チート夫婦のマイペース旅行記
コッティ
第1話 マイペースな夫婦とゆかいな仲間たち
「お~……でっかいダンジョンある~」
『ひめさま!はやく!はやくいくニャッ!』
「ん~……私を急かしても意味無いと思う……」
目の前広がる景色を見ながらポツリと零した私の言葉に、私に抱きしめられている大きな猫ーーもといケット・シーであるケトルは興奮しながら急かしてきた。
『ケトル、うるせーぞ。お前だけ振り落とされてーのか』
『ニャッ!?ひめさま!グランさまがいじめるニャ!』
「あ~……ハイハイ。どうどう。ケトルを振り落とすと私も一緒に落ちちゃうからやめてね」
『なっ!オレがお前を落とすわけねーだろうが!猫と犬とついでにそこの白いクソ野郎も心底どうでもいいが、オレが妻であるお前を傷つける事だけは万が一にもありえねぇ』
「…………それは、どうも?」
ケトルと口喧嘩しているこの口の悪い男は、今私とケトルを背に乗せて飛んでくれている
世界最強種族と言われている竜族の中でも特に力が強いと言われている黒竜の始祖である古黒竜で、竜族の頂点の内の1人と言っても過言では無い存在でもある。
そして彼は私の旦那様の1人だ。
今は竜体型で飛んでいるけど、私に合わせて人型になる事も出来る。
『お前こそうるさいよ、黒。……マユ、やはりボクの背に乗った方が良かったのではないかい?』
そうやって声をかけてきたのは、グランの横で並んで飛んでいる白い竜。
彼の名はシルフォリアでいつもはシルフィと呼んでいる。
彼もグランと同じく竜族の中で特に強いと言われている白竜の始祖である
そして彼もまた私の旦那様である。
『姫、もうすぐ着きますぞ』
「……お、ホントだ。でっかい街だね」
シルフィの上に乗っていたフェンリルのガロンが相変わらずの夫達を横目にいつものようにクールに知らせてきた。
それに私も頷く。
「も~……ほら、グラン?シルフィ?そろそろ降ろしてくれないと街まで入っちゃうよ?」
『はっ!すまない、マユ』
『……ぐっ。すまねぇ』
私には激甘な旦那様たちはうっかり目的地を通り過ぎようとしたのを(私だけに)謝罪しながら高度を下げて街の手前の森の中に静かに着地した。
私とケトルとガロンがそれぞれの背から降りると、グランとシルフィは人型に変化した。
グランは襟足が長めの黒い短髪で、肌が少し浅黒く瞳の色が金色だ。
見た目は野性味溢れる精悍な顔付きのイケメンで背が高く逆三角形のほど良いマッチョだ。
対してシルフィは腰まである長い銀髪で、私と同じく色白の肌で瞳はグランと同じく金色だ。
見た目は女性っぽいとまではいかないけども中性的な美人で、グランより少し背が低いながらもやはり身長は高く細マッチョという感じだ。
「マユ、ボクたちの見た目でおかしな所はないかな?」
「大丈夫。シルフィもグランも人間に見えるよ」
「おし!そろそろ街ん中入るか」
そうして私たちは街に入る為歩き出した。
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私たち一行が門に近づくと、門の前に立っていた街の門番が一瞬ぎょっとした顔をしつつも話しかけてきた。
「街に入るのか?なら身分証の提示と1人につき1フローライト貰おう」
「(街だとそこそこ高いな)……はい、3フローライト。あとこれ3人のギルド証」
「うむ。確認するから待っ……、は…………!?し、ししし、失礼しました!すぐに門を開けるのでお通りください!!」
私たちのギルド証を見て私たちの顔と身分証を3度見した門番は真っ青な顔をしながらもう1人の門番と共に素早く門を開門した。
彼らのような態度はいつもの事なので特段何かリアクションする事もなく、私たちはそのまま街へと入る。
「今日の門番の人は倒れなかったからまだマシだね~」
「2つ前の村の門番は驚きすぎて気ィ失ったからな」
「結局ボクたちが介抱する羽目になったからね」
私とグランとシルフィは以前のやり取りを思い出してやれやれと呟く。
『姫に迷惑をかけるなど万死に値する』
『きっとグランさまのかおがこわかったのニャ』
「……あ?挽き肉にされてぇのか、クソ猫」
相変わらず姫様(私)ファーストのブレないガロンとケトルとグランのやり取りに苦笑しつつ、私たち一行は門番に場所を教えてもらった冒険者ギルドへと向かった。
チート夫婦のマイペース旅行記 コッティ @amaminemayu
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