野君、君はいつも紙の地図を広げて移動ルートを決めているけれど、さすがに移動範囲が広いと厳しくないかい?

 タブレットで電子地図はどうだろうか?

 便利だよ?」

「必要ないね。現状で困ってないもの」

「そうかい。使う必要性を感じないのかい?」

「ああ、そうだとも。必要ないね」

「試してもないのに便利さを否定するのかい?」

「困ってないのだから確かめる意味が無いよ」

「そうは言うけれど、君がいくつもの地図を広げている間に僕たちはルートを把握しているよ」

「だったら猶更じゃないか、それならそれで、その時点で僕は地図を片付けるだけだよ」


「そうだ。私が実演するのでどうかな?どんなものか試しに見てみないかい?」

「まあ、見るだけならね」

(実演……)

「どうだい?」

「まあ、便利そうだね。でも難しそうだからね。考えてはおくよ」


「ところで今話題の生成AIって知っているかい?」

「ああ、人の仕事を奪うやつね」

「その理解は、なんというか一方的で一面的すぎないかい?」

「僕はその手の危ないものは、使わない主義なんだ。知る気もないよ」

「まあ、君は使ってもみないのだろうね」

「無論だよ。使わない。人間の偽物なんてものに興味は持てないもの」


東野君は、大地に硬く根を張っている。

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