第9話 科学の世界
アントニオの転校から数日が経ち、三人は放課後に図書館に集まっていた。ユウキとミサキは、アントニオに最近の出来事を報告していた。
「へえ、二人ともすごいじゃないか」
アントニオは感心した様子で言った。
ミサキが少し照れくさそうに笑った。
「でも、まだまだ解決しなきゃいけない問題はたくさんあるの」
ユウキも頷いた。
「そうだね。特に学校の勉強で、科学の授業が苦手で...」
アントニオは目を輝かせた。
「そうか!それなら、次は科学の本の世界に行ってみるのはどうだろう?」
司書が静かに近づいてきて、微笑んだ。
「良いアイデアですね。こちらはいかがでしょうか」
司書が手にしていたのは、『不思議の国の科学実験』という題名の本だった。
三人は顔を見合わせ、頷いた。本を開くと、周りの景色が溶け始め、全く異なる世界へと変わっていった。
目を開けると、三人は広大な実験室のような空間にいた。壁一面に並ぶ試験管、複雑な機械、そして至る所で小さな爆発や光る液体が見られた。
「わあ...」
ミサキは目を丸くして周りを見回した。
「ここは...」
ユウキも驚きの声を上げた。
その時、白衣を着た女性が近づいてきた。
「やあ、若き科学者たち。私はドクター・サイエンス。この実験室へようこそ」
ドクター・サイエンスは微笑んで続けた。
「今日は、科学の素晴らしさを体験してもらいましょう。まずは、この実験から始めましょう」
彼女は、テーブルの上の様々な器具を指さした。
「これらを使って、水の電気分解を行ってみましょう」
ユウキは少し緊張した様子で実験に取り組んだ。最初は戸惑っていたが、ミサキとアントニオの助けを借りながら、少しずつ理解していった。
「よくできました」
ドクター・サイエンスは満足そうに頷いた。
「次は、光の屈折について学びましょう」
三人は、プリズムを使って白い光を虹色に分解する実験を行った。
「すごい!」
ミサキは目を輝かせた。
「これが科学の面白さなんだね」
ユウキも興奮した様子で言った。
実験を重ねるうちに、三人は科学の原理や法則を体験的に学んでいった。難しいと思っていた概念も、実際に見て触れることで、徐々に理解できるようになっていった。
ドクター・サイエンスは、実験の合間に科学の重要性や、研究の面白さについても語ってくれた。
「科学は、失敗の連続なのです。でも、その失敗から学び、諦めずに挑戦し続けることが大切なのです」
三人は真剣に聞き入った。
最後の実験では、三人でチームを組んで複雑な装置を組み立てた。それぞれが得意な部分を担当し、協力しながら問題を解決していった。
「素晴らしい!」
ドクター・サイエンスは拍手した。
「君たちは、科学の本質を理解したようですね。観察し、仮説を立て、実験し、結果を分析する。そして何より大切なのは、好奇心を持ち続けることです」
ユウキは深く頷いた。
「僕、科学がこんなに面白いものだとは知りませんでした」
ミサキも同意した。
「私も!実験って、まるでパズルを解くみたいで楽しい」
アントニオは二人の肩を叩いた。
「これで、学校の科学の授業も楽しめるようになったね」
ドクター・サイエンスは優しく微笑んだ。
「さあ、これからは現実世界で、自分たちなりの『実験』を続けてください。日常の中にも、たくさんの科学があるのですから」
三人は感謝の言葉を述べ、現実世界に戻る準備をした。
目を開けると、再び図書館にいた。しかし、三人の目には、以前とは違う輝きがあった。
ユウキが興奮した様子で言った。
「ねえ、明日の科学の授業で習う内容、今日の実験で理解できた気がする!」
ミサキも頷いた。
「私も!それに、身の回りのものを観察する目が変わった気がする」
アントニオは満足そうに二人を見つめた。
「そうだね。科学は、世界を理解するための素晴らしいツールなんだ」
司書が静かに近づいてきて、言った。
「素晴らしい成長ですね。科学の世界での経験を、ぜひ現実世界でも活かしてください」
三人は頷き、図書館を後にした。帰り道、彼らは興奮冷めやらぬ様子で、今日学んだことや、それをどう日常生活に活かせるかを話し合った。
ユウキは空を見上げ、つぶやいた。
「世界は、不思議と謎でいっぱいだね」
ミサキとアントニオも同意し、三人は新たな発見への期待に胸を膨らませながら、それぞれの家路についた。
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