丸と四角はどちらが良いか?

泡盛草

第1話

 僕は天才発明家。ある日、とても素晴らしい道具を発明をした。

 それは、何でも丸くする薬だ。

 思いついたのは、柱の角に足の小指をぶつけたときだった。


「痛っ! 痛いんですけど! 何でこんなところに角があるんだー!」


 そう叫んだ時、僕は思いついた。そうだ、角がなければいいのだ。つまり、柱が丸かったら良かったのだ。

 よし、何でも丸くする薬を作ろう!

 早速、僕は作り始めた。僕は研究に没頭し、一年ほどでその薬を作り出した。

 完成した薬はチューブに入れて、まるで塗り薬のように使えるようにした。この薬を角に塗ることで、丸くできる仕組みだ。

 僕はこの薬を売り出した。その名も、マルニスルン。すると、マルニスルンは瞬く間に売れた。あっという間に、僕は大金持ちになった。


 ある日、妹が久しぶりに僕の家に遊びにきた。妹は家に来て早々、こんなことを口にした。


「なんかこの家、丸いところばっかりなんですけど。こんなに窓とか家具とか、丸かったっけ?」


 仕方ないじゃないか。実験で、僕は家中の角という角を丸くしたのだから。


「これは研究のために必要だったんだ」


「えっ。お兄ちゃんったら、まだ売れない発明家やってたの?」


「失礼だな。売れない発明家ではない。僕はこの、何でも丸くする薬を発明して、大金持ちさ!」


 すると妹は驚いたように声を上げた。


「まさか、マルニスルンを作ったのってお兄ちゃんなの⁉︎」


「ああ、そうさ」


 僕は自慢げに答えた。妹よ、もっと僕を尊敬したまえ。

 しかし、妹は驚くべきことを口にした。


「大変だよ! 今、SNSでこんな論争起きてるの知ってる?」


 妹はスマホの画面を見せてきた。そこに書かれていたのは……


__________


マルニスルンってサイコー!


マルニスルンはいらない。シカクニスルンのほうが便利だし。


皿は絶対四角だ!


コップは丸でしょ! マルニスルン買った方が良いよ!


テレビは四角だ!


机は丸だ!


ペンは四角の方が転がらない。


時計は丸の方が読みやすい。

__________


 などなど、いつの間にか丸と四角の論争が始まっていて、大荒れだった。しかも、シカクニスルンとかいうパクリ商品まであるんですけど。

 僕は正直、呆れた。僕は別に全部を丸くしろなんて言っていない。勝手にしてくれ。


 しかし次の日、テレビでこんなニュースが始まった。


「今大人気のマルニスルン。これを発端に、今、世の中で丸か四角かの論争が繰り広げられています」


 そしてたくさんの人がインタビューに答えている。皆、丸が良いだの四角が良いだの、言い争っている。




……勝手にしてくれ。

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