第8話 ヨセミテ国立公園
サクラメントで一泊した後、マーセド経由でヨセミテ国立公園に向かう。前日のサクラメントはオールドサクラメントに多少の興味があったが、観光客が多い上に大変な暑さで参った。
キャッシュが底をついているのを少々心配しながらマーセドにやって来た。グレイハウンドのバスデポと同じ建物内にヨセミテ・トランスポーテーションシステムがあるのが有難い。ここでヨセミテ国立公園でのテントキャビンの予約ができ、そこまでのバス代、宿泊費もTCで購入できた。
ヨセミテ渓谷までのバスの旅は快適だ。薄茶色の草原はどこまでも広く大きい。その後、渓谷、渓流が続きやがてヨセミテ渓谷に到着した。
1日目はシャトルバスで、夕方の公園内の道路を一周してみる。観光客がこんなに多くなければ素晴らしい草原である。
ヨセミテの2日目からは当然自分の脚で歩く事にする。先ずは公園案内所に行ってトレイルマップを入手した。
最初にヨセミテ滝に行ってみる。滝のしぶきは心地よいがカメラのレンズが曇ってしまう。北海道旭岳の麓にある羽衣の滝のように3段階に分かれて落下している。美しい滝だ。
次はスリーブラザーズ、エルキャピタンに行ってみよう。途中の草原が何とも言えず素晴らしい。思わず、”旅人よ” を口ずさんでしまう。
草原を吹く風に身を任せてのんびり歩いてたら、マセード川に架かる橋を渡ってからもう大変。道が分からなくなってしまった。
気持ちの良い草原をマップを見ながら歩くのはナンセンスで、風に吹かれながらブラブラ歩くのが通の旅である。
現在地が分からなければマップを持っていても意味がない。車道に出たので適当に歩いていたら、かなり時間を費やしてエルキャピタンに到着した。エルキャピタンはでかいだけだが、スリーブラザーズは逞しく美しかった。カナダ・バンフ郊外のスリーシスターズのような気品のある美しさとは少し違うが。
夕方、野外劇場で映写会があったが、ここでマーセドからのバスで一緒だった日本人男子と親しくなった。ニューヨークで1年間学生生活を送っていたが、先月卒業して今は旅をしながら帰国途上にあるそうだ。アメリカ永住を本気に考えているそうである。陰ながら応援してやろう。
ヨセミテ3日目。朝からえらい目に遭うところだった。あろうことか、トイレに財布を置き忘れたのだ。シャトルバスに乗る直前に気づいてすぐ探しに行ってみたが既にそこには見当たらず、次に神に祈るような気持ちで案内所を訪ねたが、届け出はなかった。
更に紛失物手続き終了後、財布の中にアメリパスが入っているのに気づき絶望感に襲われたが、再び案内所を訪ねてみると今度は届けられていた。いやあ、ほんとにほんとにホッとした。
”天国から地獄” はよく耳にするが ”地獄から天国" である。”地獄に仏” かな⁉ ちょっと違うな!
お礼を言いたかったので、どんな人か訊いてみた。”ジャーマン”と聞こえたので、”German?" と訊き返したら、今度は "Gentleman" とはっきり聴きとれた。ドイツ人ではなかった。いや、分からない。
兎に角、親切な紳士に拾われて良かった。
さてこの後は予定通り、グレイシャーポイントまで歩いて登ってやろう。見どころの一つでもあるハーフドームのすぐ隣にあるヨセミテ渓谷のヴューポイントである。
バスでも行けるがそれではあまりにもつまらない。案内所で登山道を確認して登山開始。予想外に楽な道で2時間25分で難なく到着した。
期待通り素晴らしい景観である。渓谷は勿論、周りの山々もまたである。眼前にそびえているハーフドームがひと際光っている。
このグレイシャーポイントで日本からの団体客に出会った。うち一人のオッサンが小さな記念物かドリンクか何かを買おうとしていた。英語が不十分でも金額が表示されるので、まず問題ない。オッサンがお金を出そうとしてたら、レジの若い娘さんが、
"Do you have Penny?"
オッサン、さっぱり理解できないと見えて固まりかかっている。条件反射的に、『25セント、持ってないか? って』と教えてあげた。
するとオッサン、レジの娘にジェスチャーも使って「ノー」と言ったので話は通じたのは良かったが、私にはひと言の謝意もない。こちらには目もくれず、近くにいる仲間に、「あるけど、使いたくないんだ」とか言っていた。
(その前にすべき事があるだろう!)
まあでも、礼儀知らずというより謝意がないのはシャイなんだろね。まあ、シャーナイか⁉ いいよ、オッサン。
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