嘘校則

友川創希

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黒玄くろげん高校校則

・校則に反する服装をした者は最低15日間の停学処分とする。

・正当な理由なく遅刻を月3回以上繰り返した者は最低3ヶ月間、日曜日も登校日とする。

・各教科の提出物が1つでも未提出だった場合、試験等の結果に関わらず、その教科の成績は5段階評価で1または2とする。

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 周りには更地が広がる中、ひっそりと大きな建物が佇んでいる――それが黒玄高校だ。実態を知らずにこの高校に入った人は、まるで森林で彷徨うようなことになるかもしれない。そのような高校なのだ。偏差値は65程度の県内有数の進学校ではあるが、その実態は厳しい校則に覆われている。実際、僕の友達もミサンガを着用しただけで、校則に反する服装をしたとして、現在15日間の停学処分中だ。そんな状況に、僕の理想とする青春が遠のいている気がする。


 まだここまでの校則は厳しいだけで片付けられるから許容範囲内。しかし、これを超える校則がある。それは、まさしく『ブラック校則』というにふさわしいだろう。


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理由の有無や内容にかかわらず、嘘をついていることが確認できた場合、該当生徒を退学処分とする。ただし、証拠等を集めたり協力した生徒に対しては奨励金を贈呈することがある。

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 この校則は、生徒たちの間で『嘘校則』と呼ばれる。


 この高校では嘘を付くことが一番の悪だとされている。教員たちは、嘘は泥棒の始まりではなく、嘘が社会を壊すと考えているのかもしれない。とにかく、どんな嘘であろうと見つかったら即退学という処分がくだされて、一発アウトなのだ。


 僕の知り合いでは今のところこれが原因で退学処分になったやつの話は聞いていない。だが、他学年では何人かこの校則の餌食となったやつがいるらしい。僕の知り合いが嘘校則で退学になるのも時間の問題ではないだろうか。次の餌食が僕でないという保証もない。


 この校則の処分対象となるのは一定の証拠が集まったときなので、周りに気づかれない程度に嘘をつくのならまだセーフの可能性が高いが、この学校の教員だけではなく、奨励金に魅かれた生徒のたちが監視しているという噂もある。それに、「家に帰るまでが遠足」という言葉があるように、この校則は帰宅の道中にも適用されるのだ。


 そのため、僕らは毎日、逃亡犯かのような居心地の悪さを味わっているのだ。ただ、僕も含め皆口を揃えてこう言う、


「しょうがない」


 と。


 それでも、生徒が毎年入ってくるのはその実態をしらないからだろう。校則なんて皆、入った後に知る。口コミというものがあるかもしれないが、この嘘校則など含め、校則について言及することは固く禁止されていて、これを破ったものは最低30日の停学処分だとか聞いたことがある。


 僕が(もちろん校則について知らない中)ここを選んだ理由は、夜10時まで空いていたる自習室があったり、先生のレベルが高かったり、修学旅行が海外だったからということに興味惹かれてだった気がする。


 僕は道を選びをどうやら、間違えてしまったようだ。

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