侵略者との決戦

@karasu112

第1話 侵略と覚醒

ある日、京都に突如怪物が現れ、日本を侵略し始めた。日本政府は怪物を殲滅すべく自衛隊を派遣し、大量の破壊兵器を投入したが、その甲斐あってか、異能力者たちも集結し、何とか怪物の侵略を食い止めることに成功した――とされている。しかし、俺はあの日の光景を、この目で見た光景を、決して忘れることはない。


あの日10才俺は、両親と京都を観光していた。金閣寺が綺麗だったことを今でも覚えている。そんな中、人々が逃げ惑いはじめた。


ウゥゥゥゥゥーーーー!!!


サイレンが至るところで鳴り響いている。携帯からも警報がなっている。誰もなにが起こっているのかを理解できていないのだろう。母さんも父さんもなにが起きているのかを理解できていない。もちろん、逃げろと言われてもどこに逃げればいいのか分からない。みんなが逃げている方に逃げるしかない。やがていろいろなところから火が上がり始め、家屋の倒壊も始まっていた。空爆か?と父さんが言った。けど、どこにも戦闘機も飛んでないし、爆発音も特に聞こえない。じゃあなんだ?なにが起きている。みんな思っていることだろう。いつ助けが来るのか。どこまで、逃げればいいのか誰か教えてくれとみんな感じていた。


避難所に設置されていた学校についた。他の人間もたくさん集まってきたのだろ。混乱していて収拾がついていない。そんな中、男が叫んでいた。


「怪物が来る!ここも逃げた方がいい!早く!」


意味が分からなかった。怪物?いるわけない。あいつは狂ってしまったんだ。誰もが思っており聞く耳を持つことはなかった。


「なんだんだよ!お前ら親切に教えてやってんのにん!逃げた方がいいって!なぁぁ!!」


「落ち着いてください!ここは安全です落ち着いて指示に従ってください」


避難所の職員らしき人が男を宥めていた。やがて、男も落ち着いてきて静かになって来た。


「そうだよな、怪物なんていないよな、ここは安全なんだな。そうだ、気のせいだ。あれは気のせいだ。」

みんな落ち着いてきて、職員の指示に従い、体育館で自分のスペースや食料を確保し始めた。やがてみんな余裕が出てきてネットを見始めた。そこで避難所にいた人全員が衝撃を受けた。ネットに京都の様子とその元凶であるものが映っていたからだ。画質が粗く良く見えないが怪物だ、複数いる、角があるし、人間ではないのは確かだ。あの男は正しかったんだ、怪物は存在していてそれが京都の町に絶大な被害を与えている。ある人が言った。


「今こいつが歩いているのってこの辺じゃないのか?」


その瞬間避難所にいた人が同時にその男の方に目を向けた。


「だ、だってほらこのこの建物さっき通りながらここに来たし、マップ見てもこいつが歩いている先がここの避難所だってわかるだろ。」


その言葉を聞いて鳥肌が立った。怪物がここに向かっている?ありえないここは安全なんだろ。きっと大丈夫きっと。誰もがそう願っていたが、願いはかなうことはなかった。先頭に立っていた。やつが走り始めた。その瞬間映像も途切れた。きっと怪物によって落とされたと考えるのが正しいのだろう。そんなことを考えていると外から悲鳴が聞こえた。やつらがきたんだ。蹂躙が始まった。


「逃げなきゃ!」


「どこに!助けが来るかもわからないんだぞ!」


「だったらどうするのよ」


いろんなところからそんな声が聞こえる。どうすればいいかなんで誰もわかるわけないじゃないか。さっきまで落ち着いていたのに、いっきに混乱が体育館全体に広まった。こんな中、建設的な答えが出るわけなかった。体育館の扉が開いた。全員がそちらを向く。助けか、あいつらか微かな希望を信じて。


でてきたのは怪物だった。2mを超える巨体で鬼のような角をはやしていた。片手には人間の首を持ちながら入ってきて、次の獲物を探しているようだった。


「ギャァァ―――――!!」


その形相に合わず甲高い声で鳴いた。その後体育館にいた人達を殺し始めた。一人また一人

逃げる場所なんでない、外に出ても他の奴らがいる。やがて、両親と他の人達も死んでいき俺一人になった。まるで、俺だけに絶望を教えるように。助けが来ると思ってた。でもそんなのいない俺は死ぬんだ、そう感じ思考を放棄して死ぬのを待った。


