パワー系ギャンブラー 剛力壊伝説

鈴鹿 葦人

剛力壊伝説 開幕

闇カジノ、それは人の目を避けひっそりと運営されている違法な賭場。

ここでは地上で手に入らない物品や情報、それでさえもチップとして扱われる。

そんな闇カジノに今夜もまた1人客がやって来た。



ドシリ、ドシリと重低音を鳴らしながら男がカジノの前へと近付いてくる。

2mはあるだろうか、肩幅も人間より熊と比べた方がよっぽど近い。それほどまでに人間離れした肉体を持っている。

彼の名前は剛力ごうりきかい

勝利と暴力の神にだけ愛された男だ。


彼は、規格外のフィジカルで誰かが気づく前にイカサマをする。パワー系イカサマの申し子である。

見破れないイカサマで勝ち続けている彼の存在は世界各地の闇カジノから要注意人物としてマークされているのだ。



ドゴンッ!

扉が聞いたことのない音を立てて開く。

このカジノでこんな音を鳴らす人物はこの世でただ一人しかいない。そう、かいだ。

その場に慌てた様子でスタッフがやってる。


「い、いらっしゃいませ!かい様。今日も素晴らしい筋肉で」


スタッフは丁寧な接客でかいに擦り寄ったつもりだろうが彼にとってはたかがスタッフの一匹や二匹、何をしようが同じ事である。


「おう、今日はこれだけ使う」


そう言うとかいはバッグに入っていた

サッカーボールほどの金塊を引きちぎり

10分の1サイズにしてスタッフの手のひらへと置いた。


サイズからは想像できないずっしりとした金塊の重みに、スタッフが引きつった顔をしながら奥へとチップを取りに行く。

すこし遅く感じたのか後ろの方で声がする。


「俺は待つのが苦手でね、悪いが急いでくれないか?」


若干脅しとも取れる発言に怯えたスタッフの足は速くなる。



しばらくすると、何個かキャリーケースを抱えたスタッフが全速力で戻ってきた。

ぜぇぜぇと少し息を切らしながらかいへ微笑む。


「ではこちらチップになります」


「おう」


スタッフが重そうに抱えていたキャリーケースをかいは片手で持ち上げ、チップを数える。


「1、2、3…ざっと500万かそこらかね」


「ま、こんなもんか」


数え終わるとかいはスタッフに礼をして、足で轟音を撒き散らしながら金儲けへと出向いた。


ギャンブルをするためにギャンブルで稼ぐ

性格が悪くて冷静なタイプのバーサーカー。

そんな男、剛力ごうりき かいの伝説が今日も始まる。

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