lonely town

ベニテングダケ

第1話 青少年大量誘拐事件

日本で一番古い遊園地は浅草の花屋敷だと言う。1853年に開園し今でも人気を集めている。

では世界で一番古い遊園地はどこだろうか。

1583年開園、「バッケン」また「チボリ公園」という遊園地も説に上がる。

「では、世界一新しい遊園地は!」

私がそう叫ぶと彼等は一斉にこう叫ぶ。

「「「遊確園!!」」」

「んっふ!その通ーり!!」

私は園長、白田閉指郎。この世界一新しい遊園地「遊確園」の園長である。

「嫌っ!悠太!帰って来なさい!」

「日奈子!戻って来て!」

「勝!そっちに行くな!」

子供達の親御さんがそう叫ぶ。

何故邪魔をするんだ。この子達はこんなにも

「…はぁあは〜」

「めりーごぅらんど乗るのぉ」

「じぇ…じぇこすた」

こんなにも

「楽しんでいるじゃないか」

そこで幕は閉じた。

平成32年。ある事件が起こった。

青少年大量誘拐事件と呼ばれる誘拐事件である。子供達の親は皆口を揃えて吸い込まれたと言う。

吸い込まれる前に止められなかったのかと聞いても何かで押さえつけられ動けなかったと言う。警察は今、多額の学費等で子供達を育てられない親が子を捨てる為の言い訳だと考えているが、子供が見つからない以上収監する訳にもいかず、国が管理する寮に親達を入れ監視している。

「山口君!休憩終わりでしょ!」

考え事をしていると大声で名前を呼ばれた。振り返ると同僚の宮木さんがいた。

確かに時刻は13時10分。休憩時間を過ぎていた。

「ごめん宮木さん。今戻るよ」

「ちゃんとしてよね。警察の一員だと言う事を自覚して。市民を守る警察の一員だと言う事をさ」

市民を守る警察。果たして僕らは市民を守れているのだろうか。

「…ごめん。気をつける」

「気をつけてね!じゃ私先行くから」

青少年大量誘拐事件。僕と宮木さんが主に調べている誘拐事件。だが今の所全く手掛かりが無い。

東京、新橋警察署で働く僕は山口草太。趣味は眠る事、夢を見るのが好きなのさ夢を見るのが楽しいから僕は眠るんだ。

彼女は宮木万美子、僕の同僚。まぁお察しの通り少々厳しいお方。

「さて…」

僕は自分のデスクに立ち椅子に座る。

PCの電源を入れる。情報収集の為ニュースから誘拐事件の情報を取る…が同じような事しか書いていない。

日垣悠太、田中日奈子、野原勝、田淵良、土佐修也、国枝康太、要銘子、多白開、騎馬龍馬、慶次未菜子の十人が被害者。つまり行方不明の子供達だ。彼等は全員が中学生で、全員今年の3月に行方が分からなくなっている。

親達は全員何かに吸い込まれ消えたという。

日垣悠太、田中日奈子、野原勝は、海で吸い込まれ、土佐修也、国枝康太、要銘子は、山で吸い込まれ、多白開、騎馬龍馬、慶次未菜子は街にある小さな商店街で。

「山口君?コーヒーいる?」

「あ、お願いします」

宮木さんがコーヒーを淹れてくれた。宮木さんはコーヒーを淹れるのが美味い。まぁ僕の気のせいかもしれないけど。

「私ね。この誘拐事件の子供達、集団家出だと思うのよ」

「集団家出?でも親達が見ていたんですよ?」

「だって吸い込まれたなんて変な話じゃない?きっと親が子供を捨てる為の言い訳よ」

「…」

あながち間違っては無い。いやそれ以外には考えられないのだ。

でも証拠が無い、分からない、捕まえられない。

「…僕もそう思います」

喉から搾り出したその言葉。間違ってないはずなんだ。でもこの出し切れないような違和感はなんなんだ。

「やっぱり!?だからね!」

そう言うと宮木さんは地図を3枚出して来た。

「これは…」

子供達が誘拐されたと言われる場所の地図。

「この辺りを探って子供達を見つけるの!それで見つかったらあの親達は嘘つきって事!証拠が出るでしょ!」

確かに子供達が見つかれば、あの親達の言っている事は嘘だと言う事になる。

「やりましょうか。確かに話を聞いただけで僕らは近くに行ってない」

「でしょ!じゃあ行きましょうよ明日から!車出すからさ」

グイグイ来るなぁ…。

「わかりました。じゃあ明日から」

少し前進した様な気がして今日が終わった。

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