「ハァァ――!!」


死ぬ時を待っていると体育館の上から人が降ってきて怪物を切った。そのまま、あっという間に怪物を倒した。どうやら助かったらしい。


「ヒーローが助けに来たよ!少年」


この底抜けに明るい人間は俺を助けに来てくれたらしい。けど、


「遅いんだよ…。何がヒーローだ、見てみろよ、みんな死んでる。お前が来たって何も変わらねぇ。もう、俺も死なせてくれ…」


分かってるこの人は何も悪くない。わかってる。でも助かってみて現実を見るととても悲惨だ、何も残ってない家族はもういない。現実を見なくなかった俺は、助けてくれたヒーローに暴言を吐いて責任を押し付けようとしていた。やがて自衛隊らしき人達もやってきて避難所から救出してくれた。


あの日から12年俺は、祖父に引き取られ生活し今は祖父の家から大学に通いながら就職活動をしている。あの怪物についてわかっていることは、怪物またの名を「ディアブロ」は安倍晴明が祀られている安倍晴明神社から出現したこと。そして、それに伴い覚醒者と言われる人間が現れたこと。あの事件以来、政府は能力者を集めゼロ隊を結成し事件の解明を急いだが特に進展もなく時間が過ぎていた。また、良くあるファンタジーではダンジョンや怪物が何らかの資源という恩恵をもたらしてくれることが一般的だが現実はいつも非情で残酷だ。あいつらは我々に恩恵をもたらすことは無かった。ただの害悪でしかない。俺は能力が覚醒することは無く12年が過ぎてる。普通の一般人である。そんなことを考えながらコンビニから家に帰宅していた。


「ん…?なんだ、これ何かがおかしい」


自然と足がとまった。いつもと変わらない周辺の雰囲気だが、確かに何かが違うそれだけは確かだ。なにが起きているのかその原因はすぐに明確になった。路地の曲がりかどからディアブロが姿を現したからだ。

「くっそ!」


俺は奴らの姿を見た瞬間に逃げ出した。能力が使えない俺に勝てるわけがないそんなの実体験からわかってる。俺は逃げた。ただ逃げた。


「なんで、追いかけてくるんだよ!もぅぅ!!」


とことんついてないらしい。追いかけてきやがった。どうすればいい!どうすれば!何も解決策が思いつくわけもなく。工場跡地に入ったところでついに追いつかれてしまった。


「ブゴォッ」


殴られて吹き飛ばされた俺は近くのドラム缶と音を立てながら倒れていった。クッソ!明らかに手加減されて、遊ばれている。なんだよ、こいつら!俺は悪態を吐きながらあいつらと向きあった。


「ふんっ!笑ってんじゃねぞ!どれだけの物を俺たち人間から奪えば気が済むんだよ、お前らは!害悪でしかないお前らが生きていてもなんの価値もないんだよ。消えてくれとっとと消えろ!」


俺は悪態を吐くしかない。あいつらは俺の言葉も意に介さず笑いながら近づいてくる。

クッソクッソクッソクッソォォ!!


「馬鹿が!どれくらいダメージがはいるのか知らねーが!一矢報いねーと死にきれないんだよ!ともども死ねっ!」


そういって俺はトラム缶から溢れていた、油にライターで点火しようとしたその瞬間、俺の体全体から青い炎が噴き出した。その衝撃で油に引火し爆発した俺をディアブロともども吹き飛ばされた。


「痛てぇぇ!くそ体が、あつ…ん?熱くない?まさか!」


そのまさかである。どうやら俺は覚醒したらしい。あまりの嬉しさに興奮が隠しきれないやっとやっとだ!これで仇を取ることが出来る。


「ハハッ!この土壇場で覚醒したみたいだぜ!やっと付きが回ってきた。覚悟しろよ、糞ども!」


奴の顔からも笑みが消えたのがわかる。まさか、反撃されるとは思ってなかったんだろう。明らかに警戒してるのが見て分かる。俺は高揚感のまま奴に突撃をした。


「オラァァ!!」


戦い方なんて知らない。けど今は生きるためそして少しでも仇を取るために奴を殴るしかない。取っ組み合いになりながらも力負けせずに行けている。


「どうした!さっきまでの余裕はどこへ行った!?驚いてるか?安心しろ、俺も同じ気持ちだ!」


奴を吹き飛ばしそのまま馬乗りになった。体が熱い、今は奴を殺す事しか頭にないのがわかる。そこから俺はひたすらに殴った。殴って殴って殴った。奴に俺の火が燃え移ったのがわかる。


「燃えろ!燃えろ!燃えろ!糞どもが!お前らのせぇでお前らのせぇで俺の親は死んだわかってるのか!クッソクッソクソォォ」


俺はただ、無我夢中で奴を殴り続けた。怒り、悲しみ、絶望――今まで胸の内に溜め込んできた全ての感情が、拳に込められていく。奴が消滅した後も、俺の拳は止まらなかった。地面に向けられた拳が、血のような涙を伴って、ただ、虚空を叩き続けた。

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