第三十三話 ホテルの部屋でいろいろうっふん
天界へ帰ることが出来ず、ビーチェの「付いて来ればそのうちなんとかなる」という言葉に甘えて行動を共にすることにした
下界では適当に思いついた司祭ディアノラという名で通すことにしました。
大聖堂からホテルへ向かっている間、お祭りの露天巡りをしてお腹いっぱい。
タダ飯食い―― いえ、施しを受けてそのお店の祝福の祈りをすると、私の力の効き目が強すぎたのかお客が集まりすぎて長蛇の列になるほど大騒ぎになってしまいました。
その噂がホテルの玄関前にいる従業員にも伝わっており、ビーチェの大言で話をややこしくなってしまいましたが取りあえず事なきを得て部屋へ入ることが出来ました。
ビーチェからお風呂を勧められたので、これから入るところなんです。
そういうわけで、ジーノはビーチェに自分たちの寝室へ押し込められてしまいました。
「ディアノラ様! これ、タオルとガウンを使って下さい」
『どうもありがとうございます。あの…… すみませんが法衣を脱ぐのを手伝ってもらえますか? 少し手間なもので……』
「いいですよ。確かに大変そうだもんねえ。うひひ」
ビーチェは、ジーノが隠れている別の二人部屋から持って来たタオルとガウンを
ウルスラが使う部屋なんでしょうけれど、さすがに彼女と一緒に寝るわけには――
――今晩はそこのソファーで休ませてもらいましょ。
「じゃあ袖から腕を抜いて下さーい」
ビーチェが法衣を脱ぐのを手伝ってくれているので、随分楽ちんです。
おや? 寝室のドアが閉まっていたのに――
◇
(見るなと言われると余計に気になるよな。ドアを少しだけ開けて隙間から―― うおっ!? もう下着だけになってる! すっげー 神様でも普通の人間みたいなぱんつ履いてんだな)
◇
「ディアノラ様って肌が白くてすごくきれーい!」
『あのっ ありがとうございます…… 若い女の子に言われると照れますね……』
「神様でも人間みたいな下着を履いているんですね。普通の白いぱんつに見えますけれど、どこで買ってくるんですか?」
『ええっ? 下着は天界でも作ってますけれど、人間が作った下着のほうがよく出来ているので使ってるんですよ。人間のフリをして下界へ下りて、下着をまとめて仕入れてくる神がいるんです』
「――へえー 意外だなあ」
◇
(おっぱいはビーチェの半分くらいなんだな。でも綺麗な肌って気になるな…… 近くで見てみたいけれど、ビーチェに殴り殺されそうだ。ガクブル……)
◇
『ありがとうございました。では入ってきます――』
「ディアノラ様、この
ビーチェは脱いだ
もし人間が着たらどうなるかわからないんですが、とても大きな神力を帯びているのでたぶん危ないです。
『人間が着たらたぶん身体がバラバラになると思うので、やめておいたほうが
「ひっ ひいぃぃ!!」
バササッッ
ビーチェがびっくりして床に
まあ、ホテルの床は綺麗なのでいいんですが……
『ああっ 触るだけなら大丈夫ですよ。びっくりさせてごめんなさいね』
「うううっ…… 良かった…… クローゼットへ架けておきます……」
『お願いします―― では』
◇
ホッ――
まさか下界でお風呂へ入ることになろうとは思いませんでしたが、これでゆっくりお風呂に浸かれますね。
お湯が貯まっていないから、先にお湯を出しておきましょう。
まあっ 素敵な湯船! さすが高級ホテルだけのことはありますね。
お湯に浸かって脚を伸ばして、自分のセクシーさに酔いしれることにしましょう。うふふっ
――シャーーー
シャワーが気持ちいい……
でも…… ビーチェったら間近で見ると服の上からでも胸が大きいってわかりますね。
私の胸は…… 見てると何だか悲しくなってきました。うううっ
◇
(バラバラになるって―― とんでもないことを言ってたな。俺は触らないでおこう。しかし神様の半裸が見られたなんて、ラッキーだったな。そういうのってナリさんとお風呂場で出遭ったとき以来か…… むふふっ―― わっ やべっ ビーチェが来た! 奥へ逃げよう)
ギィッ バタンッ
「おいジーノ! 今晩はソファーで寝ろ!」
「へ? 何で!?」
