大歓迎! 素敵なタクシー運転手!

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 30代前半、1番女性とのご縁があった時、僕は某県のお客さんを回った。その日は4件のアポイントがあったが、商談は全てまとまり気分は良かった。だが、疲れていた。駅までタクシーに乗ろうと、タクシーを呼んだ。40歳くらい、なかなか魅力的な女性の運転手だった。


「すみません、最寄り駅まで」

「……お兄さん、明日は休み?」

「はい、明日は土曜なので休みです」

「お兄さん、関西から?」

「はい、大阪です」

「今日は直帰?」

「はい、直帰です」

「夕食をご馳走してくれるなら、タクシー代は無料にするけど」

「一緒に夕食、いいですね。ほな、一緒に夕食を」

「じゃあ、会社に行くね。私、もう退勤時間だから」


 車はタクシー会社の駐車場へ。


「降りて、少し待ってて。事務所に行って来るから」


 女性は事務所に入って行った。駐車場でしばらく待っていると、女性が駐車場に戻ってきた。


「この車、私の車だから乗って」


 青い乗用車に乗り込む。


「どこかいい店があるんですか?」

「コンビニで買いだし。店で飲むと、運転が出来ないから、宅飲みでいいでしょ?」

「お姉さんの自宅にお邪魔していいんですか?」

「いいよ、それがどうかした? もしかしてHなこと考えてる?」

「そうですね、正直、Hなことを考えました。いけませんか?」

「別にいいわよ、私も考えてるから。恋人はいる?」

「いません」

「それなら問題は無いわね、私も今は旦那も彼氏もいないから」


 コンビニに寄った後、車はマンションの駐車場に停まった。僕は女性の部屋に上がり込んで飲んだ。朝は、2人とも裸でベッドの中で迎えた。昼前に目を覚まして、僕は帰り支度を始めようとした。


 すると、女性が目を覚ました。


「もう帰るの?」

「あ、ご迷惑かなと思って」

「急いで帰らないといけないの? 用事があるの?」

「いや、急いではいませんが」

「なら、夕方まで一緒にいようや。帰るのは夕方でもいいでしょ?」

「ほな、夕方までご一緒します」

「もう一度ベッドにおいでや」

「はい」


「あ」

「何ですか?」

「そういえば、私達、名前も知らなかったわね」

「あ、そうでした。僕は崔です。崔梨遙です」

「私は……」



 後日、その女性は大阪まで会いに来てくれた。何回も何十回もタクシーに乗ったことはあるが、こんなラッキーはそれが最初で最後だった。思い出は、僕の中で完全に美化されている。







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