語り手 平 太麻呂

 われたいらの ふと

 よんじゅっさいどくしん

 ぶとり、しろり、おぐろ殿てんじょうまゆ直衣のうし姿すがたちゅうそうかいでおじゃる。


 われいまあしうぶる。

 ゆうは、つちかどあし今日きょうまれるあかのどちらかが、ノストラダムスのげんきょうだいおうだとかったからでおじゃる。

 われあしなんきょうだいおうだったのなら、そのいのちうばければならん。

 これもかいと、わたししゅっため


 ――しずうぶはいって、もうじゅうかん

 ――われしきによると、すでまれてもいものを……


 われがそんなことおもっておると、うぶなかからあかこえこえてたでおじゃる。


「オギャァァァァ オギャァァァァ」


 ――ついにまれたか……

 ――きょうだいおうでなければいておじゃるが……


 われうぶとびらはいる。

 するとまえには、ひのきそでまとってはいってしず

 あかいてるさんに、そのあかのヘソのってむすんでいるさん

 そのじょさんにんほどうぶたでおじゃる。


ふとさまげんいます。このようしきものはずりません」


 さんひとが、われがおけそううてた。

 だからわれあかちかよううかがう。


 ――かった、きょうだいおうでなくて。


 あか姿すがたて、われこころからそうおもった。

 おもったつぎしゅんかんつよれいりょくかんじたのじゃ。


 ――なんでおじゃる、このつよれいりょくは!


 そしてうぶに、あおかぜはじめたのでおじゃる。


 ――これは、ちからぼうそうしておるのか。

 ――まずい!


さんたちおくがたれてげるでおじゃる」


 われこえあかいていたさんは、われあかたくすと、さんたちいっしょしずからそうとしたのでおじゃる。

 しかし……


あにうえわたしのこります。もしものときりたいのです」


 しずがそうはんろんしたので、われさんたちべつれいす。


さんたちおくがたい、とうしゅんでまいれ。それとたい殿どの殿どのけっしてうぶちかけるな」


 するとさんたちあわててうぶった。


 ――あとはこの如何どうするかでおじゃるが……

 ――かぜつよってている。

 ――はやたいしょしないとうぶつぶれてしまう。


あにうえかなわたしに。このかぜおさまらなければわたしがそのを」


 しずがそうわれってたので、われくびよこった。


でおじゃる、いもうとごろしなどさせるものか。それにまだおにりんまってはごじゃらん」

あかでこのかぜちからあしはこのけんしするでしょう。それにどもすでたいがいます、このはもう……」


 なみだながしながらそうかたいもうとて、われかんがえる。


 ――いもうとあかわたしてはならん。

 ――こうってはこのあかいもうとかせにしかならん。

 ――われがこのめんとせば、すべわる。

 ――そのためわれたのだ。

 ――いもうとどもころために……


でおじゃる」


 われきながらそういもうとはんろんした。


 ――やはりわれにはかなころせん。

 ――だが如何どうすることん。

 ――われ姉弟きょうだいみずちからでは、もくちからしてしまう。

 ――せめてこのかぜちから如何どうにかれば……


 そんなことかんがえているはいから、っているどもたちこえこえてる。


かな!」

かな!」


 ――そんなはずいでおじゃる。

 ――あのたちみちたかもとはず


 そうおもいながらわれかえった。

 すると其所そこにはようふくろくさいたい姿すがた……

 そのかおいまにもきそうでおじゃる。

 そしてそのうしろに、しろかりぎぬ姿すがたのべっこういろりゅうめんけたおとこひと


 ――だれでおじゃ……

 ――いやあのめんは!

