第3話  スカルキラーをやっつけて

「それにしても、ここは何処どこのダンジョンなのさ?」


「銀の森の南に、紅玉の実が取れる森があるだろ? 紅玉の森を抜けて十五セル(キロ)行ったくらいの新しいダンジョンだよ。

一夜にしてできた謎のダンジョンなんだ」


「魔王がいるの!?」


 アベルの声は、震えていた。

 アベルにしてみれば、三歳で親元を離れて、一人で幻夢界で風の王女とのつきあい方を学ばなければ、アベルの人間としての未来はなかったのだから。


 両親が風の精霊に任せて子作りしたせいで、アベルは思いもよらない被害を被った。

 生まれながらに、高位の風の精霊が祝福に来た。

 だが、その精霊も生まれたばかりの赤ん坊で、力の制御も出来ない有り様だ。

 アベルが生まれて三年間は、銀の森にはずっと風の王女の癇癪風が吹いていた。


 幻夢界のアナイス婆が、やっとアベルのことを見つけて引き取ってくれるまで、アベルは、風の王女、アンローラに身体を乗っ取られかけていた。


「さぁね、いるかもしれないし、いないかもしれない」


「ママは魔王を倒してこいって言ったんだろ?ママは、嘘をつく人じゃないよ!」


 タケルは、大きく息をつく。


「ママ……母上のことをそんな呼び方をしたから、こんな目に遭ってるんだぜ?分かってんのか?」


「う……でも……ママは、ママだよ!幻夢界には、会いに来てくれてたけど、長居は良くないから直ぐに帰ってたし、僕が銀の森に帰って、ママに抱きつこうとしたら思い切りキレられたんだよなぁ~どうしてなんだろう~?」


「取り敢えず、自分で考えとけよ。えっと!このダンジョンは、5層でそんなに深くないから、さっさと最下層へ行って魔王を倒そうぜ」


 革の鎧を着たタケルは、懐からダンジョンの地図を出してきた。


「あっちに下に降りる階段があるらしいぜ」


「タケル……君、やっぱりボクのボディガード役で一緒に来たんだろ?」


「違うよ。新しく出来たダンジョンの偵察だよ。アベルの方がついでなの

アベルは情けないから、ダンジョンで修行して来いって、放り込まれたくせに!!」


 アベルは、弟のタケルに言い返せなかった。

 だがアベルが銀の森を離れた時は、まだ三歳だった。

 幻夢界は、人の世とは、時間の流れ方が違うのだ。

 年に何度か様子を見に来てくれていた両親や、弟も長い時間そこには、いられないのだ。

 アベルだって、アナイス婆に魔法の手解きを受ける以外は、世界樹の島の外て過ごしていた。

それでも、弟のタケルの方が三歳ほど上に見える。


「ぜーんぶ……アンのせいたからな~!!」


<ひどっ~い!!私の言うことを聞いてくれないアベルのせいでしょ?>


「なんで人間の魔法使いが、精霊の言うことを聞くのさ!アンが、精霊らしくなってくれれば、直ぐにでも帰れたのに~」


 

 アベルの頭上にいた可愛らしい品のある風の王女の精霊は、口を尖らせて言った。


<何で、王女の私が、人な言うことを聞くのよ>


 アベルと精霊の王女の折り合いは、まだついていないようだ。

タケルは、一人で下に向かう階段をさっさと降りていってしまった。

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