第6話 自販機

昭和の話だ。

自販機の裏にはホームレスがいる。

駅前には自動販売機がズラリと並べられているが、その後ろには少しだけ排熱用のスペースが設けられていて、そこにホームレスが冬の間は住み着くのだ。

Fさんがある真冬に終電で地元の駅へ帰ってきたとき、駅から出るとその自動販売機の列の後ろに横たわる黒いものを見た。

「あぁ、こういう人も大変だな」

一瞥して自宅へ向かおうとしたとき、その人型がむくりと上半身を起こした。

少しだけ驚いてその黒いものを凝視する。

すると、それは見る間に大人のこぶし大の大きさに分かれて別々の方向に動き出した。

よく見ると、それは鼠だったそうだ。

毎晩見るあのホームレスがなぜそんなことになったのか、今でもわからないと彼は首を傾げた。

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