王宮の奥の宮 深窓の王子
近江結衣
プロローグ①
窓の外の日差しはやわらかく、白い小さな花が風に揺れている。
今日は散歩日和だ。あんな野原を歩きたい。草花や鳥が見たい。もしかしたら、もふもふだっているかもしれない。
我慢ができなくなったアイリーナは、忍び足でドアノブに手をかけた。
「アイ」
部屋の奥のほうから声がした。アイリーナはぴたっと動きを止めた。
彼の姿は、窓から差し込む光の向こうにあって見えにくい。少し霞んでいた。
アイリーナの屋敷の部屋とは比べものにならないくらい広い彼の私室。華美すぎず、それでいて人を強く魅きつける家具。
白を基調とした部屋に、彼の金の髪はよく似合う。
奥の机で、彼は書き物をしている。部屋に差し込む光のベールの向こうで霞んでいる。
「アイ、外は危険だよ」
彼、……ロゼアリア国の王太子シーファウは品良くささやく。
めずらしい水色の瞳。艶がありしっとりとした長い金の髪。国一番といってもいいような麗しい姿。
どきっとしたアイリーナは頭を振った。
魅了されたらいけないのだ。
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