第7話「時間の迷宮」

遺物から聞こえてきた声は、次第に明瞭になり、大輔たちの耳にしっかりと届いた。それは、かつてこの地に存在していた強大な魔法使いのものだった。


「この遺物は、かつて世界を守るために使われたものだ、しかし、その力を解放するには真の勇者の試練を乗り越える必要がある」

声が静かに語りかけてきた。


「試練か…それは一体どういうものなんだ?」

大輔が不安げに尋ねる。


「この遺物を完全に覚醒させるためには、心の純粋さ、仲間との絆、そして強靭な精神力が必要だ、今からあなたたちは、それぞれの試練を受けることになる」

遺物の声が続ける。


「試練って…具体的に何をするんだ?」

ルカスが慎重に尋ねた。


「試練はそれぞれ異なる、今からあなたたちは3つの異なる空間に導かれるだろう、その中で自分自身と向き合い、乗り越えなければならない」

遺物が答えた瞬間、突然、大輔たちの視界が歪み始めた。


「おい、なんだこれ…!」

大輔が驚いて周りを見渡すと、彼は一瞬にして暗闇に包まれた。


――――大輔の試練:時間の迷宮


大輔が気がつくと、そこは無限に続くような迷路の中だった。壁は鏡のように光を反射し、大輔自身の姿が無数に映し出されていた。迷宮の中は異様なほど静かで、ただ彼の心臓の鼓動が響いていた。


「ここは…どこなんだ?」

大輔は不安を感じながら、ゆっくりと歩き始めた。


彼は何度も同じ場所を歩いているような感覚に襲われた。時間が止まっているかのように、進んでも進んでも出口は見つからない。やがて、大輔は自分の中で焦りが募っていくのを感じた。


「落ち着け…この力を使えば何とかなるかもしれない…」

大輔は再び「寝坊の力」を発動させ、時間を遅らせようと試みた。


彼が目を閉じ、集中しようとしたその瞬間、周囲の空間が急に揺れ動いた。時間がゆっくりと進む中で、壁に映る彼の姿がまるで別の人物のように変わり始めた。


「これは…俺?」

大輔はその姿に戸惑った。それは彼自身の姿だが、何かが違う。もっと冷たく、厳しい表情をした自分が、壁の向こうからじっと見つめ返していた。


「お前は、こんな力で本当にみんなを守れるのか?」

鏡の中の自分が、問いかけてきた。


「俺は…守れる、みんなと一緒なら、絶対に守れるんだ!」

大輔は強く言い返したが、心の奥底では、自分の力に対する不安が消えていないことに気づいていた。


「その自信はどこから来る?お前が頼っているのは仲間たちだ、自分では何もできないくせに」

鏡の中の自分が冷たく言い放った。


大輔はその言葉に傷つきながらも、立ち止まることなく歩みを進めた。彼は今、試されているのだと感じた。この迷宮から抜け出すためには、自分自身と向き合い、真の自信を見つけ出さなければならない。


「俺は…俺自身の力を信じる、時間を操るこの力が、俺に与えられた使命だ、仲間たちと一緒に戦うための力なんだ!」

大輔は心の中で強く念じ、再び「寝坊の力」を発動させた。


今度は、迷宮の壁がゆっくりと溶けるように消えていき、大輔の前には光の道が現れた。彼は迷わずその道を進んだ。


「自分を信じろ、そして仲間たちを信じろ、それが俺の力だ…」

大輔は歩みを進めながら、心の中で繰り返し唱えた。


光の道の先にたどり着くと、突然、視界が再び歪み、大輔は元の遺跡の空間に戻ってきた。そこには、アリアとルカスも戻ってきており、それぞれに試練を乗り越えたようだった。


「大輔、無事か?どうだった?」

ルカスが心配そうに声をかけた。


「ああ、俺も試練を受けた、でもなんとか乗り越えたよ」

大輔が答えると、アリアが微笑んで言った。


「これで遺物の力が完全に解放されるはずよ、私たちが力を合わせた証としてね」


3人は再び祭壇に向かい、遺物に手をかざした。すると、遺物は眩い光を放ち、その力が完全に覚醒した。


「これが遺物の持つ真の力…私たちがこの世界を守るための力だ」

大輔はその光景に感動しながら、仲間たちと共に力を合わせる決意を新たにした。

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