 ――つちかどうらあやつやつが、てきたいしているあしに。


つちかどものる、もの やすのり!」


 われはそうさけんだ。

 するとやすのりう。


此方こちらもんだいがなかったので、じんてきたすけに」


 ――めんで、なにかんがえているかめんでおじゃる。

 ――ほんしんうそか……


「マロ、かなころしちゃダメ!」


 とつぜんがそうさけび、たいことつづける。


ちちうえが、みんなるのをめてる。はやくこのおにいちゃんになんとかしてもらって」


 めいおいことわれおどろく。


 ――このたちがそのことっている。

 ――いやはなしからみちたか殿どのおしえたのか。


 そんなわれやすのりていあんする。


わたしかなくんはるあきさまともとしてむかえたい」


 ――はるあきとはたしか、つちかどあかまえ

 ――ほどりょうあいだ心算つもりでおじゃるか。

 ――みちたか殿どのさんせいしたのなら……


かった。じゃがかなのこのもくちから如何どうするでおじゃる、いくら殿でんでもこのちからめるのは」

ふと殿どのたしかにわたしあかれいりょくふうずるすべってはおりません。とくもくちからふうじてしまっては、まれたあかのうせいたかい…… ですがそれはわたしふうずるあいです」

如何どういうことでおじゃるやすのり殿どの

たい殿どの殿どのちからうつします。兄弟きょうだいなられいりょくわたしものうでしょう」

鹿こともうすな! そんなけんことたいにさせるわけには……」


 しかしわれうしろからそのことていするものがあったのでおじゃる。


「いいえ、やらせてましょう」


 おどろいたわれしずもんう。


なにっておるのじゃしず!」

あにうえかなたすかるほうほうはもうそれしかりません。それにあのたちはやるみたいすよ」


 しずことわれがまたくと、やすのり殿どのつかまりたいが、あおかぜなか此方こちらかってている。


 ――いくらもくちからしょうそうさいるとっても……

 ――あぶない。

 ――あぶない。

 ――こっちの寿じゅみょうちぢむでおじゃる。


 そんなわれしんぱいに、たいやすのり殿どのともわれまえまでやってたでおじゃる。


 ――ここまでれてかったでおじゃる。

 ――かたあるまい。


 われひざたいかなちかけてせた。

 そしてがおうのでおじゃる。


やさしくつのでおじゃるよ」


 するとたいは、すこしオドオドしながらかなにぎっ……

 いや、かなりょうつつんだのでおじゃる。

 すると……


 ――あたりのかぜよわった……

 ――かなが、たいのおかげいたでおじゃるか?

 ――これならちからわたときけんる。


やすのり殿どの!」


 われはそうおもやすのり殿どのあいおくった。

 するとやすのり殿どのしろふだすうまいふところからし、そのなかいちまいひとゆびなかゆびはさむと、じゅもんとなはじめたのでおじゃる。

 のこりのふだちゅうっておる。


しろつめにして、あおながかん。けたこんつらなるもの宿やどらん」


 じゅもんわるとやすのり殿どのは、ふだちゅういちもんった。

 するとたいかなからはなし、しりもちいたのでおじゃる。

 われしんぱいぶ。


だいじょうでおじゃるかたい

すこわるいけどだいじょう

も……」


 ふたはそうってはいるが、るからにクラクラしているでおじゃる。


 ――かぜえた。

 ――つまりちからわたしは上手うまったとことでおじゃるな。

 ――あとみなはややすませんといかんでおじゃる。


やすのり殿どのわるいがだれんでてもらえるか」

「そのひつようりませんよ、ふと殿どの


 やすのり殿どのことどうに、なにものかのあしおと此方こちらちかいてるでおじゃる。


しず!」


 そうってうぶはいってたのは、ようふくみちたか


あんしんなされよ。ことばん上手うまくいった、きょうだいおうおにはいなかった。」


 やすのり殿どのがそううと、みちたかはそのことしてかなってうのでおじゃる。

 うれしそうなかおで……


かなかった」


 そしてしずからいてし、たいくのでおじゃる。


たい。もうおにいちゃんおねえちゃんなんだから、すこくるしいのまんしてくれるか?」


「うん」

「うん」


 ふたへんかくにんしたみちたかは、あわててうぶきおった。


「ではふと殿どのわたしはこれで。流石さすがわたしるのが、あしほかにんげんにバレてはまずいので」


 やすのり殿どのがそうってろうとしたので、われはそれをめる。


すこつでおじゃるやすのり殿どのじつ其方そちらなにってたずねよう、なにい」

「ではしゅこんでいしろでもいただきましょうか」

かったのでおじゃる」

「それでは……さんかたも」


 そうってやすのり殿どのうぶからってったでおじゃる。


 ――ん?

 ――さんかた……




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