無職だった俺が英雄として転生した件
シャチマくん
第一巻
序章
第1話「無職からの転生」
俺は無職のまま四十歳を迎える。人生の半分をどうしようもない状態で過ぎて行く日常に飽きて来るぐらいだ。
「はぁ。何で俺だけこんな人生なんだ? 俺だって立派な人間になりたかったはずだったのに……」
そんな風に思っていた時、そこで俺の前に謎の女性が現れた。彼女は怪しい感じの服装をしており、さらに大鎌を握っている。どこからどう見ても危ないのは一目で分かるのだった。
「な、何だよ! 俺に何か用か!」
「実は貴方のことを迎えに参りました。今日が貴方にとっての命日であり、今から転生するのです」
「転生? 何が言いたいんだ!」
「私は死神です。まぁ、良いので黙って死んでください。その後で話はしますよ」
(んぅ⁉︎)
そこで彼女は大鎌を振り上げ、それを思いっきり俺に向かって下す。その大鎌で斬り付けられた俺は意識が霞んで来て、目の前が朦朧とした。
すると、そこで俺が意識を取り戻すと、気が付いたらいつの間に少年の姿になった自分が目の前に現れた鏡に映る。それを見て俺は自分の身に何が起きたのかが分からないでいるのだった。
「これで私の役割は終わりました。それでは失礼します」
それだけ死神と名乗った女性は言うと、そのまま俺の前から姿を消してしまう。そしたら、そこで内心に向かって何者かが語り掛けて来るのであった。
『どうも。この度は人生において失敗した貴方に転生してもらいました。私は神からお告げを授かった【天命】です。これから貴方には初期スキルが発現し、それを駆使して英雄に成り上がってもらいます」
「え、英雄……⁉︎ 俺に一体どうしろと言うんだ!」
『これから貴方は神によって失敗してしまった人生をやり直してもらいます。英雄になることで名声と力を得るのです』
「名声と力を……?」
その時、天命が告げたことによると、俺は人生をやり直すために選ばれたみたいだ。失敗した人生に終止符を打ち、英雄として成り上がるための試練だと言う。よく考えてみれば、これはチャンスと言っても良かった。
「失敗をやり直す? そんなことが出来るのか?」
『はい。そうなります。これから私がサポートするので、貴方はこの先を異なった世界で生活することになります』
いきなり過ぎてよく分からなかったが、冷静に考えてみると天命が言っていることが理解できた。これを機に英雄となることで、俺は失敗をやり直すチャンスを窺えると言うのだ。
「やってみる価値はあるな?」
そんな感じで俺は少年になった姿を見直すと、明らかに生前と違う人物に生まれ変わっていた。それが本当なら、失敗だった人生から脱せる。それを悟った時には、俺の内心で英雄になる希望を抱くのであった。
「分かった。それじゃあサポートお願いします」
『了解です。それでは貴方に初期スキルを与えます』
すると、俺の脳裏に天命から授かった初期スキルが明かされる。
『貴方の得たスキルは【魔力解放】【魔術取得】【収納ボックス】の三つになります」
そこで俺はそれ以上の解説がなくとも、天命が授けてくれたスキルの効果が把握できていた。これらのスキルは魔王を倒すのに必要で、術式の取得や発動させるために所持しなければならないのだった。これから術式が必要になって来ると思われるので、それらを取得するためのスキルだと心得るのが良いのである。
『私の役割はすでに知っていると思われますので、それに従ってください。注意事項ですが、天命はこの先の人生を左右する運命を覆すことは出来ません。魔王を倒すのに必要とされる術式が何かなどは助言できませんが、スキルと術式の取得や到達レベルの通達などを行っていきたいと思います。なので、この先は自力で魔王を討ち取る手段を身に付けてください』
そこまで説明を受けると、いつの間にか俺の視界が開ける。そこは広い街で、俺にはスキルでもある【収納ボックス】によって事前に所持している持ち物が認識が出来ていた。事前から持っていた道具は【地図】と【食べ物】と【金額】だ。それら。使って人生をスタートさせるなら、それに越したことはなかったである。
『では、健闘を祈ります』
そこが俺の新たな人生の始まりだった。この先で必要となることは大体分かっているつもりだ。まず魔王と対峙するのに必須ともなる術式を取得する必要がある。しかし、どうやって取得すれば良いのか分からないのが正直なところだ。
(天命は運命を動かすことは出来ない。だったら、自力で何とかするしかない)
そんな風に考えると、俺は早速街中を歩いた。そこに広がった光景は多くの人が存在すると言うことだけで、俺が初めに行ったのは住まう場所を探し出すところだ。
俺の向かった先は道具屋と書かれたお店であり、あらかじめ持っていた金額で何かヒントになることはないか探した。
