第14話 4.9年前の卒業アルバム
次の日、哲也は約束通り勝平小学校へ向かった。
自転車での小学校への通学は、許されていないが夏休みは例外である。
学校の正門を潜り、玄関に続く階段の横に自転車を止める。
階段の上の玄関の前には、委員長こと、松本和泉が最初に来ていた。
『テッカ君、おはよう!実はね、加賀谷先生も来てくれるんだって・・』
『お前たちだけじゃ、福岡先生、許可出さないだろって、言ってたよ!』
『カガヤン来るの、やった!アイスでも奢ってくれないかな』
哲也はそう言うと、いずみに、ワザとらしくガッツポーズを見せる。
そう言ってる矢先、カガヤン事、加賀谷先生の愛車である、グレーのキャンプに行くようなSUV車が二人の後ろを通り過ぎて行った。
暫くすると、長身の黒縁メガネをかけた若い加賀谷先生が小走りに走って来た。
『オウ、お前ら、おはよう!・・・犬崎、一人未だ来てないんだな!』
『佐上、お前、犬崎来たらな。遅刻したから、グランド5周って、加賀谷が言ってたて、言うんだぞ!』
口とは、裏腹にカガヤンの顔はニコニコして笑っている。
(ああ、カガヤンの久しぶりのギャグだ。)
哲也は、担任の冗談に合わせる様に、警察官の人がする様に、頭に指先をくっつけてする敬礼をする。
『ラジャです!』
『オウ、頼むぞ!』
カガヤン先生も、同じく、哲也に敬礼をするが、自分でしながら笑っていた。
『俺は、今から職員専用の玄関から入って、職員室行って先に、福岡先生にも説明しなきゃいけんからな・・』
『そいじゃ、3組の教室にいくから、教室で合流な!』
カガヤン先生は、そう言って、挨拶する様に片手を上げて、少し離れた職員室玄関に走っていった。
カガヤン先生が、職員玄関に入って数分後、何時ものとおりナオケンが急いでやって来た。
『ギリギリ、セーフ!』
『ギリギリ、アウトだよ。カガヤンが、ナオケンは遅刻だから、グランド5周だってさ!』
『エッ、何でカガヤン居るの、グランド5周ってほんとかよ、委員長マジで?』
いずみが、笑いながら、苦しそうに頷く。
その後『アウト!』といずみが可愛らしい声でナオケンに言い、ウデを振る。
『ゲッ、
『マジ、マジ、まあ、とりあえず学校に入ろうよ。カガヤンの冗談だよ、久しぶりの・・』
哲也は、そう言って、3人とも開いていた小学校高学年の玄関から、学校に入っていったのである。
3人が5年3組の教室で待っていると、カガヤン事、加賀谷先生と、
二人が、一緒に教室に入って来たので、ナオケンが悪ノリして、二人を冷やかす様に声を出した。
『ヒューヒュー!』
『コラ、犬崎、フザケルな!』
カガヤン先生が、少し照れた様にナオケンを注意する。
横に居た、メガネをかけた長身の福岡先生も、ナオケンに、小走りで近づき、片手の掌を握り、グーをつくりその手を挙げる。
ナオケンが、少し驚き、身構える。
福岡先生は、最初から殴るつもりはなく、ただの意思表示である。
お前、フザけるなら、叩くよ、彼女のメガネがそう言っている様だった。
しかし、哲也は、メガネの下にある福岡先生の表情がカガヤン先生と同じく、照れている様な気がした。
(二人が、噂になるのは、こういうところだよな・・)
哲也は、そう思ったが、二人に怒られたくないので、何も言わなかった。
『みんな、揃ったし、そいじゃ、視聴覚室の横にある倉庫に行くか!』
カガヤン先生が、そう言ったので、3人は二人の後に付いて、倉庫に向かったのであった。
『しかし、10年前の卒業アルバムなんて、探して何になるんだ』
『松本が、野田のお祖父さんを、刺した犯人が、うちの卒業生かもって、仮にそうだとしても、子供の時の写真を見てもしかたないだろ・・』
『私達、明日、野田君と会うんです。野田君が言うには、警察の人から頼まれたって言ってました』
哲也は、サラリとウソをつく。
(最近、オレ、ウソばかりついてる。本当に将来、サギ師か、ドロボーになるかも・・)
心に罪悪感を持ちながらも、これも、男の子の正体を探す為だと自分に言い訳をする哲也であった。
『警察が、子供に頼むってのも、オカシイですよね、福岡先生?』
『エッ、はい、そ・・そうですね』
カガヤンが、そう福岡先生に話を振るが、福岡先生はなぜか、緊張する様に、言葉に答える。
(もしかして、ナオケンの冷やかしで、動揺したのかな・・・)
哲也は、そんな事を考えながら、通称フクサダこと福岡先生の表情をコソッと見ようとした。
そんな時、ナオケンが宝物を見つけた様な、大きな声で叫んだ。
『あった、10年前の平成26年度の卒業アルバム!』
『ナオケン君、10年前に5年生だから、6年生になった時は、平成27年よ。そのとなりだよ』
『オウ、さすがは委員長、頭がイイ。・・・じゃ・・これだな』
ナオケンは、慌てて隣に置いてあった卒業アルバムと、手に取ったアルバムを取り換えた。
アルバムの棚の横には、白い横長のテーブルが置いてあり、ナオケンは直ぐに手に持ったアルバムを其処へ置いた。
ナオケンは、直ぐに各クラスの集合写真の処に目星をつけ、そこからペラペラと1ページずつ、開く。
6年1組、2組、3組と次々と開いていく。
『あったわ!』
いずみが、ナオケンより早く声を出した。
そのページには、6年3組の卒業生人一人の写真が載っていた。
通り過ぎたページと違う部分が一つ、3人の写真だけが、一番上にある、担任の先生の真横に会った。
哲也には3人の写真だけが、他の生徒より少し幼く見えたが、その理由が直ぐに分った。
3人の写真、その真ん中の子の写真の下に、書かれた生徒の名前。
佐々木一馬、市立病院で入院していた先輩の名前だったのである。
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