トイプロ!!
柏桜 もち
不気味女子は私のペア!?
あのさ、知ってる? 人形には人間と同じように魂があるんだよ。人間には「いのち」人形には「ユウシ」っていう名前の魂。なんで私、藤戸彩葉がそれを知っているかって?
それはね、去年の夏頃……
「ねぇ」
私が学校から帰っていると中学生らしき女の子に話しかけられた。私と背は同じくらい。麦わら帽子を深くかぶってマスクをしていたから明らかに怪しい。私は防犯ブザーに手をかけた。
「怪しいものじゃないからっ!!」
私は耳のそばを殴られたような衝撃が走った。
声がとても大きい。
(うっ怪しい人に急に大声で叫ばれると寿命が縮むよー)
そんな私を怪しい女の子は怪しい目で見てきた。
(いや、怪しいのは私じゃなくてどう考えてもあなただからね?)
女の子は持っていたトートバッグからいそいそと私に名刺を渡した。
バッグに名刺しか入っていないのだろう。
トートバッグはそれくらいペッタンコになっていた。
(中学生が名刺?私に?やっぱり怪しいし、逃げようか…)
そんなことをグルグル考えていると女の子は勝手に自己紹介を始めた。
「私、中学一年生の安藤瑠花。最近咲山町に引っ越してきたんだ」
「そ、そうなんだ」
(はっ!相槌をうってしまった。怪しい人は無視しなさいって散々学校とか家で言われたのに)
「これからよろしく」
「…へ?」
(この子はやはり不気味すぎる)
私は怖くなってダッシュで家に帰った。
家のドアの前に着き、鍵をリュックから取り出そうとするが、なかなか出てこない。
「なんでこんなときに…!」
すると、
ガチャ
ドアが勢いよく開いた。
「わぁぁっ」
「ど、どうしたの!」
お母さんは目を白黒させている。
「お母さんこそ、なんで急に」
「さっきご近所さんにお土産渡し忘れちゃって、まだいるかなって思ったんだけど、いないか」
「なるほどね」
「彩葉はどうしたの?」
私はここであの子のことをベラベラとしゃべる気にもならず、いつもの調子にもどして「別に~」と言った。
すると、お母さんは安心したのかキッチンに戻っていった。
自分の部屋に入ってリュックを下ろす。
ベッドにダイブするとさっきまで固まっていた体が一気にほぐれた。
(あの子はなんで私に名刺を渡してまで自己紹介をしたのだろう?これからよろしくねって……不気味だ)
私はまた体を震わせた。
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