第二話「壺を拾った」5

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 結論から言うと、生人の推理は外れていた。

 そんな事件性のあるものではなかったし、仮にあったとしてあの段階ではどうしようもない事だった。

 だから、後は警察に届けて忘れてしまうのが最善だ。

 きっとあの壺は持ち主のところへ無事に帰った事だろう。そう信じて。

「本当にそうなんだろうか」

 折座屋は首を傾げ、眉間に皺を寄せて考え込んでいた。

 考えても詮なき事だとは重々理解していたが、どうしても気にかかる事があった。

 ようすけの事だ。壺の事は一度忘れよう。終わった事だと結論付けてもいい。

 ようすけはなぜ、あの場にいたのだろう。ただの偶然と言えばそれまでだが、どうにも何か悪い予感がする。

 ぴりぴりと、肌の上を走り回るような不快感が。

 言葉にする事は難しいけれど、なんとか頭を絞って感がえる。

 こういう場合、なんと言ったらいいのか……という事を。

「……ああ、そうだ。これは正しい事ではないのか」

 壺の件はもう終わった。気がかりだったのはようすけの事だ。

 そう、あの少年。小さな子供。

 ようすけは今、どうしているのだろうか。

 折座屋はその小さな背中を思い出す。小さくて、けれどどこか大きな背中だ。

 しっかりした子だった。年不相応に、しっかりし過ぎているとも言えるが。

 彼は今、どうしているのだろう。

 母親とはぐれたのだと言っていた。母親とは会えたのだろうか。事件や事故に巻き込まれていなければいいのだが。

 そんな事を考えていると、段々と落ち着かない気持ちになってくる。

 だからだろうか。平日の朝からこうしてあの壺を拾ったあたりをうろついているのは。

 何事もなければいいと思う。その反面、何かあるのではとも思ってしまう。

 過敏になっているだけだと自分に言い聞かせるが、一度頭の中を過ぎった可能性を否定する事は難しかった。

 だからこそ、自分の目で確かめなければいけないと思ったのだ。

 なんでもない、それこそ過剰なまでに心配になっているだけだと。

 折座屋はそう自分に言い聞かせ、ようすけの姿を探す。

 けれども、その日は結局ようすけと出会う事は叶わなかった。

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