第6話
朝になると少女は(ルシェルと呼ばれていた)小屋の裏から草を取って来て米に混ぜて火にかけたドロドロとした食べ物を持って来て、「食べな」と言った。ルシェルは椀に入ったその食べ物を右手で上手に掬って食べ始めた。王子はこの食べ物も手で食べるのも初めてだったが、同じようにして口に入れた。味はあまりなくかすかに苦みがあって美味しいとは言えなかったが、昨日何も食べてなかったことに気がつき夢中でほうばった。食べ終わると老人は釣り道具と鎌をもって出かけて行った。
ルシェルは、王子を促し、森の木や葉などを見せながら説明してその辺を回った。
「これがナズナでこっちがセリ、この木はもうすぐ実が成って美味しいよ。爺じはあんたが落ちてた湖に行ったんだ。魚が沢山採れるからね。でも、けものが水を飲みに来るので危ないのさ。だから、竜の神様に15日おきに夜お供えするの」
ルシェルは話してくれた。
今まで気が付かなかったことだが、ルシェルは金髪で目が青く肌が抜けるように白い。肌が出るところはすべて服で覆っていた。
ぽかんと口を開けて見ている王子を見て彼女は言った。
「私はアルビノなんだよ。アルピノって知らない?」
首を横に振る王子に言った。
「生まれつき、色がないんだよ。目も弱くて天気の良い日は出かけられない。夜しかあまり出歩けないんだ。私が生まれた町ではアルビノの体は高く売れるんだよ。獣みたいに手足を切られて乾燥して粉にして、飲むと病気が治るとか言われてる。それで両親が森の爺に預けたんだ。ここなら、誰も知らないし来ないから」
「そんな、ひどいことを・・・!」
王子は震えるように答えた。
少女は王子を見つめ
「あんたは優しい子だね。見た瞬間に分かった」
と言った。
つい昨日の朝まで、命をたとうと思っていたのに、今は遠い事のように思えた。
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