「ここが道具屋か? この中に術式を得るためのヒントがあるかも知れないな?」
そう思った俺は店内に入って行き、そこで目にしたのは魔術書だった。それは術式について記された本で、それを読めば取得できるかも知れないと思って手を伸ばす。それを開いてみると、そこには様々な術式が記載されていた。
「ふむふむ。これは凄いな? 初級から中級までの術式について記されてる。これは必要になるな?」
俺はその本を購入するために値段と同額をレジで出す。すると、そこで店員が俺の購入した本の所有者としての刻印を押してくれた。それによってこの本が俺の所有物である証とされるのである。
「よし! こを読みながら術式を取得しようか?」
そんな風に順調に思えた循環だったが、異世界での暮らしはそれだけでは不十分なのであった。
しばらくが経って、術式の取得をするために草原が広がる場所までやって来る。そこには人気があまりなくて、丁度その場所が適していると思えたので、そこで取得を始めるのであった。
「まずは初級から取得するか?」
そうやって俺が本の中から好きな術式を選択すると、その取得に移った。それも読み進めて行くうちに判明した通りだと、術式にはそれぞれ応用が存在し、必殺技に発展させることが出来るみたいだ。それを取得することで、俺は魔王を討ち取るための手段を取得できるのである。
そこで俺の選択した術式は【掌で触れた対象を凍らせる】と言ったものだ。これは【フリージングハンド】と呼称されているみたいで、取得階級は【四級】に至るみたいであった。
「まず初期スキルの効果によって体内に流れ込んだ魔力を消費する必要がある。術式の取得には一定の魔力量を所有する必要があるみたいだ。すると、そこで天命からそれらを取得するための情報を俺に教えてくれた。
『貴方の魔力量なら取得可能です。大体明日までには取得できると思います』
「なるほど。それなら早速始めるか!」
そうやって俺は【フリージングハンド】の取得に入った。
そして取得を始めてから五時間が経過すると、その時点で俺は多少なら凍らせることが出来るようになる。天命が言うには残り半日で取得できると教えてくれる。
それから夜を迎えた。今日はここまでにしたいが、その先のことを考えていなかった。なので、取り敢えず現時点で所有している金額で宿屋に泊まることを選択する。そこで俺はあることに気が付いた。
「これだと所持金がくがなくなるのも時間の問題だ。どうしよう?」
俺は術式を取得するのも良いが、それ以前に所持金額にも上限があることに気付く。そこで俺にも出来る仕事を見付けたいのだが、何で良いのかさっぱり分からないのだった。
(生前までは無職だったしな……、どこで仕事すれば良い?)
そんな疑問が内心に生じた。その問題が解決しない限りは、魔王など倒すまでにこっちが死んでしまう。それを考えることなどこれまでして来なかったが、そこでしばらく悩んでいると、さらなる問題を抱えるのだった。
「お腹が空いたな? 確か宿屋には食堂があってお金さえあれば食える。しかし、今は所持金額をどう増やすの考えなくちゃ」
そこで俺が直面した問題に対して思考を巡らしていると、取り敢えず食堂まで降りて行くことにする。そこでとにかく先に着いてから、じっくり考えることにした。
(やっぱり無駄だよな? ここにいるの余計に腹が減る)
そんな風に思っていた時だった。そこで俺にとって最大の希望が見えて来る。
「なぁ? そこの君? もしかして魔術師かな?」
「んぅ? 貴方は?」
その時、若い男が俺に声を掛けて来た。俺にしたら最悪な展開だったが、話を聞いてみると分かる通り、彼がきっかけで現状を打開することが出来る。
「何か用ですか? 俺は今悩んでるところなんですよ」
「ふーん? もしかして一人か? 保護者はいないみたいだけど?」
「何が良いんたいんですか? 俺は一人ですよ」
「それは危険だ。俺も一緒に来ないか? 術師なら歓迎するぜ?」
「怪しい大人に付いて行くほど甘い子供じゃありませんよ? 諦めてください」
「それは残念だ。それじゃあまたな?」
そこで俺を誘って来た男は去って行った。それを食堂の席から見送ると、彼がふと止まって俺に忠告する。
「あっ! そうだ。そう言えばこの辺で殺人鬼が彷徨いているらしい。そいつには気を付けろよ?」
「ん? 殺人鬼? 一体何のことだ?」
「じゃおな?」
そんな感じで謎の言葉を残してから、彼は俺の前を去った。最後の一言が気になるが、それでも俺が現時点で困り切っていたのは予算問題だ。それが解決しない限りは進展しないと思った方が良かった。
そして空腹に負けて食堂でランチを注文して頂くと、そこで俺は少しだけ外をふらつきたくなったので、予算問題は一旦ここまでにして歩きに出る。さっきの男が口にしたことも気になるが、今の俺には外の風に当たりたかったのだ。なので、俺は少しの間だけ外出しに行くのだった。
