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一方、他のメンバー達は、悠真の情報をもとに捜査を急いでいた。



「顔写真で照合したけど、前科はみんな無いみたい。買春、横領、空き巣に爆弾かぁ……どうやって調べようかなぁ……。」


悠真は高度なハッキング技術を持つ、元ハッカー。

ハッキングをして大きな犯罪を起こす、荷担するなどはなく、ただ面白半分に情報を盗み見ていただけであったか、司がそんな悠真を書類送検。反省した悠真のその能力を買い、


『司令室以外でのハッキング等の行為の禁止』


と言う条件で、司の責任下において彼を特務課に招いた。



志乃が表の情報を使い、警視庁各課への応援を要請するのに対し、悠真は裏の情報……つまりSNSや海賊サイト、裏アカウントなどのデータに侵入し、犯人の情報を深く探る。


志乃と悠真、表と裏の情報を掴むことで、特務課の検挙率は高い水準を保っているのだ。



「よーし、じゃぁ俺は空き巣に行くわ。」


「あたしは買春。絶対に許さない!」


「私は横領を洗うわ。」


「……専門分野だしな。爆弾行くぜ。」



虎太郎、あさみ、司、そして辰川がそれぞれ自分の受け持つ事件を決めていく。


「りょーかい。じゃぁ、それぞれのスマホに事件についての有力情報を随時送信していくから、応援が必要なときは言ってね。志乃さんが手配してくれるよ。」


「最も近くにいる捜査員に応援を要請します。皆さん、位置情報が切れないように、無線機の電源には注意してください。」



長時間の相談をしなくても、各々が行動を起こせる、決断の早さ。

そして、志乃と悠真と言う有能なオペレーターの存在。


これが、特務課が少数7人でありながら、凶悪事件の解決に大きく活躍している所以でもある。



「それにしてもFの野郎……ふざけた真似しやがる!」


「きっと、これは肩慣らし、と言ったところなんでしょうね。次々と、人質が展望台に送られていき、私たちはそんな人質の闇を暴いていく………」


「マジでムカつくんだけど。どんだけ人質の中に『犯罪者』がいるってのよ!」


「まぁ、ここで興奮しても仕方ねぇさ。俺たちは野郎の提示する『罪』とやらを暴いていかなければならない。それが人質の命を救う第一歩だ。」


「なーんか、やるせないけどね……。」



会話しながらも、メンバー達は悠真から送られる情報をもとに捜査を進めていく。



「これだけ分かりやすいデータが来れば、あとは押さえるだけじゃねーか。空き巣の方は目的地まであと少しだぜ。まさか、こんなところにアジトがあるとはな~」


「買春グループの溜まり場、見つけた!」


「私は直接、彼女の元職場に向かうわ。」


「爆弾野郎の家、もうすぐ着くぜー」



皆、最初の事件の核心に辿り着こうとしていた。

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