自信を作り出す方法
「彩葉、もう大丈夫?」
「うん、あー怖かったぁ」
私は瑠花とベンチに座ってコンビニで買ったアイスを食べている。
ルズトイズの手下がいなくなって大会は続けられることになったのだ。
「てか、瑠花はどうだったの?大会」
中級は紙の試験がないからすぐに結果が発表されるのだ。
「ううーー」
瑠花が変なうなり声をあげるもんだから私はてっきり表彰台に上がれなかったのかと思った。
けれど瑠花は当たり前のように三位だったと言った。
「え!おめでとう!」
「ありがとう。だけど、表彰台の中ではビリだよ、もっと頑張らなきゃ」
私はそう思える瑠花がかっこいいなと思いつつ、少しうらやましく思えた。
私には飛びぬけてすごいものがないし…一言でいうと平凡女子だ。トイプロのメンバーに選ばれても平凡は平凡のまま。
「はぁー瑠花はすごいなぁ」
私は空を見上げながら言った。
「え?」
「だって中級で三位になれちゃうんだもん。それに比べて私は……」
「いや、何言ってんねん!」
瑠花はなぜか関西弁でツッコんできた。
「さっきルズトイズの手下を倒したじゃん!それでも、自分にはなーんにもないみたいな言い方するの?」
「だって、」
「彩葉はね自分に自信がなさすぎ!もっと胸張って、姿勢正して!」
瑠花は背筋をピンと伸ばして見せた。私もやってみる。何の効果があるか分からないが、少し自信が持てたかもしれない。
「どう?」
「何か自信が持てた気がする」
「でしょー私が生み出した自信を作り出す方法なんだっ!」
瑠花が自信満々に言うから思わず吹き出してしまった。
「いや、もっと前からこの方法編み出している人いると思うよ」
私が言うと瑠花は伸ばした背を一気に縮めて
「まじかぁ」と悲しそうに言った。
そんな瑠花を見ながら私はふと思い出した。
「やば!お礼言いに行かないと!」
安心しすぎて青風先輩のことを忘れていた。
われながら最低だと思う。
私は徐々に溶けていくアイスを口に放り込んだ。
*~*~*~*~
「あの、青風先輩!」
私は朝丘さんとベンチでジュースを飲んでいた青風先輩を見つけて声をかけた。
「あ、大丈夫だった?」
「はい!さっきは守ってくれてありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそあのカエルを倒してくれてありがとう」
青風先輩はさわやかな笑顔で笑った。
「なんであの時ステージに来てくれたんですか?」
「ちょうど中級の大会が終わって太陽の様子を見に来たんだ、そしたら彩葉ちゃんがカエルにおそわれているのを見て、いてもたってもいられなくなったんだ」
「そうなんですね、ありがとうございます」
すると、青風先輩の隣に座っていた朝丘さんが思いついたように私に聞いた。
「おまえさ、俺のことなんで呼んでた?」
「朝丘さん」
「景のことは?」
「青風先輩」
「「あ……」」
私と青風先輩は顔を見合わせて笑った。
「あはは、藤戸さん、なんで僕だけ先輩呼びなの」
「いや、なんとなく先輩感があったから」
「おいっ!それだと俺は先輩感ないってことか!?」
朝丘さんは笑いながら怒っている。
そんな朝丘さんを見てやっぱり先輩とは言えない気がした。
そして明るいアナウンスが聞こえた。
「みなさーん!お疲れ様です!全コースの大会が終わりました!みなさんは各自、家に帰っていいですよー、あと、初級コースの人は後日、合否がメールで届くと思うので楽しみにしていてください!」
(よし!帰るか!)
「青風先輩と朝丘さん!ありがとうございました!」
私は礼をしてカバンを取りに行こうと後ろを向くと……
「わぁっ!」
瑠花が急におどかしてきた。
「もう、やめてよー」
私は瑠花を叱りながらも、瑠花が持ってきてくれたカバンを持って駅に向かった。
瑠花と私の最寄駅までついて、別れ道で瑠花に手を振る。
「ばいばーい!」
「うん!またねー」
そして家までずっと歩いていく途中誰かに声をかけられた。
恐る恐る振り向くと……
「あ、青風先輩!?」
私は一歩身を引く。
「あぁ、ストーカーとかじゃないから!俺の家あそこなんだ」
指さされたところを見ると私の家とさほど遠くない位置に白い一軒家があった。
「え、うそ、じゃあ学校は?」
「ここら辺の公立の中学だよ」
私は私立の学校で徒歩二十分の場所に通っている。
「そうですか…」
私と違う中学校なのを察したのか青風先輩も「残念だな」と言った。
まぁでも家が近いんだしいつかは会えるよね!
私はさっき瑠花に教ええてもらった方法でポジティブに考える。
「あの、青風先輩は何位だったんですか?」
「二位だよ」
「え!おめでとうございます!」
「ありがとう、一位とれるように頑張るよ」
そして、青風先輩は瑠花がとても悔しい顔をしていたことを話してくれた。
「じゃあ僕、ここだから」
「あ、ありがとうございました!ではまた」
「うん、こちらこそありがとう。またね」
青風先輩はそのまま家に入っていった。
私はスキップをしながら自分の家に向かった。
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