第2話 人材不足はいつの時代も課題

 放課後、俺は探索者協会の川越支部に顔を出しにきていた。ちなみに、それぞれのダンジョンはそれぞれの協会支部の中にある。というか、ダンジョンの上に本部や支部を作っているのだ。

 入口に着くと職員から声をかけられる。


「失礼ですが、神楽櫂様でしょうか」

「そうです」

「支部長がお呼びです」


 そう言われてついていくと、支部長室に通される。


「あれ?支部長いませんよ」

「あの人は一応支部長なので忙しいのです。少々時間がかかると思いますので、ソファーにでも座っておくつろぎ下さい」


 と、俺を残して職員は去っていった。

しばらく経つと一人の男性が部屋に入ってきた。


「すまない待たせてしまって」

「気にしてないよ、授業中に電話かけてきたのも緊急だったからだろ?」

「お前、めっちゃ気にしてるだろ」

「いや別に?それで依頼の件だけど」

「……ああ」


 彼は返事をすると本題に入っていく。


「現在、川越ダンジョンにて、中層から下層にかけてモンスターの群れが発見された。その中にはAランクモンスターも少しだが確認された。このことからイレギュラーに認定。さらには、これを放置すると大氾濫スタンピードに繋がると考え、君に依頼をしたい」

「それで?」

「……先ほども言ったが、これを放置すると大氾濫スタンピードが発生する危険があると考えている。過去に起きた大氾濫の被害は絶大で、都市のほとんどのビルが半壊し都市活動が出来ない状態、さらには100万人以上の被害者が出た。そのため、このイレギュラーには早期の対応が求められる」

「だから、なんで俺なんだよ」

「……モンスターの集団、さらにその内にAランク相当のモンスターがいるとなれば、対処できる人材も限られる。というかこの川越ダンジョンにAランクのモンスターを倒せる人材はいない」

「他の所から連れてこいよ!」

「最近は各ダンジョンでイレギュラーが多発しており、他のところも人材を貸す余裕がないのだ。それに、人材不足は川越支部の管理問題になるのだ」

「もう既に問題だよ!」

 

 正直、俺以外にこの川越ダンジョンでイレギュラーを対処できる人とか一人二人くらいしか知らない。


「なあ、支部長のおやっさん。俺、今月で学校に行ってる日数が一週間切ってんのよ。もう月の終わりだぜ?ふざけんなよ!」

「そうは言われても、このまま放置することは出来ない。頼む受けてくれ!そのかわり、依頼料はふんだんに出す。頼む!」

「……わかったよ。ただし、調査ではなく対処な!」

「それでいい」

 

 そう言って俺は部屋を後にする。


「依頼を受けるのですか?」


 受付に行くと、受付嬢の白井南しらいみなみさんに相手をされる。この人は、俺が探索者になった当時から俺の対応を受けてくれている。ちなみに、27歳でめっちゃ美人。ここ重要!


「そうですよ。久しぶりに学校に行けたのに」

「大変ですね。友人はいますか?」

「流石に高校二年生っすよ。……一人はいます」

「……すみません……では安全に気をつけていってらっしゃいませ」


 慈愛を含んだその言葉を受け取って、ダンジョンに潜っていく。

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