不死身の冒険者がダンジョン配信者を助けたらバズって人気になりました
生焼けうどん
第一話
「は?人気ダンジョン配信者の【るりてんちゃん】がAA級冒険者の【M.N】との熱愛報道??」
スマートフォンを片手にぼけっとまとめサイトを眺めていると、そんなゴシップ記事を見つけてしまった。
ついリンクをタップすると、添付された写真にはサングラスと帽子で変装した女性と背の高い大学生くらいのチャラチャラした男が並んで写っている。
「そんな……俺の大天使が……」
サイトの下部に存在する、掲示板は祭りとばかりに賑わっていた。
ーーー
137 名無しのD豚
るりてんのスキャンダルでD豚共が発狂しててメシがうまい
138 名無しのD豚
≫137 こんな偽写真に釣られるとかDtuverアンチってやっぱ脳みそ詰まってないの?
139 名無しのD豚
これで【ダンライブ】も終わりだな、一番人気がイケメン冒険者と密会とはなwww
140 名無しのD豚
【†ダンメン女子部で渋谷15層ボス倒してみた†】の頃は同接10万超えたりして覇権だったのに。
141 名無しのD豚
≫139 るりてんちゃんが小天使リスナー見捨ててあんな男と会うわけなくて草
142 名無しのD豚
≫141 相手の【M.N】こと【西京 優】って、AA級冒険者集団【黄金の夜明け】のリーダーだろ? バラエティで見た事あるけど、帝都大でてるイケメンだし年収億越えらしいじゃん。女なら誰でも股開くだろw
143 名無しのD豚
≫142 俺らのるりてんちゃんに限って、そんなスペックだけで相手選ぶ訳なくて草 リスナーへの愛の方が大きいに決まってんだろ
144 名無しのD豚
もうるりてんみただけで相手の男想像しちゃって萎えるから、【アルカ様】に推し変するわ……
145 名無しのD豚
144≫ 地雷系エロ配信者のサムネに釣られててワロタ
146 名無しのD豚
144≫ 聞かねえ名前だなと思ったら、個人過疎配信者じゃねえかw
147 名無しのD豚
豚媚び配信者とかカスだろ
148 名無しD豚
147≫ それ、るりてんの悪口で草
ーーー
「くそっ……なんなんだよ!るりてんちゃんは『え〜っ、私の恋人はぁ、画面の前のリスナーちゃんたち皆だよぉ〜♡』って言ってたじゃねぇか!結局、ハイスペイケメンとくっ付くのかよ!?」
いつかのクリスマス配信を思い出しながら、イライラして投げたスマートフォンは天井へと見事に突き刺さってしまった。
引き抜きたいが背が届かないし、脚立もないのでネット絶ちする良い機会だと諦めることにした。俺は昔から諦めが早いのだ。
「はぁ、もう昼前だしダンジョンにでも潜って日銭を稼ぐか……」
突然の虚無感に襲われてため息を吐きながら、俺は身支度を整えて部屋を出た。
ーー
『ピピ、エクスプローラーライセンスを確認しました。【シキシマ アキラ】様、【多摩東ダンジョン】へようこそ。お気をつけていってらっしゃいませ』
ダンジョンの入り口でライセンスをかざすと、それを読み取って機械の音声が流れた。
国が存在を確認したダンジョンはこうして入り口が整備されてライセンスを持たない人間が立ち入れないように管理されている。何週間かダンジョンから出た記録が無いと暫定的に死亡扱いになるそうだ。
人気のあるダンジョンなら、近くに冒険者支援センターがあったりして人間が《ルビを入力…》受付をしてくれたりする所もあるらしい。
まぁ、今のところ俺にはあまり関係ない。
ところで【
「はぁ、それにしても一日中アイテム拾いをしてもEランクじゃ日給5000円が関の山か」
リュックサックの中へと手のひらサイズの青く光る石ころを詰めながら愚痴を溢す。
これは、ダンジョン内に生成される【魔石】の中でも低品質のものだ。
【魔石】は様々な用途があるので、どれだけあっても買い取っては貰えるが、質が低いと単価は子供の小遣いレベルにしかならない。
もっと稼ぎたければ、ダンジョンの深層に下りてアイテムを探すことになるがその分リスクは高まる。リスクの高いことは面倒なので、差し迫ったことでもなければしないと決めていた。俺は慎重派なのだ。
「かといって、雑魚モンスター狩りは疲れるのに割に合わないしな。誰だよスレで『ゴブリンくらいなら楽勝www』とか言ってたやつ。あれと戦うと次の日筋肉痛になるわ」
モンスターを撃破した時に生成されるドロップアイテムは、自然生成のアイテムよりは単価が高いが大差はない。
むしろ、戦うモンスターによってはそれでその日の気力が尽きてしまう為にアイテム拾いの方が安定するまであるわけだ。
「やっぱり、元ニートがいきなりダンジョン潜るよりはコンビニバイトでもした方が良かったのかな。でも、面接10件も連続で落ちたら心折れるっつーの」
文句を言いながら、足元に淡く光る草を見つけて摘む。これはラッキーだ。薬草の類いは冒険者の飲むポーションに使われる為、最低でも一株で500円にはなる。
「でもなぁ、職安の担当者からゴミを見るような目で言われた『はぁ……。それだけ面接で落とされるなら、もう【冒険者】にでもなったらどうですか? え? 肉体労働は辛い?向いてなさそう? ……ニート歴が長く、実家を追い出されたあなたに就労先を選り好みする余裕なんてないと思いますが。とにかく、ダンジョン冒険者訓練所のパンフレットは渡しておきますのでよく考えて下さいね』みたいな言葉はもう聞きたくないよな……。思い出しただけでお腹痛くなってきた」
そういう事情があって、俺はこんな所でちまちまと日夜アイテムを拾い集めることになっている訳だ。
もうしばらくまともな飯も食えていない。
「……でも、何か流れで奥まで来ちゃったし、たまには二層まで下りてみるか?」
今朝のるりてんちゃんのこともあったからか、いつの間にか二層に繋がる階段前まで来てしまっていた。
二層に下りるなんて、普段の俺だったら絶対に取らない選択肢だ。何故なら、俺は慎重派だから。
「しかも、二層ってなんか微妙にカビ臭いから嫌なんだよな」
グチグチと独り言を溢しながらも、ゆっくりと階段を下りていく。
「うわ、この空気久しぶりだなぁ。掃除してないエアコンみたいだ」
『平均的な洞窟』という他ない一層と比べて、二層は湿気があるせいかコケやキノコも生えている。それらも種類によっては金になるらしいが、俺には見分けがつかないのでスルーだ。
「ウルフとか、マタンゴが出てきたら速攻で逃げようっと」
前に二層のモンスターと戦って危うく《死にかけた》ことを思い出しながら身震いをする。足の早いウルフや、キノコ型で胞子を撒き散らすマタンゴはEランクの俺には手に負えない。
「お、これは一層にはない色の魔石だな」
そんな風にしてモンスターを避けながら、アイテム拾いをしていた時の事だった。
「さ、最悪……!!誰か助けて、助けなさいってば!!」
どこからかアニメキャラのような萌え声をした、女性の叫び声が聞こえてきた。
ーー
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