まほ子ちゃんの花丸レシピ

花色 木綿

レシピ1:出会い頭のフレンチトースト

1

 オレは、ファンタジーが大っ嫌いだ。

 夢だの希望だの魔法だの、そんな非現実的なものは信じられない。第一、そんなくだらないことにかまけているなんて時間の無駄だ。もったいない。なんせ時間は有限なのだ。一円の価値にもならないものに心を奪われている暇があるなら、英単語の一つでも覚えた方がよほどためになる。

 そう、だから。

 たとえ目の前で竹ボウキがふよふよ飛んでいようが、オレには一切関係ない。オレは夢を見ているんだ。ああ、そうだ。そうに決まっている。

「おい、そこのクソガキ。なにをぼけーっとしているんだ」

 その上、黒ネコまでもが生意気な口調で人間の言葉を話していようが、オレは信じない。信じないぞ、絶対……!

黒沢くろさわくーん。大丈夫ですかー?」

 その決意を打ち砕くよう、真白ましろが大きな瞳を揺らし、間の抜けた声で問いかけてくる。オレはぎこちなく首を動かし、そんな真白に視線を合わせる。

 大丈夫な訳……ないだろう――っ!!

 ホウキが宙に浮いていたり、黒ネコが人の言葉を話している異常な空間の中。オレは心の中で思い切り叫んだ。

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