真・神眼 

神楽坂星雲

第1話

盲目の少年、百目鬼どうめき れいは己の不運さを嘆いていた。社会には出れず、腫れ物として扱われ、家族には見捨てられた。死ぬことも許さぬこの社会で自分これからどうやって生きればいいというのだ。


親に捨てられかれこれ10年。よくもこれだけ行けれたものだと思いながら今日も朝を迎えた。地方出身で盲学校もない地域に生まれた彼は、普通高校に進学した。授業はまともに受けられず、先生たちのサポートもない。試験が点字で配られることなんかなく、留年の危機だった。クラスメイトからは虐められ、教師も容認する。早く死にたいと思いながら登校する。


学校に到着し、靴を脱いで上履きに履き替える。

(ちょっと小さい気がする。またいたずらされたのか?いや、上履きがなくなってない分ましだ。)

画鋲は入ってない。

(あいつらが何もしてこない?そんなことがあるのか?)

何度確認しても危険なものは入っていなかった。胸をなでおろして教室へ向かおうとしたその時

「おい、あいつ女子の上履きはいてるぞ!しかも何度も手を中に入れて触ってたぞ!キメー」

いじめっ子の声だ。

その言葉が正か偽か確かめる手段が零にはない。そんなときのために持ってきておいた予備の上履きをカバンから出し、履く。

(とりあえず、教室に行けばやり過ごせる。)

教室に入ると一瞬空気が変わる。その気配を敏感に感じ取った零は素早く自分の席に向かう。

「おはよう」

そんな声をかけてくれるのは学校一の美少女の美土路みどろ 結衣ゆい。誰とでも仲良くなるがモットーの彼女だけは零にも挨拶をしてくれる。しかし、どんなことにも反応して虐めてくる彼らにとっては目障りなのだろう。男子軍の雰囲気が怒りに変わったことを感じながら零は言った。

「おはよう。美土路さん。もう僕には挨拶しなくていいよ。」

そう呟いて自分の席に向かおうとする。しかし、

「百目鬼、ちょっとこっち来い。」

呼び出されてしまった。美土路さんの前では迂闊なことはできない彼らなので、取り合えず、自分の席へ行って無視することにした。後ろでは

「そうだよ。結衣。彼に挨拶するのはとてもいいと思うけど、無駄じゃないかな。」

学校一の好青年、美青年の一条いちじょう 光輝こうきが言う。結衣の幼馴染でもある彼は女子の注目の的だ。

美土路さんが近くにいたことに感謝しながら自分の席に着いた。 

SHRまでの時間をなんとやり過ごし、SHRが始まった。

担任の天ヶ瀬あまがせ先生の号令とともに起立しようとしたその時、

世界に閃光が走る。轟音とともに激痛を感じた。教室内は阿鼻叫喚。椅子、机の感触がなくなった、と思ったところで零の意識は落ちた。


【管理者の適正を感知。世界のランクを1上げ、試練1を実行します】

【混沌世界へようこそ。ニューマスター】


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