3-11

一方、虎太郎と西尾は、中山についての話を続けていた。



「しかし、どうも腑に落ちない……。中山は確かに10年前の事件で家族を失った。しかしそのことで辰川に対して恨みを持つような奴じゃない。事件が解決した時だって、辰川は天才だ。アイツのお陰で多くの命が救われたんだ……って誇らしげに言ってたんだ……。」



西尾の不思議そうな表情に、虎太郎はますます混乱する。



「え?じゃぁ何で、辰川さんにあんな脅迫メールを出したり、実際に爆弾を仕掛けたりしたんだよ……。」


「それがいちばんの謎だ。それを早く解明しなければならない。そんな気がするよ……。」



悪い予感がする。

虎太郎はまず何をすべきかを考える。

その時だった。




「虎、聞こえるか?」


「辰川さんか?爆弾は?」



無線で辰川が虎太郎を呼ぶ。



「あぁ。解除には成功した。」


「成功って……まだ現着してから20分も経ってねぇじゃねぇか……。」


「あぁ、爆弾は『大したことなかった』んだ。それより中山の居場所は分かったか?」


「西尾さんの話だと、浅草がいちばん有力らしいけど……。」




辰川は、爆弾を解除したのではなかった。

その爆弾は設置されてはいたが、『爆発しない』爆弾だったのだ。

巧妙に作られた仕掛け。

しかしその仕掛けのどれもが、爆薬とはひとつも直結していなかったのだ。


ただ、カウントダウンをするだけの置物、それが大学に仕掛けられていた不審物の正体だったのだ。



「浅草か……。」



辰川も、浅草と言う地名には思い入れがあった。



「虎、俺は浅草に行く。お前は……。」


「……行かねぇよ、俺は他の部署の応援に行く。まだ小さい爆弾は設置されてるかもしれないんだろ?」


「ま、まぁそうだが……。」



辰川は驚いた。

虎太郎はきっと同行する。そう思っていたのだ。



「浅草は、辰川さんと『その仲間』の思い出の場所なんだろ?だったら俺の代わりに浅草には西尾さんが行くよ。3人で……オッサン同士で話しつけてこいよ。俺みたいな若造が間に入ったところで、この事件は解決しねぇ。」



虎太郎も、浅草に向かって犯人確保に全力を尽くしたいという思いはあった。

しかし、この事件は、ただ犯人を追い詰め確保するだけでは真の解決にはならない、そう感じたのだ。



「すまないな虎……。恩に着る。」



そんな虎太郎の想いが、辰川にも届いた様だ。



「浅草に急行する。何かあれば連絡する。」


「……了解。いろいろケリ付けてくるんだな。」



こうして辰川は大学図書館には応援を呼び爆弾を回収してもらい、そのまま浅草へと向かうのであった。

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