第21話 給与所得
「パパのお仕事も、時給で決められているの?」
カノは、尋ねる。
「いや、時給というよりも月給だね。一ヶ月でいくらもらえるかが、決められている。パパの会社は、平日は毎日、九時から十八時まで働くのが条件だ」
「へぇーそうなんだ。でも、パパ、夜帰ってくるのが遅い時がたまにあると思うけど……」
「残業で遅くなるんだよね」
ハルが、パパの代わりに答えた。
「平日の九時から十八時まで働いて、一ヶ月でもらえる金額は決まっている。だけど、仕事が終わらない時は、居残ってお仕事を続けることがある。それを残業というんだ。この場合は、割り増しの時給で働いた分だけ、より多くお金がもらえるのさ」
「あれ? 残業は時給なんだ。割り増しってことは、もとの基準があるんだよね?」
ハルは、好奇心から疑問を口にする。
「九時から十八時まで平日毎日働くということで、通常の時給は計算できるだろう。残業の時間帯で仕事をすると、その時給に対して割り増してお金がもらえることになる」
「そういうルールなの?」
今度は、カノが質問した。
「会社のルール、つまり就業規則で決められているけど、もとは法律で決められている。働きすぎて身体をこわさないように、法律で決められている。長い時間働きすぎたら、疲れが取れなくて病気になってしまう。長く働かせようとすると、会社は社員により多くお金を払わないといけないようになっているんだ。そういうルールというか法律が、働く人の健康を守るために用意されているのさ」
「休むことも大事だよなぁ。ね、パパがたまに平日にお休みを取ることあるけど、その日は働いていないから、もらえるお金は減るのかな?」
ハルは、次々と疑問がわいてくるようだ。
「いや、有給休暇という制度で、お休みしてもお給料は変わらない。パパの会社は年間で二十日、社員にこの有給休暇を支給しているんだ」
「ほぇえ、二十日もお休みしてもお給料が出るんだっ! なんかすごいね」
カノは、驚いた顔をしている。
「まぁ、そんなに休めることはまず無いけれどね。月に一回、有給休暇が使えたらラッキーという人が多いんじゃないかな」
「月給は一定額だってわかったけど、残業で増える以外にもらえるお金が増えることあるの?」
ハルの疑問は、尽きないようだ。目が好奇心できらめいている。
「賞与、つまりボーナスというものがある。これは半年間の会社の業績、つまりいくら儲けることができたかを基準に、社員の働きに応じて支給されるお金のこと。会社が大きな利益を出すことができた時は、社員のボーナスもたくさんになるんだ。それから、がんばって会社の利益により多く貢献した人はたくさんもらえる」
「じゃ、会社の利益がなかったら、ボーナスは出ないの?」
カノは、寂しそうに尋ねる。
「そうだよ。会社が赤字だったりしたら、そんな余裕は無くなってしまうからね」
「ボーナスをたくさんもらうために、会社員の人たちはがんばるのかぁ」
ハルは、感心したようにつぶやく。
「会社が赤字続きでつぶれてしまったら、働くところもなくなってしまうからね。会社という組織のために、中で働く人たちはがんばっているんだ。それに、毎月支払われる給料とは別に、ボーナスでまとまったお金が手に入ると、大きな買い物をする楽しみな機会がくるからね。もちろん、将来のために貯金にまわすことも大事だ」
「普段の生活を気にしないで、買い物ができるのは、楽しそう」
カノは、ニコニコしながら言った。
「まとまった貯金ができるのも大事だよ。ぼくならもったいなくて、ちょっと使ったら後は貯金しそうだなぁ。ね、お給料、残業、ボーナスはわかったよ。さっきのアルバイトの話みたいに、仕事に慣れてきた人はお給料が増えたりするのかな?」
「そうだね。仕事の経験があって、難しい仕事も段取り良くこなせる人は、会社に認められると当然お給料も良くなる。多くの会社が半年間くらいで、仕事の成果を評価する制度があるんだ。上司に認めてもらえば、給料が増える。それから、課長や部長のようにリーダーや管理職になるとより増える。みんなをまとめて、チームとして動けるようにするためには、苦労するからだよ。もちろん、チームのリーダーとして責任も取らないといけないからね」
「会社が評価するって、学校の成績表みたいね。大変な仕事だと、お給料が良くなるのね」
カノは、感想を述べる。
「仕事が上手になれば、お給料が増えていくのは面白いけど、大変そうだなぁ」
「ね、パパのようなお仕事でお金をもらう方法はわかったわ。他にお金を得る方法はあるの?」
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