第二章

第1話

天羽剛がデジタル空間から現実世界に戻ると、深夜の静寂に包まれた自室で、不意に彼のスマートフォンが振動した。画面には、企業のIT部門からの緊急依頼が表示されていた。内容は、企業の重要なパソコンシステムがウイルスに感染し、緊急に除去作業を行う必要があるというものだった。剛はため息をつきながらも、すぐに応答し、指定されたパソコンにアクセスするための準備を始めた。


指定されたパソコンは、大手金融機関のセキュリティシステムに接続されており、その重要性は計り知れない。剛が指定された場所に到着し、パソコンの前に座ると、画面に表示されたのは無数のエラーメッセージと警告だった。明らかに、システム全体がウイルスによって混乱をきたしている。


剛は冷静に状況を分析し、斬ヶ時を取り出すと、デジタル空間に入る準備を整えた。彼は深呼吸をし、意識を集中させると、パソコンの内部に吸い込まれるようにしてデジタル空間へと転送された。


デジタル空間に足を踏み入れると、剛は目を見開いた。そこに広がっていたのは、データの腐敗と混沌が織り成す奇怪な空間だった。無数のエラーコードが宙に漂い、互いに絡み合っては消え、また現れる様子が見えた。空間全体が暗黒に包まれ、時折、エラーによって発光するコードが混沌を引き起こしていた。


剛がその空間を進んでいると、すぐに目に飛び込んできたのは、異常なほどのエラーの集積地だった。エラーコードの塊は一つの巨大な塊となり、中心にはウイルスのエネルギーが集まっているのが見えた。その塊は、周囲の空間をさらに混沌とさせるように、うねりながら広がっていた。


剛は慎重に進みながら、ウイルスの中心に向かって歩を進めた。その途中、ウイルスの影響で周囲のデジタルコードが激しく変化し、視界が歪んでいた。剛はそれに合わせて、斬ヶ時でエネルギー波を斬り裂きながら進む。


「こんなにひどいとは…」


剛は思わずつぶやいた。ウイルスのエネルギーは予想以上に強力で、周囲のデータが次々と崩壊し、破片が剛に向かって飛び散ってきた。剛は斬ヶ時を巧みに操りながら、エネルギーの破片を一つ一つ防ぎ、進むべき方向を見失わないようにした。


その時、突然、空間が揺れ始めた。剛は驚きと警戒を覚えながらも、斬ヶ時を強く握りしめた。空間の歪みが広がり、エラーコードの塊がさらに激しくうねり始めた。剛は、これはただのエラーではなく、ウイルスが何かを引き起こしているのではないかと感じた。


やがて、空間の中心から、巨大なウイルスが現れた。そのウイルスは、まるで暗黒のエネルギーをまとった生物のような形状をしており、剛の進行を阻むかのように大きくうねっていた。その存在は、周囲の空間を歪め、エラーコードをさらに激しく変化させていた。


「これがウイルスの本体か…」


剛はその姿に圧倒されながらも、冷静さを失わなかった。彼は斬ヶ時を構え、ウイルスに対して攻撃を仕掛ける準備を整えた。ウイルスの中心には、おそらくこの混沌の根源が存在しているはずだ。それを除去しなければ、デジタル空間の修復は不可能だと理解していた。


剛は斬ヶ時を振り上げ、ウイルスに向かって一閃を放った。斬ヶ時の刃がウイルスに直撃すると、そのエネルギーが空間全体に広がり、ウイルスの存在が一時的に消え去ったように見えた。しかし、その後すぐにウイルスは再び形を取り戻し、激しく反撃してきた。


剛はその攻撃に耐えながら、再び斬ヶ時で反撃を試みた。ウイルスの攻撃は複雑で、予測が難しい。その攻撃をかわしつつ、隙を見つけて攻撃を加える。剛はその繰り返しの中で、ウイルスの動きや攻撃パターンを徐々に把握していった。

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