十話 ハジメテの捕獲(される側)



 ◆◆◆◆



 エレフェリア帝国帝都城門前


 第三皇子ルカルージュ=アルテール=エレフェリア

 


「やっと到着! ただいま帝都!」


 やっとだよ。

 俺はやっと帝都に戻ってきた。

 あの誘拐された建物は、森に建っていたみたいで、帝都から意外と遠くて驚いた。

 転移する時に、魔力が思ってたよりも減ってたから気づいたことなんだけれども。


「みんな、お疲れ様!」

「みんなそんなに疲れてないよ? だって一瞬で移動しちゃったんだから」

「……これ、転移魔法じゃ…………」


 俺はそこまで疲れてないけど、数日監禁されてた子供達はものすごく疲れてるんじゃないかなって勝手に思ってたけど、そんなことはなかったみたいだ。

 一部を除いて、ピンピンしている。

 一部というのは、小さい子やかなり前に誘拐された子のことだ。

 そんな一部の子も、帝都に帰ってきたとわかると嬉しそうな顔をしていた。


「兵士さん、お仕事お疲れ様です。疲れているところ悪いんですけど、誘拐組織を潰したので報告に来ました」

「えっ、子供!? あ、長命種か……。ならありえるか(?)」


 城門前に帰ってきたからとりあえず兵士の人に報告。

 話に応じてくれたのは、昼間の人とは違う人だった。

 やっぱり見た目なのだろうか。

 大人に見える見た目は大事なのだろうか。

 俺はものすごく大事だと思う。

 だって、子供に見えても、耳が長いだけで納得されるのだから。

 長命種ならこのくらいの大人もいるだろうって。


「とりあえず入ってくれ。子供は元気か?」

「うん元気だよ! とりあえず建物の中にいた人は全員無事。敵さん側はどうなってるかは知らないけど、……まあ多分生きてるよ! 大丈夫!」

「……そ、そうか。じゃあ門開けるぞ?」

「おねがい」


 少し待つと、細く扉が開いた。

 全開にはならないってことは、入る予定のないものが入ってくるのを警戒しているのだろうか。

 そんなことほとんどないと思うけどね。


 俺たちは、中に入った。

 これで一安心だ。

 

 そのあと、大人はそれぞれ報告を済ませて自分が帰るところに帰っていった。

 子供の方は、俺が何があったかいろいろ説明して、国に預かってもらって、親が迎えにくるのを待つ運びとなった。

 城門の方から国に、子供が戻ってきたと報告が回る。

 俺視点の報告やら何やらいろいろあったから、かなり時間がかかった。 

 だけど、そのおかげで、子供達が親と嬉しそうに家に向かって帰っていくのを見ることができた。

 俺と仲良くなったフィオも、弟と一緒に父と母と一緒に帰っていた。

 城門から離れたところに住んでいる子供は、騎士が送ってくれることとなった。

 子供はみんな家に帰った。

 

 うちに帰ってくることができたというのはやっぱり嬉しいことなのかな?

 俺はそれがすごく気になった。

 だって、俺は生まれてからずっと外に出たことがなかったんだから。

 庭に出たことがあったとしても、人がたくさんいる街には出たことがなかったから。

 外に出てもみんな顔見知りで、知らない人と交流することなんてなかったから。


 俺も数日外にいたら、城が恋しくなるのだろうか……。


 そう思ってしまうのも仕方がないだろう。

 今日が初めての外出だったんだから。

 しかも初めて外に出た日がこんなに充実したものになったんだから。

 外に出て、フラフラ街を歩いて、冒険者ギルドに飛び込んで、そしたら誘拐されて、一つの建物と組織を破壊して……それで帝都に帰ってきた。

 一日のうちにこんなにたくさんのことをやったのは久しぶりだ。

 今日はつまらないという言葉が地面に埋まるくらい楽しかった。

  

 外出の方が楽しいと思ってしまったから……、俺は帰る時嬉しくなるのだろうか。


「発見……。捕獲。成功。ぁ……呼出。団長。皇子。捕獲、成功」

「……!!」


 気配が全くなくて気づけなかった。

 ちょっと疲れて警戒が緩んでたからかもしれない。

 いつの間にか後ろにいた彼女は、俺をガッチリと押さえ込んだ。

 ご丁寧に腕まで絡めて、簡単には抜け出せないようにしている。

 動いても全く動く気配がないから、強化しないと抜けられない。だけど、そうやって無理やり抜けようとすると、捕獲している彼女が怪我をする。

 ものすごく悪質だ。人質をとっているようなものじゃないか。

 心の中でそう文句を言った。文句を言ったとしても、心の中だけのため誰にも届かない。


「あっ、やっと捕まえましたか! アンネ、よくやりました」


 少し離れたところからそんな声が聞こえてきた。

 どうしよう。

 魔力が有り余るほどあったとしても、連続で長距離転移するのは流石に疲れる。

 楽しいのは好きなんだけど、無理するのはあまり好きじゃないんだよな。


「団長。皇子。時間。取得。待機。情報。取得。理由」

「なるほど。誘拐された子供たちを連れ帰ったことで、皇子がじっとしている時間ができ、その情報を私たちが受け取ったことで捕まえることができたと」


 えっ!?

 さっきからアンネって人は二文字でしか話してないけど、それで伝わるんだ。

 そんなことで驚いていると、目の前に騎士団長がやってきて、俺の顔前でしゃがみ込んだ。


「皇子、私たち、頑張ったんですよ? あなたを捕まえようと。どこ動き回っていたんですか?」

「………………」


 捕まった後に、外を出歩いて何をしてたかなんて言いたくない。

 言わされてる感がすごくて、なんか嫌だ。

 どうせ話すなら誰かに楽しかったことを思いっきり伝えたい。言わされたくない。


「情報。要求」

「ぃ言いたくない……」

「皇子……、ですが何があったのかを報告しないと……」

「直接言うから言いたくない!」


 今日のことは自分で伝える。

 誰かが代わりに報告する必要なんてない。

 

「……そうですが。では帰りましょうか」

「帰るとは言ってない」

「帰還。絶対」


 そう言われ、俺はズルズルと引きずられるように運ばれていく。

 だが、歩く気がないと気づかれ、最終的には持ち上げられて運ばれた。 

 逃げようとしても、なぜか逃げる気になれなかった。


 そういえば、建物、灰みたいに崩して、誘拐犯を捕まえたこと忘れてたな。

 まあいっか。

 報告は自分ですると宣言したばかりだし、誘拐犯も魔物に食べられてるか。




おまけ

現在思っていること

 騎士団長:やっと見つけた

 アンネ(副団長):皇子、やっと捕まえましたよ。もうほんと大変だったんですか

         らね。帝都中を探したり、痕跡を辿ったり、誘拐事件のことを調

         べたり、たっくさんいろんなことやったんですからね!もう!

         次は絶対に脱走させませんよ!

         私たちがずっと観察していますから。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る