「何でって、神様をソファーに寝させたらバチが当たるだろ!」
「ええっ そんな…… せっかくこんな良いホテルに泊まれるのになあ……」
「そういうことだ。あたしはディアノラ様と寝るからな」
「――へーい……」
◇
お風呂上がりにガウンのままでビーチェとジーノと歓談をして、お夜食にビゴッティで買ってきたパンを頂いたり。
ああもう…… 露店の食べ物から美味しいとつい食べちゃいましたが、間違いなく太ってしまいます。ぶふぅー
「ああ…… もう眠い…… あたし先に寝るねぇ……」
「おう」
『じゃあ私も寝ることにします。ジーノ、おやすみなさい』
「――おやすみなさい」
私はビーチェと一緒に寝ることになりました。
彼女はここまでずっと走ってきたのですから、お疲れのようですね。
天界ではモニターを見ながら眠り込んでしまうことがよくあるのでソファーで寝ることは一向に構わないのですが、ビーチェが聞かないものですから……
ジーノ、ごめんなさいね。
◇
(はぁ…… 俺も疲れたから寝ようかな。ウルスラはまだ帰ってこないし…… どこをほっつき歩いてんだか。あーぁ、俺もベッドで寝たかったなあ)
◇
夜中の様子を見てみましょうか。
祭りで街のおっちゃんたちと意気投合して飲み歩いていたウルスラが、夜遅くなって部屋へ帰って来たようです。
意外にへべれけ状態ではなく、ほどほどに正気みたいですね。
「うぃー ただいまーっと。飲んじゃった飲んじゃった。バルに止められていたからこんなに飲んだの久しぶりだよねえー すっかり遅くなったわ。さすがにみんな寝てるよねーって――」
ウルスラが部屋の周りを見渡すと、ソファーで寝ているジーノに気づきました。
「あれ? ジーノってなんでソファーで寝てんの? そっかあ、きっとビーチェと喧嘩して追い出されたんだねえ、うっひっひ。せっかく高い金を払ってフカフカベッドの良い部屋を用意したのに―― そうだ!」
ウルスラは、ジーノが寝たまま魔法で浮かせて自分の寝室へ運んでしまいました。
ジーノの貞操が危ないですよ!
「よっと…… 起こさないようにゆっくりベッドに寝かせてっと―― それにしてもよく寝てるわねえ。まあ、あれだけ走っていればそうよね。私も眠くなっちゃった。シャワーは明日でいいや。さてと――」
ウルスラは一気に上着と、下着も脱いでスッポンポン!
そうでした! この人はいつも裸で寝ているんでしたよ! あわわわ……
「どうしよう。このまま食べちゃおうかなあ。取りあえず布団に入っちゃおうっと」
ウルスラは裸のまま、布団を掛けてジーノの隣に寝転びました。
キスをせんばかりに顔を近づけていますが、ジーノってファーストキスはまだのはず!
超年増の子持ち女にこっそり奪われてしまうんでしょうか!?
(寝顔は可愛いわね。んー…… この子、ビーチェとキスをしたことがあるのかしら。私が今キスをしたら、もしファーストキスだったら可哀想よね…… ま、いいわ。キスは起きている時の方が燃えるし美味しいのよ。それより―― ゴソゴソ)
どうやらキスは諦めたようです。
ウルスラは少し下がり、ジーノの胸のあたりに顔を近づけました。
クンクンクン スゥーハァー
(あああああイイにおいいぃぃぃ!! やっぱり若い男の子よねえ! バルも若いときはイイ匂いだったけれど、今は加齢臭が漂ってそう。次は――)
クンカクンカ――
(脇の下最高ぉぉぉぉぉぉ!! ほんのりツンとくるのがいいのぉぉぉぉ!!)
クンカクンカクンクンクン――
(ハァッ ハァッ 癖になる香りで危険だわ。よしっ 次はメインディッシュと――)
この女、変態だと思っていたけれど確定です!
ああっ でも
んん? ウルスラは布団の中へ潜り込みました。
まさかまさか!? そこだけはダメですってば!
フガフガクンクン―― クンカクンカ―― スゥーハァーぁぁぁぁ――
(あうっ はぁぁぁっ うううっ ビクビクッッ なんて芳醇な男の子の香り! もうこれだけで昇天しちゃいそう。最高よっ ありがとうジーノ…… zzz)
あらっ…… 布団の中でモゾモゾしていると思ったら、動かなくなっちゃいました。
そのまま寝ちゃったんでしょうかね?
