アリアさんの幽閉教室

柚月しずく

プロローグ



「ねえ、例の黒い手紙が届いたらどうする?」


 放課後の教室。

 黒髪をお団子に結った女の子が、数人の生徒に質問を投げかけた。


「どうするって……黒の手紙が届いたら、必ず従わないといけないんだよね」

「黒の手紙は招待状で、夜の学校に招待されちゃうんだっけ」

「普通は正面玄関の鍵がかかってるはずなのに、招待された人だけは、夜の学校に入れるらしいよ」

 それぞれが知っている噂話を、次々と口にしていく。

「アリアさんから招待状をもらったら……怖い目に遭って、行方不明になるってほんとうなのかな」

 ある女の子がぽつりと呟くと、シンと静まり返った。

 お互いに顔を見合わせて、ごくんと喉を鳴らす。

 

 この学校の生徒なら、誰でも知っているアリアさんの話。

 ウェーブがかったふわりとした銀色の髪の毛。

 真っ黒のワンピースを着ているらしい。

 アリアさんは遊び相手を探していて、気まぐれに黒い封筒に包まれた招待状を送るそうだ。

 受け取ったものは、いつのまにかこの学校から消えているんだって。

 この噂話の真相は誰にもわからない。

 だけど……。

「そういえば隣のクラスの紗奈ちゃん、最近学校にきてないよね。まさか……」

 それを聞いた女の子たちは、怯えた表情になる。


 アリアさんの話は噂話でしかない。

 実在するのかしないのか。

 悪い幽霊なのか、そうではないのか。

 真実は誰も知らない。

 ただわかっていることは……。

 この学校では行方不明者が後を経たない。

 ということだけ。


 このお話は、そんなアリアさんにまつわる奇妙なお話。

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