「はぁ。何だか困ったなぁ? 一人じゃあ何も出来ないなんて……」
(これどから俺は無職だったんだ。いざとなった時に働かないのでは話にならないのだった)
すると、外に出て来た俺の下にさっきの彼が残した注意を無視してしまった罰が下る。それは俺が歩く背後に回った人物が、そこから一気に構えた刃物を突き刺しに来るのを気付かずにいた。その時だ。
「危ない!」
「えっ?」
俺の横から誰かに吹っ飛ばされたのだ。それも押し出された方向に倒れ、そこで俺を狙って殺しに掛かって来た人物は、仕留められなかったことに対して焦りが生じていた。
「畜生ぉ! 子供を庇っただと⁉︎ 逃げるしかない⁉︎」
「させねぇよ! 俺がいる理由が分からないか? 夜中に出歩く人々を刺殺する通り魔を捕まえるためだよ!」
「何ぃ⁉︎」
そこで一気に鉄の鎖が俺を襲った人物を拘束した。その一瞬を俺が目の前にした時、一体何が起きていたのかがわからない状況に陥る。
「何だ⁉︎」
「通り魔が出た! 至急騎士団に連絡を!」
「くそっ! 術師か!」
その一瞬で何が起きたのかを把握できずにいた俺はそこで鎖によって拘束していたさっきの男性と、それで取り押さえられた通り魔と思われる人物の行動が何よりも疑問に思えた。しかし、拘束された人物が持っていた刃物とそいつを捕らえた男性の叫んだ一言で状況が大体一致する。
「通り魔⁉︎ 俺が狙われたのか⁉︎」
「そこの子供! 今すぐ騎士団を呼んでくれないか! これが最大のチャンスなんだ!」
「き、騎士団⁉︎」
その時、俺がそれを聞いても動けない理由にもなる騎士団の存在らない俺にとっては無理な話である。しかし、そこで近くのおじさんが騎士団に連絡をする素振りを見せ、行動に遅れた俺はただ訳も分からず突っ立っていただけで終わった。
すぐに騎士団は到着し、そこで鉄の鎖で縛り上げて拘束した男性が解放させた時には、すでに騎士団の手によって取り締まりを受けていた。その現状を騎士団の団員から聞いたら、俺が通り魔に狙われていたことが判明する。そこで掌から出した鎖によって縛った男性は騎士団から称賛をもらい、そこで被害に遭う寸前だった俺は助けてくれた彼にお礼を口にするのであった。
「どうもありがとうございます! 助かりました!」
「別に構わないぜ? 俺も偶々君がターゲットになっているところを見掛けた時から尾行してたんだ。それが案の定だったよ」
(この人がさっき見せたのはまさか術式なのか? どんな実先だっだんだろう?)
それが気になって俺は彼に尋ねると、その時に使用した術式について解説してくれる。
「これは【掌から鉄鎖を出して操作する】って言う術式だ。これは相手を拘束する時に使えるな? 君にも教えてあげようか?」
「はい! 是非ともお願いします!」
「本当に大丈夫か? 俺のこと怪しんでたじゃんか?」
「それはそうですけどね。でも、命の恩人を疑う気にはなれません」
「よし! それじゃあ俺の一緒に来い。予算問題もある訳だし、そういった事情があるなら、素直に付いて来いよ? 君の目的でもある魔王退治は少し問題発言だが、それを目指して強くなりたいなら、俺と一緒に来るのが近道だぜ?」
「そうします! 食事と寝床が確保できれば問題ありません。そこまで面倒見てもらうようでは借りが出来ましたね?」
「困った時はお互い様だろ? 魔王退治には協力できないけど、面倒なら焼きてやっても良いぜ。君が将来の英雄を目指すなら、それに協力するのはどうってことないよ」
「ありがとうございます!」
そんな風に俺は彼と仲良くなった。それに彼に付いて行けば、食事や寝床まで確保できるみたいで良いと思ったのだ。そこでお世話になって術式の取得も手伝ってもらえば、それだけで問題が解決に至るのである。
そして俺は彼と行くことになった。そこで宿屋で借りた部屋に置いた本を取りに行ってから、さっきの男性が住まう自宅まで案内してもらう。そこで今日からお世話になる訳だが、さっき助けてもらった恩もあって、今では疑うところは見当たらなかった。
「ここだ? 今日から君を歓迎するよ」
「うわぁ! 広い敷地だな?」
彼が連れて来たところは、かなり広大な敷地の上に立つ館までだった。そこが彼の自宅なら相当なお金持ちと見ても良いだろう。そこで俺は居候するのであれば、それほど嬉しいことなかった。
そんな感じで俺はレイド・ロックバスターと言う男と出会いを果たす。彼との出会いは魔王退治に向けて術式を学ぶ良い機会にもなるので、このチャンスを逃さないようにしたいのであった。
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