朝起きたとき、ジーノの反応が大変なことになりそうです。
◇
「ビーチェ、ジーノ。せっけん流しますから
「「はーい!」」
(あれ? ナリさんが裸で背が高い…… あっ ビーチェが子供だ。ビーチェんちで、三人でシャワーを浴びてるとこだ)
シュワァァァァァァ
「うふふっ 気持ちいいね!」
「うん!」
(そっかあ、たぶん十年前だからビーチェのお父さんがまだ生きているころで、俺が五歳…… もっと小さいかも。ギリギリ記憶が残ってるんだ…… 懐かしいなあ。うわっ 目の前にナリさんの股間がっ 俺ってそんなところまでくっきり覚えてるのか……)
「さっ 終わったわ。上がって身体拭きましょうね」
「ねえお母さん! おっぱいは?」
「もうビーチェったらしょうがないわね。いつものでいいよね?」
「うん! お母さんのおっぱい柔らかくて気持ちいいんだもーん!」
「はい、どうぞ。うふふっ」
(ナリさんがしゃがんで、たゆんたゆんのおっぱいが目の前に! あっ!? ビーチェが右のおっぱいに顔をスリスリしてるぞ! そうだ。シャワーが終わった時にビーチェは、ナリさんのおっぱいで遊ぶのが癖になってたんだよ。おかしなやつだよな)
「お母さんのおっぱいふかふかー! ねえジーノもやってみなよ!」
「え!?」
「いいのよジーノ。いらっしゃい。うふふ」
「うん……」
(幼い俺はそろそろっと左胸に顔を
「あっ ミルクが出てきた! 頂きまーす! パクッ」
「ビーチェったらダメよ! それはファビオにあげるんだから…… ああっ」
(わっ 左もミルクが出てきた。勿体ないから舐めてもいいよね。ちょうどファビオが生まれたばかりで、ウチのかーちゃんがあいつの面倒をよく見てたんだよな。あの時の記憶かあ――)
「ジーノまで…… うううっ ムズムズするからやめなさい…… あふっ……」
(実はミルクって、あんまり美味しくなかった気がする…… あっ あれ? 目の前が真っ白になるう!?)
◇
チュンチュン――
皆が眠っている間は何事も無く朝を迎えました。
ジーノとウルスラはどうなっているんでしょうか?
チュッチュッチュッ――
「あふっ ジーノったらそんなに強くしないで――」
(ん? ナリさんのおっぱい? 夢じゃなかったのかな? うーん―― ふわふわだあ)
「はふぅ…… 嬉しいわ。こんなこと久しぶりよ。ヴァルプリにお乳をあげてた以来かなあ」
(んん? ナリさんとビーチェとシャワーを浴びていたのに、なんで布団の中!?)
「ああっ 母性本能ってこうだったのね。気持ちが温かくなってくるわ」
(あれ? ナリさんの声じゃない。最近聞き慣れている声…… え?)
「え?」
「おはようジーノ…… ふふふ」
「うええええっ!?」
ガウンを着ているジーノはやっと起きて、ベッドから飛び上がりました。
そりゃそうですよね。裸のウルスラが隣にいたんですから。
今ベッドの中で起きていたことはいやらしさが無くて、まるで母親が自分の赤ちゃんに母乳をあげているような微笑ましさを感じました。
彼はきっと何か夢を見ていて、誰かとウルスラを間違えていたんですよ。
とはいうものの…… DTの男の子の前に裸の熟れた女がベッドの上でニヤニヤと笑ってる状態は…… 今更ですが、あわわわわ……
こんな時、ビーチェに見られでもしたら!?
ドンドンドン!! ガチャッ
「ウルスラ! ジーノがいないぞ! ああああああああっっ!!??」
「うっふっふ。おはようビーチェ」
案の定、ソファーにいなかったジーノをビーチェは不審に思い、寝室に飛び込んで来ました。
彼女の目に映ったものは、幼なじみがとうとう邪悪な魔法使いに食われてしまった状況にしか見えないようです。
「違うんだビーチェ! 起きたらいつの間にかこの部屋へ移動してたんだあ!!」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ…… 言い訳無用!! ジーノのバカああああああああっっ!!」
「ちょっとあんた! 部屋が壊れちゃうでしょ!」
ピキーーーンッ
ウスルラは魔法を使い、今にもパンチをお見舞いしようとしていたビーチェの動きを止めました。
「あうっ 身体の力が抜けていくぅ……」
「ホテルに迷惑を掛けちゃダメでしょ! だいたいジーノがなんでソファーで寝てたの? 可哀想だから私の部屋へ連れて来ただけなんだけれど?」
「それは……」
「あ…… え? なに!? この強大なオーラは!? 随分絞っているけれど、底から湧き上がってくるような、ビッグなオーラをすぐそこに感じる……」
ジーノが答えようとすると、ウルスラは私のオーラを感じてしまったようです。
やはり法衣を着ていないと、いくら私の方でオーラを絞り込んでも熟練者にはわかってしまうのですね。
さて、彼女にはどう説明しましょうか。
ただの人間ならば例え教皇でも、こんなオーラを放つことは出来ませんからね。
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