第21話 廟に戻る
姚妃や、同じ宮女仲間であった謝杏、高佳林に別れを告げ、後宮を後にする。謝杏と高佳林は、『えっ、もうやめちゃうの!?』、『せっかく、仲良くなれたのに……』と、惜しんでくれた。短い間だったが、二人とも美雲によくしてくれた。歳のあまり離れていない友人のような相手は、今までいなかっただけに名残惜しくもある。
だが、後宮での自分の役目は終わりで、もうここを訪れることはないだろう。
自分には自分のいるべき場所と、やらなければならないことがある。彼女たちにも、それぞれ役目があるように。
美雲が月仙廟に戻ると、「師姉~~っ!!」と小桃が駆けてきてギュッと抱きついてきた。人の姿になっているのは、月仙廟に訪れる人たちに対応するためだろう。
「この泣き虫め! ちょっとの間、師姉がいなかったからって赤ん坊みたいに甘えるなよ」
精怪の姿でフワフワ浮いている雷辰は、ふてくされたような顔だ。
「雷辰は、師姉の言いつけを破って、いなくなっちゃったくせに!」
「留守番なんて、お前一人で十分じゃないか。そんなこともできないのか?」
言い合いをする二人の間に入り、「はいはい、二人ともありがとう」と手を叩く。
「小桃、ごめんなさい。何日もかかるなんて思わなかったのよ。私がいない間、何も問題はなかった?」
「近所の人たちが、毎日お供えを持ってきてくれて、掃除も手伝ってくれたのです」
小桃は美雲と手を繋ぎながら、嬉しそうに報告してくれる。
近所の人たちが、美雲がいないかわりに廟の管理を手伝ってくれたようだ。師父がいたころから、顔なじみの人たちばかりだ。この廟のことを、気に掛けてくれているのだろう。
「じゃあ、今度、みなさんにお礼を言わなくてはね。お礼に、ちょっとしたお祭りでもしようかしら……月祭も近いことだし」
小桃と雷辰は、「お祭り、お祭り!」とはしゃいで飛び跳ねる。そんな二人を見て、美雲も微笑んだ。
帰ってきたのだから、まずはお堂の神様に報告と挨拶をしなければならないだろう。二人を連れて、正面のお堂に入っていく。ひんやりとした空気と、くゆるお香の香りを吸うと、戻ってきたのだと実感が湧いてきて、ホッとする。
やはり、ここが自分の変わらない居場所だ――。
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