これもキツイぜ! 運転手!
崔 梨遙(再)
1話完結:1400字
30代の前半、大阪の採用コンサルティング会社に勤めていた時、〇〇県に行った。お客さんとアポイントがとれたのだ。そのお客さんは忙しくてなかなかアポがとれない。だから、そのアポは貴重なアポだった。ただ、交通の便が悪くて、大きな駅からタクシーを使わなくてはいけない。
僕は、駅のロータリーのタクシーに乗り込んだ。住所を書いたメモと地図を手渡して言った。
「この場所、わかりにくいですけど行けますか?」
「あ、大丈夫ですよ」
「いや、目印も無くて、わからないという運転手さんもいるんですけど、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、乗ってください」
「じゃあ、お願いします」
やっぱりおかしい。こんなに時間がかかるはずが無い。
「運転手さん、道、間違ってますよ。こんなに遠くないですから」
「え?」
「道路マップを見せてください。今、どこですか?」
「△△町です」
「真逆じゃないですか! 僕をどこに連れて行くつもりだったんですか?」
「すみません」
「アカン、アポに絶対に遅れる、30分ほど遅れる、ちょっと待って、電話するから」
お客さんから、1時間後には出ないといけないから、アポは延期しようと言われてしまった。せっかくのアポが台無しになってしまった。
「運ちゃん、アポイントがお流れになったわ、200万の商談やったんやけど、どないしてくれるねん」
「すみません」
「運ちゃん、200万払ってくれるんか?」
「すみません」
「とりあえず、さっきの駅に戻ってくれ、次のアポイント先に向かうから」
「はい」
「着きました。6千円です」
「お前、なめとんか? 僕の話を聞いてなかったんか? お前のせいでこっちは甚大な被害を受けたんやぞ」
「すみません、払っていただきたいんですけど」
「もうええ、今からお前の会社に電話する」
「はい、▲▲タクシーです」
「今、□□さんが運転手をやってるタクシーに乗ってるんですけど」
「はい、何かありましたか?」
「住所と地図を見せたのに、全然違う所へ連れて行かれましたわ。ほんで、こっちはアポイントを逃して商談が出来なかったんです。それなのに、ちゃっかり運賃を払えって言うんですわ。おたくはどんな教育をしてるんですか!」
「それは……お客さんの方からきつく言ってください」
「なんでやねん、会社で社員教育せえや!」
「いや、すみませんが、お客さんから□□にビシッと言ってください」
「だ・か・ら・お前の所の会社で教育せえや」
「でもね、新人でもないし、もういい歳ですから、会社から言ってもなかなか変わりませんよ。だから、お客さんに怒られるのが1番効くんですよ」
「もう、ええわ」
僕はキレて電話を切った。
「もう、降りるぞ」
「あの……お代は?」
「なんやねん、まだ払ってほしいんか?」
「はい……すみませんが」
「そやな、ほな、土下座せえや」
運転手、シートベルトを外して体を捻りながら土下座っぽい姿勢。
「お前、恥を知れ!」
僕は6千円を投げ渡してタクシーから降りた。
善良な運転手さんが多い中、こんなにヒドイ人もいる。こんな人達がいると、タクシー業界の評判が悪くなるんじゃないかと心配してしまう。タクシーに乗るとき、ヒドイ運転手じゃなくて善良な運転手に当たることを祈りながら乗ってしまう。皆様、似たような経験はございませんか?
これもキツイぜ! 運転手! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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