第3話 最初の冒険

日曜日の朝、ユウキは早くに目を覚ました。昨日の不思議な体験が夢ではなかったことを思い出す。

朝食を急いで済ませると、ユウキは両親に「友達と遊びに行ってくる」と告げ、家を飛び出した。昨日と同じ道を通って林に入り、あの古びた図書館を探す。

「あった!」ユウキは小さく叫んだ。昨日見つけた図書館は、今日も同じ場所にあった。

おそるおそるドアを開けると、昨日と変わらない内装が目に飛び込んできた。本棚、赤いカーペット、古びた肘掛け椅子...そして。

「お帰り、ユウキくん」

白髪の司書が微笑みながら姿を現した。

「今日は何の冒険をしてみたい?」司書は優しく尋ねた。

ユウキは少し考えてから答えた。「昨日は海賊の世界でした。今日は...宇宙はどうでしょうか?」

司書は頷き、本棚から一冊の本を取り出した。表紙には「銀河の果ての秘密」と書かれている。

「この本を読んでみるといい。でも気をつけるんだ。本の世界から出る方法を忘れないようにね」

ユウキは不思議そうな顔をした。「出る方法?」

「そうだ」司書は真剣な表情で説明を始めた。「本の世界に入るのは簡単だが、出るのは難しいこともある。物語に没頭しすぎると、現実世界に戻れなくなる危険性があるんだ」

ユウキは緊張した面持ちで頷いた。

「出る方法は簡単だ」司書は続けた。「心の中で『現実に戻る』と強く念じるんだ。それだけで元の世界に戻ることができる」

説明を聞き終えたユウキは、深呼吸をして本を開いた。すると周りの景色が急速に変化し始め、図書館の内装が消えていった。

気がつくと、ユウキは宇宙船の中にいた。窓の外には無数の星が輝いている。

「新人か?」背後から声がした。振り返ると、宇宙服を着た女性が立っていた。「艦長が待っているぞ。未知の惑星からの奇妙な信号を受信したらしい」

ユウキは興奮と緊張が入り混じった気持ちで女性について行った。宇宙船の中は想像以上に広く、複雑な機械が至る所に設置されている。

艦長室に到着すると、厳しい表情の男性が迎えてくれた。「君が新しいクルーか。良いタイミングで来てくれた。未知の惑星からのメッセージを解読する必要があるんだ。君の新鮮な視点が役立つかもしれない」

ユウキは戸惑いながらも、与えられた任務に取り組んだ。複雑な暗号のようなメッセージを前に、頭をフル回転させる。

時間が経つにつれ、ユウキは徐々にメッセージの意味を理解し始めた。それは遥か彼方の知的生命体からの警告だった。この銀河系に迫る未知の危険について告げるものだった。

艦長は驚きの表情を浮かべた。「君、よくやった!このメッセージを解読できるとは思わなかった」

しかし喜びもつかの間、宇宙船が激しく揺れ始めた。

「艦長!未知の力場に捕らえられました!」航海士が叫ぶ。

混乱の中、ユウキは自分がこの世界の一部ではないことを思い出した。「そうだ、現実に戻らなきゃ」

ユウキは目を閉じ、心の中で強く念じた。「現実に戻る!」

目を開けると、ユウキは再び図書館の中にいた。手には「銀河の果ての秘密」の本。

「どうだった?」司書が優しく尋ねてきた。

ユウキは興奮気味に答えた。「すごかったです!本当に宇宙に行けて、未知の生命体からのメッセージを解読して...でも最後は少し怖かったです」

司書は微笑んだ。「良い体験ができたようだね。怖い思いもしたかもしれないが、それも大切な経験だ。現実世界に戻る方法も覚えたようだし」

ユウキは頷いた。「はい。でも、もっと長く滞在したいと思うこともありました」

「それが危険なんだ」司書は真剣な表情で言った。「本の世界はとても魅力的だ。でも、現実世界とのバランスを保つことが大切なんだよ」

ユウキは深く考え込んだ。本の世界の素晴らしさを知った今、どうやってそのバランスを保つべきか。

「さあ、そろそろ帰る時間かな」司書が言った。「また来てもいいよ。でも、現実世界での生活も大切にするんだよ」

ユウキは頷き、図書館を後にした。家に帰る道すがら、宇宙での冒険を思い返していた。そして、この素晴らしい体験を誰かと共有したいという気持ちが芽生え始めていた。

その「誰か」が誰なのか、ユウキの心の中ではすでに答えが出ていた。

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