そして、あさみは……。



「小泉さん! あなた隊長なんだから、もう少ししっかりしてよね! このままダラダラ訓練してたって、みんな鈍っちゃうよ。この前の出動を忘れた? あの時みたいに不測の事態がいつ起こるかわからないよ。それに備えた訓練、していかなきゃ!」


「あ、あぁ……。」



あさみは、小泉率いる新生SITの新規隊員に推薦された。

外国部隊の隊員として育ち、様々な技術を仕込まれ、その腕を司に見込まれて特務課入りした彼女は、特務課解散後もその実力を買われたのである。



新規入隊したあさみであったが、その実力は古参の隊員をすでに凌いでおり、日を浅くしてSITの中心となっていた。



「銃火器の扱い、状況判断、その全てがトップクラスだ……。こんな逸材、しばらくは現れないぞ……。」


若くしてSITの中心となったあさみ。

その物言いに遠慮はなく、隊の欠点・問題点などを遠慮なく指摘しては改善案を出していったのだが、隊員たちはその詩的に誰一人反発することなく、一丸となって改善に努め、訓練に勤しんだ。



「あさみ……自分が憎まれ役を買って出ることで、SIT全体の実力を底上げしようと考えたのだろうが……思惑は外れたようだな。」


「……え?」


「確かに、お前の言うことは正しい。改善していけば、我らSITはより多くの人たちを助けることが出来るだろう。しかし……。」



小泉は、あさみの隣で笑いながら隊員たちを見やる。



「お前がいかに厳しく問題点を指摘しようと、誰も反発などしない。なぜならお前は……。」


「私……は?」



隊員たちは必死に汗をかきながらも、あさみの指定したトレーニングメニューをこなしていく。



「お前は、古橋隊長が裏切り瓦解寸前だったSITを奮い立たせ、そして窮地で指揮を執ったのだ。誰もがお前を見て、英雄のようだと思っただろうよ。」



ジョーカーを逮捕した、夜の闘い。

ジョーカーに能力では後れを取っていたものの、最後は諦めない気持ちと自分が身に着けた機転と能力で逮捕に至った。


それを、隊員たちは皆、認めていたのだ。



「まったく……みんな、お人よしが過ぎるわ。」



小さく溜息を吐くあさみ。

しかし、その表情は穏やかである。




「……いいわ。思い切りしごいてあげるから、覚悟しておきなさいよね!!」



あさみが加入したSITは、近年まれにみる成長を見せ、国内屈指の特殊部隊に成長する。


あさみは引退するまでSITのために働き、小泉の後任として史上初の女性隊長となるのだが、それもまた、少し先の話である。

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