使えないスキルだと言われたけど、分かってみたら最高のスキルでした!

しょうわな人

第1話 外れスキル

 僕の名前はローラン。


 グレネイド王国の辺境の村で産まれたんだ。お父さんは狩人。お母さんは農業で生計を立てる村人だよ。

 僕の上にはお姉ちゃんがいて、今は八歳なんだ。お姉ちゃんは五歳の時の授けの儀で神様から成長促進っていうスキルを授かったから、五歳からお母さんのお手伝いをしてる。

 と言っても五歳の頃は魔力が少なくて一日に一つの野菜しか成長促進を使用できなかったんだって。


 でもそれから三年が過ぎて毎日毎日お母さんのお手伝いで成長促進を使ってたお姉ちゃんの魔力は増えて、今では三つの畝の野菜に成長促進を使用できるようになってるんだ。


「ミリラ、いつも有難うね。ローランもお水やりを手伝ってくれて有難う」


 ミリラがお姉ちゃんの名前だよ。僕もまだ四歳でスキルは授かっていないけど、出来ることをお手伝いしようと思って、用水からジョーロに水を汲んできてお母さんの指示のもとで野菜にお水を上げてるんだ。


「ローランは偉いね。私はお水やりは苦手だったから……」


 ミリラお姉ちゃんがそう言って僕を褒めてくれるけど、僕はお姉ちゃんの方が絶対に偉いと思ってるよ。だって五歳から毎日お母さんのお手伝いをしてるんだよ。本当は村のお友だちと遊びたい筈なのに、お姉ちゃんはお母さんのお手伝いが終わるまで遊びに行かないんだから。


 僕はお水やりを終えたら隣に住む同い年のタマリちゃんと遊びに出かけてしまうからね。


「フフフ、ミリラもローランも二人とも偉いわ。お母さんはとても助かってるんだから。うちのお野菜は村一番だって評判なのよ」


 お母さんが僕とお姉ちゃんを褒めてくれてたら玄関が開いてお父さんが帰ってきた。


「ただいま〜。今日はたくさんコケッコが狩れたぞ〜。組合に卸したのが十二羽で、三羽を持って帰ってきたぞ。もちろん、解体済みだぞ、ネーラ!!」


 最後に慌ててお母さんに言うお父さん。ネーラがお母さんの名前だよ。お父さんの名前は、


「アラ? そんなに慌てて言わなくても大丈夫よ、ロンド。あなたが同じ過ちをするはずがないって分かってるから」


 ロンドって言います。お父さんのスキルは命中精度向上で弓矢を使って狩りをするお父さんの為のスキルだよ。まあ、スキルを授かってから狩人になるって決めたらしいけどね。

 お母さんのスキルは土壌改良で、畑の土を育てる野菜にとって最適のものにする事が出来るんだって。


 うちはお父さんの狩りとお母さんの農業で村では裕福な方なんだよ。隣に住むタマリちゃん一家もうちと同じで、お父さんは狩人でお母さんは農業をしているんだ。

 タマリちゃんのお父さんのスキルは罠作成で、獲物が掛からない罠は一つとして無いって言われてるよ。タマリちゃんのお母さんのスキルは農具作成で、うちではタマリちゃんのお母さんが作った農具を使ってるんだ。


 いつも新しい農具を作ったら持ってきてくれて、その代わりにお母さんはタマリちゃんの畑の土をスキルで良いものにしてあげてるんだ。


 そんな僕とタマリちゃんは産まれた月日が同じで、明日で五歳になる。

 二人で揃って明日は教会に行って授けの儀を受けるんだ。


 僕は今からワクワクしてるんだ。どんなスキルを授かるんだろうって。お父さんみたいに狩りに役立つものだったら良いなぁなんて思うけど、お母さんやお姉ちゃんみたいに農業に役立つスキルでも良いなぁって思ってるんだ。


 


 翌朝、お母さんとお姉ちゃん、タマリちゃんのお母さんとタマリちゃんと一緒に教会へ向かう。


 今回の授けの儀では僕と同い年の子たちも一緒に受けるらしくて、全部で十二人の子がいるんだって。


「ローくん、ワクワクするね」

「うん、タマリちゃん、そうだね」


 僕とタマリちゃんの家は畑の面積が必要だから、村の中心部から外れた場所にある。だから僕は同い年の子はタマリちゃんしか知らないけど、十人も同い年の子がこの村にいたんだね。友だちになれると良いなぁ。


