トンボの王子様
amalfi
第1話
ある国に孤独な一人の王子がいた。
王子と言っても彼の父は王ではない。王様には2人の妹がおり彼は上の妹の子供だ。王様の妃が病弱なため子供に恵まれなかった。
王子は法律に従って王様の次の王になるべく育てられた。王子には2人の姉がいるが、この国の法律では女性は王位を継承できないので彼が王位継承の第一位である。王様の下の妹にも男の子があり彼より1歳年下の男子がおり、継承の第2位である。
彼は生まれたころから昆虫好きで、特に宮廷内のトンボを探すのが日課だったために、国民からはトンボの王子と呼ばれている。
彼の悲劇は長姉の結婚から始まった。模範的だった姉がある日結婚相手にと連れてきたのが、貧しい出身の男だったのである。王女様の相手にしてはあまりに情けない風体だったために国民はこぞって反対したが、王女はその身分さえ捨ててまで結婚したのだ。この批判は両親に注がれた。育て方が悪いと。
それによって王子はより厳しく育てられることになったのだ。ほとんど幽閉状態で毎日家庭教師が付けられた。トンボの王子は王位などに興味は無く、ひたすらトンボと遊びたかったにも拘わらず。
彼の悲劇はそれだけにとどまらない。王様の下の妹の子供、彼より1下の王子がとても利発だったのだ。子供の頃から賢い子で容姿もそれはそれは美しく、乗馬などのスポーツの上手く大会で優勝することもあり、薔薇の王子と国民から慕われていた。ことごとく、トンボの王子はこの王子を比較された。
ある日、薔薇の王子から、何故トンボが好きなのか聞かれた王子は
「小さい頃はヤゴと呼ばれていて冴えない形で水の中で暮らすんだけど、田んぼを荒らす害虫をやっつけてくれるんだ。大人になると、綺麗な羽で大空を飛び周り、バイ菌を媒介する蚊を退治する。人間の友達なんだよ。素敵だと思わない?」
と答えた。
「ふーん」
興味無さそうに薔薇の王子は答えた。
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