レベル1『女性洗脳』を『地道』に訓練して下克上します

ハカドルサボル

第1話 レベル1『女性洗脳』

 12歳で開花する才能『超能力』。10人に1人の割合で超能力者になる。


 日本は、超能力者を制御する都市、いわゆる超能力都市に高校生を送り込む。


 15歳から20歳までの間に開花する超能力。18歳から2年間をお国のため働かされる。そして、20歳を過ぎたころには能力は散る。


 元超能力者は天下りをして大企業の社長になるのがほとんど。それほど超能力者というのは重宝される。


 そして、12歳でレベル1の『女性洗脳』を得た青野海人は疑問符を口にする。


「最低な能力だな!?」


 女性洗脳は一人の女性をターゲットに、1時間だけ言いなりにできる能力。主な使用用途は好きな子を好き放題にするぐらいで、中学生の間は能力制御を受ける。が、海人は中学校で女子から猛烈に嫌われてしまう。当たり前だ。超能力者は10人に1人の割合で、ただでさえ奇異の目で見られる。プラス海人は、女性を自由にできる女性洗脳。中学校の3年間は誰一人、女子は近づいてこないと約束されたも同然。


 だったけれども。海人は家族以外で女性洗脳を隠した。だって、イジメられるのは明白だったから。


 レベル1の海人は下剋上を誓う。特に、高校生になれば自動的に送られる超能力都市の通称、超都市での生活が待っている。


 幼なじみの飛行空は『武士道』という超能力を手に入れた。彼女は剣道部で、剣を操る能力はぴったり。


 レベルは2。けっして高いとは言えないが、今後3年間の訓練でレベルは3や4になる可能性が高い。ちなみに最高峰のレベル5はこの世に7人しか生まれないと言われていて、約30万人の高校生の中で、7人の超人(レベル5)と呼ばれる。


「空。一緒に訓練しよう。僕の超能力は『女性強化』のレベル1だ」


 海人は嘘をついた。空は大事な幼なじみ。けっして嫌われたくない。


「うん。頑張ろう」


 こうして海人と空の秘密の特訓はスタートした。中学の授業の終わりに、毎日1時間だけ『女性洗脳』をして、『武士道』を鍛える。洗脳は人形を糸を操るように、頭でイメージすることで簡単にできた。なおエッチな展開はNG。海人は可哀そうなのはぬけないのだ。仮に、高校生になって性格の悪い女子が出てきたら『女性洗脳』を悪用しようと考えた。


 飛行空は大事な幼なじみ。彼女を好き勝手するのは海人の正義感が許さない。


 訓練は『地道』に毎日続いた。3年間の秘密特訓のおかげで、海人は『女性洗脳』をレベル4にまで上げて、空は『武士道』をレベル3までに上げた。しかし、海人は周囲の人に『女性強化』レベル3だと偽った。


 レベル3は超能力者の近似値。平均の50になる。なので、レベル1からレベル3までは誰でも超能力のレベル上げができる。そして、高校生の間にレベル4を目指すのが普通。


 海人は『女性洗脳』レベル4を『女性強化』レベル3と隠して、3年間、空の意識がなくなるのを『強化』による影響だと説明した。家族と研究者に隠したかいあって、海人の3年間は平穏無事に終わった。ただし、毎日の『地道』な秘密特訓によって、海人はついに彼女をゲットすることは叶わなかった。


「まあ、心配ない。高校生になって超都市に上京して嫌な女に出会えば、強引に彼女にしてみせる。ふっふっふ」


 レベル4『女性洗脳』の海人の冒険は高校生からスタートする。


 隣には、同じ中学卒業の飛行空がレベル3『武士道』を携えて、竹刀を持ちながら連いてくる。


 超都市に行けば真剣の開放だ。攻撃力はさらに上がること間違いなし。


 高校一年生。15歳。青野海人は東京の隣にある都市。超能力都市に足を踏み入れた。


「海人。『安全装置』は大丈夫?」


「ああ、空。『安全装置』を発動するぞ」


 すると、二人の周囲にシールドが張られる。『安全装置』は治安の悪い超都市における防護服。致死量のダメージを受けると、自動的にダメージを肩代わりしてくれるシールドが展開する。


 すり傷や切り傷などの軽傷は見逃すが、大事な武力である超能力者を失いたくない政府の措置である。


 電車で超都市に入った瞬間。社内の10人足らずの新学期を迎える高校生を迎えたのは強盗だった。


 両方の窓が割れて超能力者の先輩? が無礼講する


「ヒャッハー。新入生の諸君。超都市にようこそ。悪いが……」


 リーダー格のドレッドヘアの2年生が合図する。


「服以外の金目のものは全部、差し出してもらうぜ!」

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