第5話 暗号の兆し

 大阪、なんばマルイ。木下芙蓉はモーリス・ラヴェルの楽譜に目を落としていた。最近の事件で疲労困憊しているにもかかわらず、彼女はその音楽に救いを求めていた。しかし、安らぎの時間は突然の知らせによって打ち破られる。手元に届いた暗号めいたメッセージ。その中には「悪魔の渦巻」という不穏な言葉が隠されていた。


 芙蓉はメッセージの送り主を探るため、連絡先の一つである「まばたきする少女の家」に向かう。この家はただの民家のように見えるが、実は重要な手がかりが隠されている場所だ。しかし、家の中に足を踏み入れた瞬間、芙蓉は空中機雷に直面する。慎重に回避しながら家を探索し、彼女は一枚の古い写真を見つける。それは、ウェルフレイターと名乗る男と香港の有名なホテル、ザ・ペニンシュラ香港の前で撮られたものだった。


 芙蓉は、木下芙蓉の協力者であるチルターン・ファイアハウスのメンバーと連絡を取り、香港への潜入を計画する。彼女は、自分が追っているウェルフレイターが、世界的な武器取引に絡んでいることを知る。そして、香港のザ・ペニンシュラ香港が次なる事件の舞台であることが明らかになる。


 香港に到着した芙蓉は、サザンロックという名のクラブでウェルフレイターと接触しようとするが、彼女を待っていたのは裏切りと罠だった。ナハトイェーガーと呼ばれる暗殺者が彼女の命を狙い、激しい戦いが繰り広げられる。


 戦いの末、芙蓉はナハトイェーガーを退け、ウェルフレイターの次の計画が日本の長野県にあることを突き止める。ウェルフレイターは、戦国時代の真田家が築いたという「真田の抜け穴」を利用し、古代の禁断の儀式を復活させようとしていた。


 長野に向かった芙蓉は、地元の歴史研究家や地元住民と協力して抜け穴を探索する。抜け穴の中で彼女は、悪魔の渦巻と呼ばれる儀式に使われる呪文書を発見する。しかし、それはウェルフレイターの罠だった。芙蓉は再び暗殺者に囲まれ、命を狙われることになる。


 ザ・ペニンシュラ香港での最後の戦いが迫る中、芙蓉はウェルフレイターとの直接対決を避けられないと悟る。彼女はフーディーという謎の人物の助けを借りながら、香港に戻り、ウェルフレイターがいるとされるホテルの最上階へと向かう。


 ホテルブラックの最上階、芙蓉はついにウェルフレイターと対峙する。彼は悪魔の渦巻の力を解放しようとするが、芙蓉はその儀式を阻止しようと必死になる。ウェルフレイターは、儀式を完了すれば全世界を混乱に陥れることができると豪語するが、芙蓉は彼の計画を打ち砕くための最後の手段を用意していた。


 激しい戦いの末、芙蓉はウェルフレイターを倒し、悪魔の渦巻の儀式を止めることに成功する。しかし、その過程で彼女は自分の命をも賭けることとなる。フーディーの助けにより、ギリギリで生還した芙蓉は、儀式を行うための楽譜が実際にはモーリス・ラヴェルの曲の中に隠されていたことを知る。


 全てが終わり、芙蓉は大阪の自宅に戻り、ラヴェルの楽譜を再び手に取る。しかし、その楽譜に残された微妙な違和感に気づく。悪魔の渦巻の力が完全に消えたわけではなく、それはまだ世界のどこかで待ち続けているのかもしれない。


 芙蓉は、この一連の事件が終わった後も、闇の力に立ち向かう覚悟を新たにする。ウェルフレイターとの戦いは終わったが、彼女の心の中には新たな敵の気配が感じられた。そして、彼女の戦いはまだ終わっていないことを悟る。

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