自分に出来る限りの暫定的な真理を探し求めている子が、突然ホンモノの真実を知ってしまう話。
最初に語られた彼女の持論が最後に全部自分に返ってくるさまは、まさに芸術的です。自らもまた「押し付けられた価値観を盲目的に享受することしか出来ない無力な大多数」であると知ってしまった。彼女は映画の主人公でも何でもないわけで、反抗などできるはずもない。その結果、全人類の実存にかかわるはずのこの問題は、彼女一人がその柔らかい心で抱え込むしかなくなってしまいます。
しかし、ラストで確かに彼女は彼のぬくもりを感じていました。ほかのものがどんなに欺瞞でも、それを心で感じた自らだけは確かに存在していました。何もかも欺瞞と分かった中で、最後に残った信じられるもの。そして彼は、何もわからなくても、まごころを伝える。それが実に美しい。
荒唐無稽で絶望的な真実にさらされるさまを通して青い心を切り取った名作です。