 そんな事を思いながら授けの儀を受ける為に教会に入る僕たち。


 十人の他の子たちは既に来ていて僕とタマリちゃんが最後だったみたいだ。


「遅いなぁ! これだから端に住む半端者は」


 えっ!? 今言ったのは同い年の子だよね? タマリちゃんはビクッとして僕の後ろに隠れてしまった。


「ちょっとコルト、そんな言い方は無いじゃない! アンタはいつも偉くも無いのに偉そうにし過ぎよ!」


 凄い、女の子なのに男の子に堂々と文句を言ってくれてる。


「はじめまして、私は村の狩人組合長の子でヤーラっていうよ。あなた達のお名前は?」


「はじめまして、僕はローランです」

「はじめまして、タマリです」


 その女の子はお父さんたちがお世話になってる狩人組合長さんの娘さんだったよ。


「コルトの言う事なんて気にしなくて良いからね」


 そう言って僕とタマリちゃんを安心させるようにニコッと笑ってくれた。


「ケッ、女に庇われてニヤニヤしやがって! 覚えてろよ!!」


 最初に僕とタマリちゃんに文句をいったコルトくんはそう言って先に司祭様の方に向かっていったよ。もう一人、男の子が僕たちを睨みながらコルトくんの後をついて行った。


「それでは授けの儀を始めよう。まあ、先に来たからコルトからで良いな。では、コルトよここに手を置き神様に心から祈りなさい」


 司祭様が授けの儀を始められた。コルトくんは司祭様の言う通りに机の上に置かれた半円の石に手を置いた。


 石がピカッと光ってその表面に文字が浮かび上がる。


「コルトが神より授かりしスキルは【剣術】である。日々、研鑽を積むように」


 凄いなぁ、剣術って剣を上手に扱えるようになるスキルだね。で、そのままコルトくんについて行った子が次に石に手を置いた。


「モーケンが神より授かりしスキルは【槍術】である。日々研鑽を積むように」


 凄い、二人続けて戦闘用のスキルだ。僕もやっぱり男の子だから憧れてるんだ、戦闘用スキル。神様、お願いします!!


 残り七人の子が済んで、ヤーラちゃんの番になった。そしたら今までで一番眩しく石が光ったんだ。


「おお!? ヤーラが神より授かりしスキルは【天弓】じゃっ!! そなたの努力を神はておられたぞ、良かったの」  


「はい、司祭様、有難うございます!!」


 僕は知らないけど、天弓って凄いスキルなんだろうね。コルトくんやモーケンくんが悔しがってるよ。弓ってついてるから弓矢を上手に扱えるスキルなんだろうね、きっと。


 おっと、次はタマリちゃんだ。ちょっと震えているから僕はタマリちゃんにきっと大丈夫だよって声をかけてあげたんだ。タマリちゃんは僕の言葉にうんって言いながら司祭様の所にいって石に手を置いた。そしたら、ヤーラちゃん程じゃないけど、タマリちゃんも眩しいぐらいに光ったんだ。


「おお!? 二人続けてとは!? タマリが神より授かりしスキルは【神農】じゃ!! 素晴らしいスキルを授かったの。これからも日々、親の手伝いをしていくのじゃぞ」


「はい! 司祭様!」


 タマリちゃんが笑顔で戻ってきた。神農ってお母さんに聞いた事があるよ。確か農業系のスキルの最高峰だって言ってたよね。凄いね、良かったねってタマリちゃんに言ってから僕は司祭様のもとに向かった。


 そして、石に手を置いたんだ。


 ビカーッ!!


「ヌオオーッ! ま、眩しい!! こ、これは!!」


 僕も眩しくて目を瞑ったけど、司祭様も眩しすぎて目を瞑ったみたい。しばらく待って目をあけてみたら司祭様の困惑した顔が。


「う〜ん……ローランが神より授かりしスキルは【alphabet???】? 済まぬ、ワシには読めぬ。少し待っておれ」


 そう言って司祭様は奥の部屋に入って行かれて、そして、大司祭様と一緒に戻って来られた。


「フムフム、あ〜…… コレはじゃな…… 外れじゃ。外れスキルじゃ。読めぬ故に発動方法がわからぬ。なので、一生使えぬのじゃ。まあ、ローランよ、スキルで一生が決まるものでも無い。これからも頑張って努力して生きていくのじゃぞ」


 なんて言って大司祭様は戻って行かれたんだけど……


「ギャハハハ、やっぱし女に庇われる奴は外れなんてものを授かるんだな。神様もちゃんとてるんだっ! ハハハ!!」


 コルトくんのその声に僕は恥ずかしさを堪えながらタマリちゃんやヤーラちゃんのいる所に戻った。


「ローくん、大丈夫だよ。きっと発動方法が分かるようになるよ。私もお手伝いするから!」


 タマリちゃんは優しい。


「そうだよ、ローランくん。私やタマリちゃんの時より眩しく光ったんだもの。きっと凄いスキルだよ! 私もどんなスキルなのか分かるようにお手伝いするからね!!」


 今日、知り合ったばかりのヤーラちゃんもとても優しかったよ。僕はそんな二人に有難うと言ってお母さんやお姉ちゃんの所に向かった。


「ローラン、大司祭様も言っていたけど、スキルが全てじゃないわ。だからこれまで通り優しいローランのまま育ってね」


「ローラン、お姉ちゃんもそのままのローランが大好きだからね!」


 お母さんもお姉ちゃんも優しかった。それから家に戻ってお父さんが帰ってきたからスキルの事を言うと、お父さんも


「気にするな、ローラン。スキルがあっても日々研鑽を積まなければならない。それは普通に生活をしていても同じだ。だから、これからは分からないスキルがどんなものか気にしながらでも、自分の得意な事を早めに見つけて、それを育てるようにするんだぞ。そうすれば見てくれる人は必ずいるからな」


 そう言って僕を励ましてくれたんだ。


 けど、それから僕にとってとても辛い日々が二年も続く事になったんだ……

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