第46話 お金にラベルをつけよう
「ところで、お金にはラベルが付いているのを知っているかな?」
パパは、唐突に変な質問をした。
「……ラベルってなんだっけ?」
カノは、お兄ちゃんの顔を見る。
「えっと、商品に箱とかに書かれていたり、貼られていたり……情報が書かれているものかなぁ。ドレッシングのビンに貼られていて、シーザーサラダドレッシングとか中華ドレッシングとか書かれているみたいなイメージ」
「ラベルは、そういうものだね。商品の名前や内容を示している情報のことだ」
「ん? でも、お金には……千円とか金額が書かれているけど、それがラベルなの?」
カノは、パパとハルの顔を交互に見て、問いかけた。
「『お金』自体には、ラベルはないよ。千円とか五千円とか金額は示されているけれどね」
パパが、答えた。
「じゃ、ラベルなんてないってことでしょ」
「お金を持っている人が、そのお金に自由にラベルを付けているんだ。紙幣にシールが貼られているわけではないけれど、持っているお金に意味を付けていることが多いはず。例えば、明日はお正月。元旦で、二人はお年玉をもらうだろう。この時、パパが用意していたお金は、お年玉というラベルが付いている。それを二人にわたすと、パパのお金はなくなってしまう。二人は、そのお年玉というお金を自由にできるね」
「うん。たくさんもらいたいなぁって、今から思っているよ!」
カノは、笑顔で言った。
「手に入れたお年玉をどう使うか。何か欲しいものができた時のために、ある金額は貯金をしようと考える。そうすると、お年玉の一部は、貯金というラベルが付くことになるね。お年玉で買おうとしていたゲームがあったら、ゲームソフト代というラベルが付いて使われる」
パパは、具体例を説明する。
「あ、なるほど。自分がどう使うか、お金に役割を決めているんだね」
ハルは納得いったようで、確認した。
「お金の使い方は、持っているお金の一部に意味づけをしてから使っていることが多いはず。意味づけのことをラベルと、パパは呼んでいる。パパやママが働いて得たお金は、様々なラベルが付けられて使われている。光熱費、通信費、食費、教育費といった具合にね。それぞれに、いくらお金がかかるかも大事だけど、そうやってお金に意味づけ、ラベル付けをして使っていくわけだ。この意味付けをきちんとできるかどうかは、けっこう重要なんだよ。お金自体には、もともとラベルがない。様々なものと交換できる機能を持っているから、持っている人が意味付けをしないと上手く管理ができないんだね」
パパは、説明した。
「管理って?」
カノは、首を傾げて問う。
「ある金額のお金にきちんとラベルを付けておかないと、使いすぎてしまうことがあるんだよ。一ヶ月の食費はいくらと決めておけば、その金額内におさまるように使うことを工夫できる。特売の時に食材を買いこむといったことだね。でも、食費というラベルと金額を決めないと、ついつい美味しいけど高いものを買ってしまったり、楽をしたいために外食ばかりしたりで、気づいたら思った以上にお金を使ってしまうということになるわけだね」
「そうか。お金を使う時は、ラベルを付けておいて、どう使うためのお金がいくらかをはっきしておくと良いんだね」
ハルは、納得したようだった。
「そのとおり。それは未来に向けたお金の用意の仕方でもある。ハルくんたちが将来大学まで進学できるようにと、パパとママはお金を貯めている。それがないと、旅行とか遊びとかにもっとお金を使って
「……ありがとう。お金にラベルを付けるって、大事だね。賢く使うために欠かせない気がする」
「わたし、お金にラベルを付けるなんて、考えたこともなかったよ。手元にあるお金で、欲しいものが買えるかどうかくらいしか考えてなかったかも」
「これからは、自分の持っているお金を使いたい目的に分けて、きちんとラベルを付けてごらん。お菓子代、本代、貯金といったようにね。そして、じいじやばあばたちからおこづかいをもらった時も、そのラベルを付けよう。そのもらったお金を大切に使うには、誰からもらったお金なのかを忘れないことも大切だね」
「お金にラベルを付けるだけで、なんだか上手にお金を使えそうな気がするよ」
ハルは、嬉しそうに言った。
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