第4話 旅立ち①~③

「今日が何の日か覚えてる?」

「人形納品の日」

「何だかんだ素材集め,テストに始まり

三年かかったな。」

じっとりとした目線を送られる。

「ただでさえ人形作るのに半年かかるの。

本格的に人間に似せるとなるとこの年月は妥当だわ」

「あぁ,ありがとう。」

「早速動作テストしましょうか。」

それ人形は前よりも人間を模している。

そして比較的,僕の要望を忠実に叶えている。

重量も機能もかなり増やしたはず。

なのに操作感,動き魔力消費があまり変わらない

すると前は聞こえなかった風を切る音がした

見えなかったコランの攻撃。

防がなくていい。

”ボトッ”

腕が切られる。

床に落ちたそれの断面には

肉と骨が見え赤い液体が

人形そのものだったそれは

「回復を。」

「はいはい。」

生暖かい腕を傷口に当て

[自己再生アンデット]

無事腕は治った。訓練の賜物だ。

「次のテストに移りましょうか」


魔力回復。


どれだけ人形が壊れようと。

能力再生で治すことが出来る。

でも魔力が無ければ能力が使えないから。

彼女はそう言った。

「これ食べてみて下さい。」

「生の羊肉?」

布に包まれて手渡されたそれからは

血が滴っている。

そもそも宝石は人間が食べる物質を摂取

しても魔力が回復しない。

不思議に思いながら肉を口にする。悪くない。

そして

「…魔力が回復した?」

体には魔力が

「成功ですね。人形状態で出来るか心配でしたが。」

「あのときか」

人形が出来る半年ほど前謎のデータを取った気がする。

「人間が食べ物を食べないのは変でしょう?」

「そうなのか…」

「外の世界の事調べましたか?」

「まあ多少はここにあった本で」

「…外の世界の常識.ここにある本を脳内に入れておきました。

人形についての情報もです。古いかもしれませんが無いよりいいはず。

困った時は見てください,ここから先は一人ですよ?」


後は荷造りだけ。服も装備も

人形作成中の時にすべて終わらせてしまった。

詰めるだけ荷物をまとめるとここともお別れだ。

この三年ずっと外に出ることが楽しみで待ち遠しかった。

しかし,思い返してみれば。

研究所にも思い入れがあり…

旅の途中で死にここに戻れないかもしれない。

皆に会えなくなるかもしれない。

今更ながら僕は旅に出るのだ。

本当にそれでいいのか?

「やっぱり,ここに残ろうかな…。」

変化刺激が無いここを退屈と貴方が言ったのでしょう。

他と違い所長への思い入れも無いのに良いんですか?」

「そうだった。と言うか気づいていたのか。」

「えぇ」

「別れの挨拶,行ってくるよ。」


*****


「皆,じゃあ,また逢う日まで。」

『えぇ信じて待ってるわぁ』

『死んだら所長と探しに行くから』

「僕には再生ルビを入力…が」

『そうであれ心は守れないでは?気をつけるのです。』

『いつデモ帰っテくればイイ』

   ~(他にも色んな仲間が言葉をかけてくれた。)

「今までありがとうそれじゃ行ってくる。」

また会うと決めているのに,足が動かなかった。


*****


「別れは済みましたか?」

「あぁ」

「今まで本当にありがとう。僕でも旅に出れる。

いつか戻ってきて土産話を聞かせるよ」

「貴方だからこそですよ。楽しみにしていますね土産話。」

「ありがとう。」

「それと。手を貸してください」

?不思議に思いながらも手を取ると

能力がコランから受け渡された。

「私からの餞別です。私が持っていても力の持ち腐れ,弱い能力ですが無いよりは良いでしょう。お気をつけて。」

「あぁ行ってくる。」


そうして僕は甘い期待を胸に旅に出た。


******

挿絵↓

後日ね



******

追記

食べた物はすべて質の悪い魔力に変換してから

質をを上げ主に提供してるそうです。

クールダウンもあるそう。

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