魔法世界の代弁者

YUGO

プロローグ

プロローグ

どうしてこんなことになったんだ??


俺は薄れゆく意識の中、これまでの人生を振り返っていた。

俺の名前は結城佐久、21歳の大学生だ。

自分で言うのもどうかと思うが、偏差値トップクラスの大学に通う新進気鋭のエリート。これから開かれた人生が待っているはずだ。


・・・と死ぬ寸前の状況で強がっていても仕方がない。本当はそんな充実した人生を送ってきたわけでないのだから。


思えば、幼少の頃から自分の意思に従って行動したことはなかった。

厳格な両親のもと、言われるままに勉強だけに打ち込んだ学生時代だった。常に競争の中に晒される環境で、親のプレッシャーに押しつぶされそうな毎日であった。


勉強が俺の全てになってしまい、結果を残すためにライバルとなるクラスメイトでさえ、俺は蹴落としてやるという態度であった。俺の敵意をクラスメイトに感じさせてしまっていたと思う。

唯一趣味として没頭していたゲームも勉強の邪魔になるからだと親に取り上げられてしまったため、同世代の友達と話すような話題にも疎く、無機質な人間になっていた。


こんな俺には当然クラスメイトも優しくしてくれない。クラスの中でも浮いてた自覚はあるし、疎外感もあった。

時間が経つにつれて自分の性格がネジ曲がっていくことを自覚する。それでも自分ではどうすることもできず、ただ親の言うがままに生きる日々。


それでも大学を卒業し、親から解放されたら自分で選択した人生を謳歌したいという一縷の望みくらいは持っていた。


小さいころ、ドラマでみた正義の弁護士シリーズにすごく興奮したのを覚えている。社会の不平不満に真摯に向き合い、常識を疑って自分の意思で行動していく型破りな弁護士像に憧れていたのである。


芯のある人間は自ずと周りからも一目を置かれ、信頼される存在であり、俺もドラマででてきた弁護士のようになることができたらきっと変わることができると信じていた。

そうなれば、きっと自己承認欲求も満たしてくれるはずと密かに夢を見ていたのである。

だからこそ、俺は大学で法学を専攻していた。


もしその夢が叶っていたならば、こんな気持ちで最期を迎えることはなかったのかもしれない。


それにしてもなんだか周りが騒がしい。サイレンらしき音もかすかに聞こえる。人が俺の周りに集まってきているようだ。

それもそうだろう。こんな街のど真ん中で落雷を受けてぶっ倒れているのだから。


いくらなんでもこんな確率の低い原因で死ぬことになるなんて夢にも思わなかった。

ただ生かされただけの人生。こんな終わり方が相応しいのかもしれない。

もはや楽になりたいとさえ思う。

だが、叶うことならば全く違う人生を一からやり直したい。今度こそ自らの意思で悔いのないような人生を送ることを望む。


この瞬間、結城佐久は絶命するのであった。

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